3ヶ月後 ひだまりの中
ギターの練習を始めてどんどん明るくなるマコトくん。
笑顔が増えて俺もホッとしていたのだが。
マコトくんは、次の日の夕方。
恭一おじいさん家にもうきた。
お母さんの軽自動車に乗せてもらって。
お母さんは車で待ってるらしかった。
マコトくんだけ降りてきて、チャイムを鳴らした。
その頃俺とかずはおばあさんは、台所で草餅のつまみ食いをしていた。
きな粉をつけてうまいうまいと、食っていた。
口の周りと指先をきな粉だらけにして、慌てて玄関に行くとマコトくんが少し怯えたように下向いて立っていた。
俺の顔を見て、少しだけ笑った。
なので、俺は
『お母さんも呼んでこい。一緒に草餅食うぞー!』と、言った。
マコトくんは小さな声で『うん』と、言い車に戻った。
マコトくんがお母さんも一緒に玄関に戻ってきたので、俺は『どうぞ!どうぞ!』と、台所に案内した。
小さめのテーブルに4人でギュウギュウに座った。
たくさんの草餅が、今日1番のご馳走のように真ん中に置かれ『どんどん食べて!』と、俺は草餅を食いながら言った。
まるで、この草餅を作ったのが俺みたいだった。
本当はかずはおばあちゃんがいっぱい作ってくれたんだけど。
かずはおばあちゃんは、お母さんに笑顔で『そのスカーフとてもステキね。私もそういうのが欲しいわ〜』と、どーでも良い話をして笑っていた。
恭一おじいさんも丸い椅子を持って来てテーブルの角のあたりに座り、うまい!と、叫んで草餅を食った。
マコトくんはあまり食べなかったけど。
草餅を持ったまま、俺に聞いてきた。
『カラスとネコは?』
たぶんこっちじゃないかなーと、言いながら、リビングに案内した。
ネコは座布団に丸くなって寝ていた。
マコトくんの顔に急に笑顔が出た。
『撫でてもいい?』と、聞くと頭と背中を撫で始めた。
そして、ふと、目を上げた瞬間、マコトくんは恭一おじいさんに大きな声で聞いた。
『これ、弾けるの?』
目の先にはおじいさんの趣味のギターが3本置いてあった。
恭一おじいさんは、手前にある一本のギターを取り、小さな機械を見ながらチューニングした。
(その時はわからなかったけど、後で知った)
恭一おじいさんは、何やらカッコいいフレーズをサラッと弾けてのけた。ブルースのようだった。
そして、『どうだー!少しは弾けるだろー?』と、笑った。
マコトくんが恭一おじいさんに顔を真っ赤にして聞いた。
『僕にも弾けるかなー?』
おじいさんは『当たり前だ。練習すればね』と、答えた。
マコトくんが、持ってみたい。持たせて欲しいと
恭一おじいさんに頼んでいた。
『いいぞー』と、ギターを一本取り出してまた、チューニングしてマコトくんに渡した。
マコトくんは嬉しそうにシャララーンと、音を出して笑った。
俺にもやってみろと、大きな声で笑っていた。
すると、おじいさんが長い線を持ってきて、四角い箱に繋げてスイッチを入れてくれた。
電気的な音が部屋に鳴り響いた。
マコトくんはますます、喜び『ロックのギタリストみたいだ』と、顔を真っ赤にして喜んでいた。
『もう帰ろう』と、マコトくんのお母さんが言うまで、マコトくんは笑っていた。
急に残念そうな顔になり、名残惜しそうにギターを振り返っていた。
すると、恭一おじいさんが、『明日もおいで。難しいのは無理だけど、ギターを教えてあげるから
明日きなさい。』と、言った。
そして続けて『楽譜も用意しておくから』と、笑顔で言った。
マコトくんは嬉しそうに俺に言った。
『明日も絶対来るよ。何時からきていいの?』
俺が返事に困っていると、恭一おじいさんがすかさず『朝の8時からならいいよ。』と、笑って答えた。
マコトくんは『じゃ、その時間に来ます』と、嬉しそうに玄関を出て行った。
次の日の朝8時、本当にマコトくんは来た。
しかもお弁当を持って!!!!!
お母さんに送ってもらったと、言って、今日も楽しみだと笑った。
部屋に入るとすぐにギターの練習がしたいと言った。
恭一おじいさんが、急にコホン!
と、咳払いして『恭一ギタースクール!』と、叫んだので、俺とマコトくんは顔を見合わせてクスクス笑った。
1番最初は、チューニングを教わった。
チューニングマシーンに、音を出しながら合わせるようにここをねじるんだと教わった。
2人で行きすぎた!とか、ゆるすぎた!と騒ぎながらやっていた。
音があったら次は〜???
なんの曲をやりたいか探そうとなった!
え!ギターは?
と、思ったけど、ここが重要だと教えてくれた。
たくさんの楽譜のなかから、弾き語りからやりたいのを探した。
知ってる曲が何曲もあり、これもいいな。こっちもいいなとか2人で悩んだ。
いきなりギターソロとか難しいから、歌いながら弾けるくらいを目指そうと、弾き語りできるのを選んだ。
なかなか、弾き語りできるようにならなかった。
数ヶ月たった。
俺はなかなか上手くならず、弾いてると歌えないし、歌ってると手がおろそかになった。
でも、マコトくんは簡単そうに楽しそうに弾きながら小さな声で歌っていた。
そして、何曲か弾き語りできるようになった頃、ソロのある曲の練習を始めた。
その練習もマコトくんは根気よくずっと弾いてて、スムーズに弾けるようになるのに、時間はあまりかからなかった。
おれは、根気がないのかよく『あーもう、わかんねーやー』と、叫んでマコトくんに笑われていた。
その頃からか、2人でギターを買うならどうゆうのがいいかなと話すようになった。
俺はいつも、バラバラで。
黒いギブスンがいい時もあれはヘンダーがいいときもあった。もちろんPPSも憧れた。
マコトくんは、いつでもPPSのギターと答えていた。
なぜなら、このギターはネックに鳥の模様があるんだけど。そのバードインレイが俺のカラスが遊んでるところのようだから、これがいいといった。
楽器屋にいつか一緒に見に行こうと盛り上がっていた。
楽器屋と言っても、都内の大きな楽器屋だ。
俺なんか、下手だから怖気づきそうだと、思ったけど、マコトくんは『一度弾いてみたい。音が違うのかな?』と、ワクワクしてる様子だった。
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