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ネコカブカラス  作者: 山崎 モケラ
3/15

1日目  雨の夜

慣れないバイクで、雨しかも夜になってしまい困る俺。

ネコもいるしカラスも。

どうしようかと困っていたところなんと!

山に向かってひたすら、バイクを走らせていると。


どこから山だったのか。

木が多くなったなーと、思っていたらいつのまにか山だった。


坂道が増えて。


少しづつ民家と民家の間に緑が増えて。


畑も増えて。


湖に着く頃には、民家はなく曲がりくねった道が俺の前に伸びていた。



ここで、現れた分かれ道。



どっちにいこう。


俺はちょっと心細くなっていたので(本当に俺ってやつは!情けない!)この先に集落がありそうな方の道を選んだ。


ただのカンで。


この時のカンは正しかった。

後から思っても、ついていたとしか思えない。



この時、雨が少しだけポツリポツリと降ってきていた。



スピードを出して、あるのかわからない次の集落を目指した。


すると、また、少しづつ家が現れて、集落にたどり着いた。

少しほっとして、大きな看板を見た。



日帰り温泉。



うわー。少し雨も降ってきたし。

休むか。カラスやネコも疲れてしまうだろうし。

休ませることにしよう。



俺はその日帰り温泉に立ち寄ることにした。


まさか、この後にあんな展開が待ってるとは、その時の俺は思わずにいた。



日帰り温泉には、露天風呂もついていて、のんびり手足を伸ばした。

まだ、でも、雨が強くなってきてる。



どうしよう。

宿って、ネコがいても泊まれるのかな。

無理かな。

どうせなら、この辺りで今夜は泊まりたいな。



風呂から出たらスマホで調べようか。



そんな事を考えて、空と腕時計を交互に見ていた。



どうしよう。どうしよう。



いざとなったら、家に帰ろうか。

夜中には着くだろう。



腹もすいてきた。



『おい、にいちゃん!あんたどこからきたんだ?』



頭にタオルを乗せた、おじいちゃんと同じくらいの年齢の人が、笑顔で話しかけてきた。



『俺は住所と。そして、ネコとカラスを連れてバイクで今日から旅に出た事』をその笑顔のおじいさんに話した。



おじいさんは『カラス!ネコ!へーーー!』と、驚いて、空を気にしていた。


その時には結構雨が降っていたから。

日も暮れていた。



おじいさんはちょっと考えて『おい、にいちゃん!

もうかなり日が暮れているし、なにより雨がすごい。こう言ったら悪いけど、バイクの運転が得意そうには見えないし。』と言って笑った。


『どうだ、今夜はうちに泊まるか?それなら、ネコも平気だし。納屋があるからカラスを入れとけばいい』


『家には俺くらいのばあさんがいるだけだから、気を使うな。どうする?』と、願ったりかなったりのお誘いを受けた。



俺はバイトの先輩に言うような口調で『もちろん行くっす!』と、答えた。


すぐに風呂から出ようとすると。



おじいさんは続けて『ただ、まだ風呂場から出ちゃだめだぞ。』

『ばあさんの風呂は長いんだからな。』と、笑ってそのしわくちゃな顔を湯船のお湯をくんで洗った。



休憩室で、初めておばあさんと会った。


おじいさんはぶっきらぼうに『こいつの行くところ今夜ないって言うから、うちに泊めさせるぞ』だけ言った。


おばあさんは『あら!そうなの!お客さんね!なら、お化粧してくればよかった!!』と笑ったり、『夕ご飯を気に入ってもらえるといいんだけど。』って、心配したり忙しく話し続けていた。


俺は『好き嫌いないですから!』と、おばあさんを安心させた。

本当はサバが苦手だったんだけど、黙っておいた。



おじいさんとおばあさんは、小さな赤い車に乗っていた。なんの車かはこの時はまだ、わからなかった。

俺は、雨の中の運転に必死だった。



おじいさんとお婆さんは、雨の中、2人で笑いながら楽しそうに車に乗り込んでいた。

ぶっきらぼうだったおじいさんは、どこにもなく。

優しく笑っていた。


それをぼんやり見ながら、仲がいいなー。

こんな夫婦になりたいと、彼女もいないのに思った。



7分ほど走るとおじいさん家に着いた。

ボロボロの家を想像していたのに。


いやいや、なんだか立派で今風だった。

そして、小さな納屋まで庭にあった。納屋に通されて、ここでカラスを休ませるといいと、雨風が来ない場所を使われてくれた。


餌と水をあげて。


『さあ、家に入ってー!』と、おばあさんに言われ、フカフカのタオルを貸してくれて、雨で濡れた体や、荷物を拭いた。



玄関は、なんだか俺にはわからないハーブの匂いがした。

あんまりいい匂いだから、胸を広げて深呼吸した。


それ見て、おばあさんが『これは、ラベンダーよ』と、教えてくれた。



へー!うちなんか芳香剤だから!全然違うなー!と、感心しっぱなしだった。



あなたは、お客さんだけど、家のようにくつろいで欲しいから、スリッパはいらないわね?と、裸足でぺたぺた歩く事を許されて、実際、その方が気持ちよかった。


ネコは家中の窓の確認してから、家に放された。

ネコはすぐにおじいさんの膝の中で寝てしまった。



夕ご飯には、サバは出てこなかった。


鶏とジャガイモ、玉ねぎを洋風に煮たものだった。

辛子をつけて食った。

あと、キャベツの浅漬けが漬けてあった。


あんまり、うまくて俺は悪いなと思いつつもおかわりした。


実は3杯。

みんなの分のご飯が無くなっちゃうかなと、遠慮しようとしたけど。

いいから!食べてーと、嬉しそうにおばあさんに言われて、つい食ってしまった。



その夜は、おじいさんとおばあさんに、学校をやめて旅に出ようと思った事。


行き場所は決めていない事。



そして、泊めてくださってありがとうございます。と、丁寧なつもりだけど、丁寧にお礼を言った。



夜、綺麗なシーツを敷いてくれたお客様用布団を小さめの部屋に敷いてくれて、ネコと一緒に暖かく寝た。


しばらく俺は起きていた。


ワクワクした思いつきをしてしまったから。



お礼に!お礼にさー!

何か労働を提供しよう!


明日はそれをしよう。


旅なんて焦らないし、急いで行かなくていいし。


そうだ!入り口にあった少し大きな木。

あの木の枝おろしとかどうだろう?

それとか、キッチンの換気扇の掃除とか!

どれもやったことがある。


母が絵を描いて仕事してるような時は、掃除とかは頼まれて、俺がしていた。

枝おろしもおじいちゃんとやった。


何か!何か!働こうーーー。

喜んでもらえますように。



そう思いながら、しあわせな気持ちで眠りについた。



最後まで読んでいただきありがとうございます

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