2日目 愛を形にすると
買い物に行こうと、言われた俺。
買い物の内容はいがいにも?!
朝早く起きようと思っていた。
こんな、フカフカの布団まで用意してもらって、お邪魔してて悪いではないか。
玄関の前を掃くとか、朝ごはんの支度の手伝いをするとか、トイレ掃除をするとか、とにかく何かやらないと!と、思っていた。
だから、朝早く起きなくてはと、思っていたのに。
起きてぼーっと時計を見たらもう9時!
うわ!寝坊した!やば!としか、思えなくて。
飛び起きた。
急いで、顔を洗い歯を磨いて、リビングに行った。
ドアをガッと開けて部屋を見渡すと
ニコニコのおじいさんとおばあさん。
お茶を飲みながら、何やら話しながら笑っている。
『寝坊しました!すいません!』と、頭を下げて謝った。
おばあさんがおもしろそうに『あらあら!いいのよ!起こさなかったのはあたしたちなんだから』と、笑った。
そして、おじいさんが続けた。
『そだな!罰として!俺に今日は付き合え!!』と、笑って言った。
『え、え!何をすれば?』と、オドオドしていると。
にっこり笑って『買い物に付き合え』と、おじいさんが言った。続けて言った。
『だけど、朝ごはんをゆっくり食べてからだぞ。ばあさんがせっかく準備したんだからな。しっかり味えよ』と、言って膝にいるネコの背中を柔らかく撫でた。
朝ごはんは、焼いたシャケと甘い卵焼きが2切れだった。あと、大根としめじと油揚げの味噌汁。
うまくてまた、おかわりした。
おばあさん、名前はかずはさん(朝ごはん食いながら、名前を聞いた)が喜んでおかわりをよそってくれて、ますます食いそうになった。
おじいさんの名前は恭一さんだと分かった。
朝ご飯をしっかり食べ終わる頃、恭一おじいさんが言った。
『そろそろ行くかー!?』
『ハイ!』俺は焦って、淹れてくれたぬるくなったお茶を一気に飲んで答えた。
どこに買い物に行くんだろう?
なんか、食材のまとめ買いでもするのかな?
その時はそんなことしか思わなかった。
玄関から外に出ると恭一おじいさんが俺に言った。
『俺の車で行くからな。お前は助手席に乗ればいい』
『ハイ!』
店までの道が分からないので少し不安だった俺は安心した。
乗ってけばいいのか。
恭一おじいさんの車に2人で乗り込んで、大きく手を振るかずはおばあさんをバックに走り出した。
最初の角を曲がった時に俺は聞いた。
『食材のまとめ買いですか?』
すると、恭一おじいさんが笑って違うと言った。
行き先は1時間半ほど走ったところにあるショッピングモールだと。
俺は意外に思って『何を買うんすか?』と、聞いた。
するとまたまた意外な答え。
『ばあさんの誕生日プレゼントだよ』
続けて言った。
『女物の買い物は何度やっても苦手なんだ。だから、お前についてきてもらったんだ』と、半分照れながら半分嬉しそうに笑った。
1時間半走ると大きなショッピングモールがいきなり現れた。
こんなところにあったのか。
俺はかなり驚いて見上げていた。
恭一おじいさんは、メモを出して俺に聞いてきた。
『プレゼントなんだけど、スカーフと化粧品と洋服。どれがいいかな?』
『え!え!俺に聞かれても分からないっすよ!とりあえず、見に行きましょうよ』と、言って。
大きな店舗を敵に回した気分で見て回った。
スカーフも、色々ありすぎて選べなかったし、洋服なんて本人でもないのに分かるわけなかった。そもそもサイズが分からないし。
で、最後の選択で化粧品になった。
ちょっと変な光景だったと思う。
若い女性たちに混じって、おっさんとガキの男があーでもない、こーでもないと言いながら化粧品を見てるのだから。
ふと、気がつくと女性のお客さんたちがいなくなっていた。
そこで、ようやく女性店員の人が話しかけてきた。
『何かお探しですか?』
恭一おじいさんが答えた。
『探してるよ。さっきから。』すこし、疲れてきてイライラしてる様子だった。
なので、俺も答えた。
『あの!70代女性への誕生日プレゼントを探してるんです。
化粧品にしたいのですが、どんなのがいいですかねー?』
すると、女性店員の人が『口紅なんていかがでしょう。ファンデーションだと、選ぶのに肌の色とか好みとかありますが、口紅ならプレゼントに向いていると思いますよ。』
提案をもらい、俺と恭一おじいさんは2人でうなずきながら、それにしようと答えた。
かずはおばあさんに似合いそうな可愛い感じのピンク色を2人で意見一致で選び、大げさな包みに包んでもらった。
俺はホッとした。
少し、疲れて頭がガンガンした。
もう帰りましょうか!と、言うとまだだと恭一おじいさんが言った。
げ!まだ??
あと、何を買うんだよーって、思ったら。
(ここの時点で4時間たっていた。)
スタスタ恭一おじいさんが歩き出した。
買うものが決まってるように。
そして、花屋の前で立ち止まり、可愛く作られてる花束を見て、大きめの結構な値段のする華やかな花束を選んでサッサと購入した。
あ、花かー。
女性は花束嬉しいらしいもんなーと、ぼんやり思ってると。
『あとは、ケーキ買って帰るぞ。それぞれ好きなケーキを買って帰ろう。あいつはいつもアップルパイだから。お前も好きなの選べよ。』と、笑った。
ケーキを3つ買って、帰り道に車の名前を聞いた。
フアットという名前の外車だそうだ。
かわいい車だと恭一おじいさんに言うと『そうだろー?!』と、喜びカーブを大げさに曲がった。
小さくてかわいいその車。
俺は大好きになった。
大きくなって、その車が欲しくなるほど、その車のファンになった。
家に着くと、心配そうなかずはおばあさんの姿が見えた。
俺たちが車から『ただいま!』と、降りて恭一おじいさんが『ほらほら!お茶にしよう!ノドが渇いた!』と言うと、かずはおばあさんは嬉しそうに、家の中に入っていった。
その隙に、花束とか荷物を家の中に2人で入れた。
夜、夕ご飯の後に恭一おじいさんが突然、立ち上がり!
ジャジャーンと、ケーキの箱を出した。
え!プレゼントからじゃないのー?って、思ったんだけど。
プレゼントは、ケーキの箱を開けてるかずはおばあさんにそっと差し出された。
ビックリしてる顔を見て、恭一おじいさんと喜んで笑った。
口紅をそっと出して、かわいいピンク色のスティックをかずはおばあさんが見てた。
嬉しそうに、頬を少し赤らめて。
そして、ケーキを食べ終わった時に
『またジャジャーン!』と、花束が出てきた。
かずはおばあさんは涙ぐんで喜んでいた。
『嬉しすぎて、さっきのアップルパイを忘れちゃいそう』と、笑った。
愛をもし、形にできるとするのであれば。
今見ているものが愛なのでは。
これが、愛じゃなくて。何が愛なんだ。
そんなことを、俺まで涙ぐみながら思っていた。
よかった。この光景を見られて。
そして、旅に出てよかった。
最後まで読んでいただきありがどうございます。