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試しの駅  作者: 北キツネ
5/7

5話

ダイキとスミレは互いに肩を寄せ合って席に座りそこから見える駅のホームを眺めていた。

しかし、ダイキはともかくスミレは既に限界なのか瞼が落ちかけている。

それを見てダイキはスミレに声を掛ける。


「先に寝ても良いぞ。おまえこの時間はいつも寝ていただろう。」


するとスミレは自然にその顔に笑みが浮かべた。

それは互いにこうやって過ごす様になり1週間だが自分の事をちゃんと見てくれているのを知ったからだ。

するとスミレは瞼を閉じながらだがダイキにハッキリ聞こえる澄んだ声で話を始めた。


「さっきの事を覚えてる?私達が出会った時期の話。」

「ああ、覚えている・・・。」

「本当はね、私はもっと前からアナタの事を知ってたんだよ。」


するとダイキは自分の方に頭を預けるスミレへと視線を向けた。

実際にダイキは高校でレスリングをしており、体つきも良く男らしい顔つきが女子に人気がある。

告白されたのも1度や2度では収まらず何度もそれを断っていた。

しかし、彼にだって理由がある。

ダイキは2ヶ月ほど前に一人の女生徒を不良から助けた。

全ては偶然だったがその時の笑顔が忘れられずしばらくして校内を探したが見つからなかった。

自分の一つ下だと言う事は制服にある刺繍の色から分かっていたが今も見つけられていない。

そしてダイキはこの時、もしスミレが今の状況から吊り橋効果の様なもので自分に恋心を抱いていると思っているのならいつもの様に断ろうと思っていた。


「あれはね。学校に入学して少しした頃だよ。私は部活で遅くなっちゃって近くの神社を通って近道をしようとしたんだ。」

「神社・・・。」

「そうだよ。そこは少し暗いけど通ると家がすぐそこなの。でもその日はどこかほかの学校の人達が・・その・・隠れてタバコを吸っててね。それで引き返そうとしたけど見つかって捕まってたの。」

