何だかダルい午後
ネルマは良く噛んで物を食べる派である。昼食を摂りながらぼんやりと思い描く。今思い描いているのは小説の中の噺だ。
結局の所ウェダミンは赤毛の少女と、赤紫髪の女性どちらを選ぶのかと云った所か。
ウェダミンの様な妖艶な女性には、元気が取り柄の赤毛の少女も、少し自分に正直になれないものの、直向き過ぎる愛情を隠せない赤紫髪の女性でも、どちらも有りの状態なのだ。
だが、話の流れからどちらか一方の女性しか選べない。もう、両方と付き合っちゃえよ!と思うのだが、運営がどうやらアニメでは、それを善しとはしないらしい。
ゲームだと何人の女性の愛を手に入れられるかを誇る内容で有るにも係わらず、アニメ化に当たっては日和見を極め込んだ運営。
何れだけ派生のパズルゲームに課金していると思っているのかネルマは百合ハーレムの時代の好さと、百合一人に一途愛という、最早運営が逆二次創作状態へと走ったエロゲームから移植した全年齢対象アニメに、何とも言えない気持ちになるのだった。
腹ごなしにぼんやりとしていた。
昼食を終えたからといって、特にすることは無い。
薬も飲んだし、かといって仕事へと向かう気力も無い。
窓から見える風景も飽きた。
特にすることはない。
寝間は眠ることにした。少しだけ、眠ればなにか違うかもしれない。
そもそもである。喩えば、学者がいて学者Aが学者Bにある発明を教えようとしたとする。
その中で長さはどの程度なのか、液体は使っているのか、使っていたとしてそれはいか程なのか、重量はどの程度なのか。
それが紙であろうが、言葉であろうが伝える為に数字を使う。
その数字が重さ長さ量やらの何であり、数字が多くなると数字としての量が増えるから桁を整理する必要がある。
その二つの解決として、左にある数字の桁の整理と、何であるかを表す記号を学者は使う。
それらを知っていたとしても、理解出来ない馬鹿がいる。
文言だと分かるけど、説明文からは理解が出来ないと宣う馬鹿が。何だかんだで居る。
単位知らないの?と聞くと知ってるよって言うのに、適用や運用している時の位置付けをから入ると、何を言っているのか分からないとか、そんなの無いって言ってくる。
三人よれば文殊知恵を分からないのか?進化論が理解出来ないのか?小学校4年程度の文章が読めないのか?
どうやって生きてきたのか?それで、インテリ面するのか?塾行って高学歴目指して高学歴になってそれで、その程度なの?
パッと目を開くと、体の節々が痛みをあげていた。
時間をかけつつ、体を直していく。
一息ついたネルマは一先ず用を足し、お茶を入れる。
一寸ボサボサになった髪を、手櫛で解きながら、ホワイトボードに伝播とはと書く。
伝播とは、
伝播とは、
伝播とは、
……猿が芋を洗うらしい。そして、塩水で洗うらしい。最初は一匹だったのに、一年後に調査に行った時、島の全ての猿が塩水で芋を洗っていたらしい。
それを伝播と言う。
だけど、火を使うかと訊かれれば、否としか言えない。
流石に、伝播にはレベルがある。伝播は教えられる側の知能に結構左右される。
要約しても、要約していなくても、単語で言われても、単語で言われなくても、理解できる脳みそが無いと、事象を何度説明しても理解出来ない。
だから、伝播には言葉を聞き取る人間の能力に左右される。
成績劣等生は案外上手くやっている。
やはり、無理をせずに図説に頼るか。
大工はツーカーで話をすると言う。玄人衆に見られる現象だと言う。
大工の親方が言葉少なに指示を出し、古参から中堅層がその少ない指示で円滑に動くと言う。
神話かと問われれば、案外目撃者が多いのが気になる。
若し仮にこれ等の事が事実だとして、仮にこれ等の事を今までの分析に拠って仮定を作るとすれば。
大工従事者は、10年たってから意見をいえと言うがそれは建物を建てる上でのバリエーションの収集にかかる時間で、10年の蓄積データがあれば、工程の現状から次の工程が頭に直ぐ様浮かび、仮に親方の言葉が少なくても、作業工程を見れば、次に何を指示されたのか理解出来るという状態なのでは。
……つまり、大工は言葉少なにやり取りをしていても、その情報の輔弼に記憶を使っている。
つまり、大工は内部から見れば、記憶を使った図説を行っていて、外部から見れば何で言葉がそんなに少なくても伝わるのかと言う摩訶不思議現象として捉えられている。
それを知って猿真似する人々が、報連相を怠る事の正当化に使っていたりする。
図説を脳みその中の記憶を元に出来る様になるまで10年は係る。
それを理解せずに、何で言っていないのに俺の考えの通りに動けないのか!と叱責する意味不明な人々がいる。猿真似厳禁。
大工って頭良いの知らないのかな?どう考えても理数系。中学から入れるからってイメージで舐めすぎ。頭いいよねどう見ても。本人たちに自覚有るかどうか兎も角。
それなりの頭ないと物体を構築する作業なんて無理だから。
ネルマは自身がラジコンを作ろうとして挫折した記憶が甦った。
何あの説明書。あんなので分かる人いるの?
ネルマは年の離れた従姉妹が、私出来るよと言って、ラジコンを説明書見ながら、完成させたのも思い出した。確かあれは、彼女が小学生の時だった。
何なんだ。何がいけない。
ネルマは取り敢えず気を落ち着けようとお茶の用意をすることにした。
この辺りはイギリス感出している。
賞味期限が切れかかっている訳でもない菓子を取り出して、沸いていたお湯を、カップに淹れて、戸棚からティーパックを取り出してパックをソッと浸ける。
お湯が茶色く染まっていく。
確か、良い紅茶の温度は80度位だったかな?……沸騰した物を淹れたけど、器其なりに冷たいから、……丁度かな。
ネルマは紅茶を呑み、菓子を食べ、紅茶を飲むを一頻り繰り返した。
窓から見える木々は葉を散らしていっている。
木は遠からず枝のみとなるだろう。
枝だけの木も、結構芸術的だよね。
そんな事を考えていた。
大工と言えば大學と学界の関係があるよね。ネルマが学界と大工の関係性について考えていたら、帰宅時間を告げるチャイムが鳴り響く。
ネルマは机の上を片付けるとホワイトボードはそのままに仕事場を後にした。