ネルマ、話をまとめる
寝間は家にいた。休日である。黙々と巻物を作っていた。
八本ばかり作ったところで“これでいいか”と思えた。
中に入っているのはキムチやレタスやら。マヨネーズとめんつゆと胡椒で味付けして、ご飯と共に巻き込んでいる。
荷物を纏め、冷蔵庫に四本ばかり残し、歩いていく。
もう、寒い季節であることが当たり前になって、時折春は未だかと絶叫する声が頭をよぎる。
木々の間を歩き、丁度良さそうな木の下で荷物からスリングショットと陶土弾を取り出し、鳥を打ち始めた。そこそこのでかい鳥がボターッボターッと落ちてくる。
刃物で手際よく血抜きをしていると鹿が木の皮をガリガリと齧っているのに出くわす。
スリングショットを構え玉の入ったゴムを力一杯引っ張る。
「………………」
にやにや笑いながら構えを解き、後ろ斜めを付いてきていた女性に顔を向ける。
女性は得たりと頷くと猟銃を構えた。ネルマは銃弾の軌道から逃れるため、軌道に直角に離れていく。
林に筒音が木霊する。
獲物を5人がかりで解体し、拓けたところで少し肉をあぶる。
巻き物と鹿肉鶏肉を頬張り、ネルマは滋養を摂った。
帰り際、ネルマは自分のスリングショットをまたもや空に向けた。ひとつ陶土弾を手に、ぎりぎりとゴムの部分を引っ張っていく。
空には二羽の鳥が各々好き好きに円を描き、弧を描き、自由に舞う。
透き通る青空
2つの影
自然と同化するネルマ
すらりと指を放し、ビュッと空気を切り裂いて虚空へと上がる光の線。
何処とも知れず玉は消え、時が過ぎたとき、二羽の鳥がボタボタとネルマ達の近辺の木の枝を上からへし折りながら跳弾し、弾け飛ぶ木の枝の炸裂弾を高速でばら蒔きつつ大地を襲撃した。
辺りには女5人の悲鳴が響き渡った。
「さんざんですね。」
「「「「お前が言うな!」」」」
その後、ネルマは4人に林の中でコッテリ絞られたと言う。
休日明け、ネルマは机に突っ伏してパソコンをつついていた。
取り組みのまとめ
人間への教育に於ける念頭に置くべき課題。
今回私は劣等生への教育プログラムを、構築することになった。
劣等生の能力にどの程度の潜在能力があるのか確める必要があった。
また、この国の教育システムの中で、何れが劣等生への教育のアプローチとして適切な方法なのか教育上のカップリングを行う必要もあった。
結論は下記の通りである。
劣等生や優等生とされる生徒の中には人によるが複雑な事柄を自らの興味があることに関しては群を抜いた能力を持つ者がいる。
構造的に物事を捉える知能が興味の引く対象に対して無条件で高騰しているのである。
つまり、学を持つ者として秀才のレベルをしっかり越えているのである。
では、何故劣等生は勉学に於ける得点が悪いのか。
それは単にこの国の教育プログラムが、或いは世界の教育プログラムが人の知的な能力を十全に対して向上させる機能を有していないからである。
なので、喫緊の課題はこの国や世界の教育システムを構築する人々が教育業界の無能を認識し、教育の発展の可能性を認識し、どの程度まともに予算を取り、教育の有り様のカスタマイズをするのか、そしてこの3つにきちんとベクトルを向けることが出来るかにかかっている。
努力には努力の量と方向性がある。
今迄は、勉強が出来ないのは努力の量が足りないのだとなじったり、自由さえ与えれば勝手に発展していくとか意味不明な事ばかり言って来ていたが、よく考えれば努力の方向性、つまり木に依りて魚を望む様なやり方では意味がない事が理解出来るだろう。
なら、努力の量と方向性を鑑みるに、人の知能の発達に焦点を置いたコツの発生頻度とコツとの遭遇率に合わせた学習方法の組み方は人の潜在能力の顕在化に一役買うであろう事は容易に想像できる筈である。
結局の所どの様な人であろうとも、重度の知的障害を負っていない限り、学のある人間になる事は可能であると言っても言い過ぎでは無いだろう。
だか、どの程度なのか分からないが学習の方法が根本の部分に於いて合わない人がいて、学習方法の適切なマッチングが必要である事は明白である。
この様な中我が国の内閣の方針により、劣等生への教育制度の考察が許可をされ再編成を講じる機会に恵まれたことは、ある意味当然の帰結である。
効率的に予算を使うのであれば適切な学習方法を提供していくべきでもある。
もしもその初期投資を煙たがるのであれば永遠に合わない学習方法に大量の予算を使い、高コスト低リターンを続けていく等の愚行を行い続けていくのであり、この段階で軌道修正を図り個人の能力の獲得を活性化するやり方は、この国の世界に於ける位置付けすら変えるかもしれない。
この企画は現代に於ける百俵の俵となる様な取り組みにしなければならない。
人の潜在能力を何処まで顕在化出来るのか。この事業に知的好奇心を触発される人材の確保が急務である。
取り組み案を敲き台で仕上げたネルマは一応敲き台出来ましたと、更に上司にメールで送った。
数時間後に帰ってきた返答は、コレ、大学受験とかどうするんですか?だった。
ネルマは知るか!と呟きながら、免許制度でも作ったらどうでしょう。今の世の中は何となくこれが良い、あれが良いと良いながら人材を決めているので、穴の大きな所には免許制を作って適切な知識を構築して適切な人材の出回り率を上げるべきです。
なので今のところ、ロアーマネジメント・ミドルマネジメント・トップマネジメントが適切な人材をマッチング出来ていないので、この辺りの地域だけでも、漢字検定みたいな検定を作って劣等生達に検定を取らせていくのはいかがでしょうか。
それなら、同時進行で能力向上の研究と、能力の付与された人材の出回りが同時進行で興るでしょうし、大学受験へと組み込むことの日延べ策になる筈です。とメールしておいた。
しばらくしてネルマがチラリと時計をみると、終業時間が来ていたので、メールの着信音を無視して、帰宅するためにオフィスを後にした。
《休み明けとはいえ、疲れるなぁ。》
ネルマは晩御飯何を食べようか考えながら、食料品店に何があったのか思い返していた。