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ネコカブカラス  作者: 山崎 モケラ
12/15

帰宅

落ち込んで帰ってきた俺。

そこで母から聞いた話は。

俺はハナが出て行ったあと、何もできなくなった。


なんだか苦しくて、笑うことも減った。


いや、笑わなくなった。



マコトくんが心配して学校から4時に戻ってくるようになったけど。


それすら、その時には気が付かなかった。



恭一おじいさんは何も言わずに、そっとしておいてくれた。



かずはおばあさんは、俺の大好物のオーブンで焼くプリンをたびたび焼いてくれた。

なぜなら、ご飯を食べなくなってしまったから。



そう。食欲まで落ちてしまった。



昼間、膝の上にネコを乗せて、ぼーっとする時間が増えた。



俺は。



俺は。



もう、前の笑う俺に戻れない気がした。




そんな5月の午後。

ネコを撫でながらぼーっとする俺の横に恭一おじいさんは座り、こう言った。



『お前さ、しばらく実家に帰ってみたらどうだ?


ここにいちゃいけないわけじゃないぞ。


実家に帰ってさ、そして、またおいで』


そして、真面目な顔してこう続けた


『その時は、バイクじゃなくて引っ越し用トラックで引越してこいよ』


そう笑った。


俺は小さな声で『ハイ』と言った。



引越してこい。の言葉に嬉しくて泣けてきた。




次の日の朝、バイクに俺だけ乗って。

カラスとネコは置いていくことにした。


恭一おじいさんが『置いていけ、世話しておくから』と、言ってくれた。


恭一おじいさんの肩にカラス、かずはおばあさんの腕の中にネコの2人と一匹と一羽で俺を見送ってくれた。


『また来ます』と、言いながら出発した。




どんどん山を降りて、左右に曲がりくねった道を降りていくと里に出て街になりバイパスになった。



まっすぐな道をガンガン走ると、アッというに間に家になった。


なんだか、あっという間について。


こんなに近かったのか。と、驚いた。




俺は『ただいまー』と、家に入った。



母が驚いた顔して、リビングから出てきた。


『あ!あんた!帰ってきたの?!帰るなら、早く教えてよー!

シーツとか洗っておいたのに。


布団もずっと干してないわよ』と、ワーワー言っていた。



俺はそんなことどーでもいいので『いいよ。そんなの』とだけ、ぶっきらぼうに答えた。


そして、ネコとカラスがいないことに気が付いたのだろう。


『なんかあったの?』と、聞いていた。



『失恋して帰ってきた』なんて、恥ずかしいコトを母親になんか言いたくないので


『ちょっと落ち込むことがあって帰ってきた』と、言った。



母親は『ふーん。そっか。ま、いいわ。


しばらく家で遊んだら?』と言った。


俺はビックリして『こういう時はさ、休んだら。じゃないの?遊んだらって、変だよ。』と、言った。



母は『変でもいいじゃん。遊ぶ方が楽しいじゃん。

あたしさ、今、遊んでいたところだったのよ。

思い出した!


鶏がらスープを5時間煮てとって、ラーメンを最初から作るところだったのよ。スープを見に行こうー』と、走って行ってしまった。




『へー、ラーメンなんてできるのか〜』と、ボンヤリ思いながら、俺も母の後について行きそのラーメンスープを見に行った。



母が作った『最初からのチャレンジラーメン』はなんだか、味が足りない感じ。


薄いのか、スープの濃さなのか。


なーんか、足りない感じでうまくない。


『あんまりうまくないわーー!これ、ラーメンじゃない!』と、母は叫び、そんな母と『最初からのチャレンジラーメン』を食った。


俺はそのうまくないラーメンを食いながら『失敗だねー』と、言った。



すると母が笑って『何言ってんのよ!こんなにうまくないラーメンさ!どこ行っても食えないよ!インスタントのほうがずっとうまいじゃん!


そういう意味では、成功なの!』と、大笑いしていた。俺もバカバカしくて、つられて笑った。



すると、急に真剣な顔して


『失敗はないよ。何事もね、そこから学びはあるもんよ。あんたが今落ち込んでる理由もね、来年になればいい経験だった、いい思い出だと、思えるものなのよ』と、言った。



俺は『あー、こんなまずいラーメン食えないよ。

インスタントのラーメン作ろうかな』と、言いながら部屋を出た。


少し泣きながら。


そして、心のどこかでホッとしながら。



少しづつ俺は心が軽くなっていった。



家族に『恭一おじいさんやかずはおばあさん、マコト』の話をした。


『マコトがギター好きでさ、うまいんだよー。

あいつ、ずっと弾いてるんだよなー。変なやつ!


恭一おじいさんは、面白いんだよ!

なんかいつも、ネコと寝てるようなんだけど、文章を書いてる仕事をしてるようなんだ〜。


かずはおばあさんは、優しくてさ。

いつも、うまいおやつを作ってくれる!』



と、とりとめなく話した。



父と母とおじいちゃん、おばあちゃんが笑って聞いていた。



そんな時に母が急に言った。


『あんたさ、高校行きたくないらしいけど。

大学は?』


『面白い勉強したくないの?』と、聞いてきた。



俺が『何を勉強するんだよー』と、笑いながら答えると。


母は『その恭一おじいさんだって、文章書くぐらいの人ならたくさん勉強したはずよ。


数学好きならプログラミング向いてるだろうし、


絵の勉強ならさ、美大いくとたくさん仲間もいるんじゃない?


建築、お医者さん、看護師さん、先生


なんだって勉強がいるのよ。



面白いからさ、大学受験狙ってみたら?


狙うのだけでも面白いじゃん。』と、言った。



俺は急にワクワクしてきた。


そうだ。



何にチャレンジしよう。


母の『最初からのチャレンジラーメン』を思い出していた。


チャレンジして悪いことは何もない。


失敗しても勉強は無駄にはならない。




『とりあえず、ここいくといいんじゃない?』と、


通信制の高校のサイトを母が教えてくれた。



『学校に行くよ!そして!そしてさ!』




俺はやりたいことがたくさんありすぎて、なかなか絞れず。



というか、まだ、通信制の高校にも入学してないのに、大学のことで頭がいっぱいになった。

最後まで読んでいただきありがとうございます

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