「そうか・・・。」


ダイキは何処かで見た事のある光景が頭に浮かび、肩に寄り掛かるスミレから目が離せなくなっていた。

そして、自分の心臓がまるで試合をフルタイムで行った後の様に激しい鼓動を刻んでいるのを自覚する。


「その時にね・・・ダイキ君が・・助けて・・くれたの。その時から・・あなたの事が・・好きでし・・・。スー・・スー・・。」


そして、スミレはそこまで言うとダイキの返事も聞かずに眠ってしまった。

ダイキは顔を真っ赤にしながら今はスミレの寝顔から目が離せない。

先程まで何とも思っていなかった少女が自分が探している相手だと知ったからだ。

そして、始めて近くでスミレを見たダイキはそこにあの時の少女の面影を感じ取った。


実はあの時からスミレは髪を下ろし目はコンタクトにしていた。

友達に相談し、地味だった自分を変えるためにイメージチェンジしたのだ。

そのため外見で探していたダイキの目に留まらずに2ヶ月も経過してしまった。

それにダイキが相手の顔で覚えているのはその時までスミレがしていたツインテールと眼鏡が大半を占める。

世の女性が聞けば「女を舐めるな!」と言われそうだが、ダイキにとってスミレとのファーストコンタクトはあくまでも偶然だったのだ。

後になって思い出す程度なら仕方ないだろう。

そしてダイキはスミレの寝息に耳を澄まし微動だに出来ずに見張りを続けた。



そして、その横ではイチカとナゴミが恋人らしく肩を寄せ合い、小さな声で語り合っていた。


「い、イチカは・・その、どうして私なんか・・す・・好きになったの?」

「そうだね。ナゴミだからかな。実は僕の好きな漫画で・・・って、どうしたんだナゴミ?」


何故か話をしている最中にナゴミが突然『プッ』と噴き出し口を押えながら笑い始めた。

イチカは疑問に感じたがナゴミは目に浮かんだ涙を指先で拭うと笑顔で顔を上げる。


「ごめんなさい。まさか学年で成績トップのあなたが漫画を読んでるとは思わなくて。」

「僕だって漫画くらいは読むよ。特に父が好きで家には沢山あるんだ。」

「ふ~ん。それで私に似た人でも出てくるのかな?」


ナゴミは笑いを堪え、何とか体裁を整えるとお姉さん口調で話を促した。

するとイチカは苦笑を浮かべ首を横に振り違うと否定する。


「キャラじゃなくてセリフがね。それを読んだ時の俺は思ったんだよ。その願いを言った主人公は願いを叶えてもらえると言う時に何であんな事を言ったのかってね。」

「その人は何て言ったの?世界の支配者になりたいとか?」

「いいや、君の様な人にずっと傍に居て欲しいって言ったんだ。その時の俺はそんな都合の良い相手が現れる筈はないって思ってたんだ。でもそうじゃないんだって君と出会って知った。」


ナゴミは先程までの笑いが収まり、真剣な目でイチカを見詰めている。

話の内容こそ最初は笑ってしまったが、いつの間にか話の流れが自分達に向いていると気付いたからだ。


「あれは都合の良い相手を求めたのではなく、彼にとってその相手が自分の理想だったんじゃないかって今は思う。だから俺も君に伝えたい。これからも僕の傍にずっと一緒に居てくれないだろか。」


するとナゴミは顔を一瞬で赤くすると心と心臓が同時に跳ねるのを感じだ。

今までは生徒会で会長と副会長という役職上、周りへの示しもあって色々と我慢したり押し込める事ばかりだった。

学校も風紀に厳しく手すら繋げない状況で彼女は常に苦しみ、ここでも染みついたそれがずっと続いていたのだ

そんな中で先程のスワとイヨの死は二人に大きなショックと変化を与えていた。

そして、ナゴミは思考よりも、長い間忘れていた心の叫びに従って次の行動を反射的に選択する。


「はい。私で良ければ。」


そう言って彼女は気が付けば目に涙を受けべイチカの胸に顔を埋めていた。

しかし、その幸福は長くは続かなかった。


「イチカ?」


ナゴミを包んでいた手が突然下がり、額から何か暖かい物が垂れて来る。

そして、それが目に入り視界を塞ぐと世界は真っ赤に塗り潰された。

そして、頭の上に何かが当たりそれはまるで花瓶か丼が地面に落ちた様な音を立てる。

ナゴミは咄嗟にそちらへと視線を向けるとそこには先程まで楽しく愛を語り合っていたイチカの首が落ちていた。

その瞬間、自分の顔に付いている物が何なのか。

そして、見なくてもイチカがどういう状況なのかを彼女の学年トップレベルの優秀な頭脳は即座に理解する。

そしてテストの穴埋め問題の様に解答を導き出した瞬間に先程まで笑っていた口から絶叫が吹き荒れた。


「きゃーーー!イチカーーー!!」


その声は周囲へと響き全員の視線を集める。

そしてその視線の先では首から上を失ったイチカの首から、まるで噴水の様に血が噴き出している。

その中心に居るナゴミはそれを全身に浴び、真っ赤に染まって血だらけになっていた。

しかし、その手はイチカの体を強く掴み、一向に離そうとはしない。

その顔もショックで表情が無くなり、頭の無くなった所を凝視している。


「ナゴミ!」


そこでようやくマイコも立ち上がってナゴミを引き剥がそうと動き始める。

しかし、次の瞬間に外から鎌の様な反しの付いた棒が伸びナゴミとイチカを車外へと連れ去った。

その衝撃でナゴミの手が発車スイッチに触れ、外に出ると同時に扉が閉まる。


「「ナゴミ!」」


俺達は咄嗟に窓に飛び付き、そこから外を確認する。

しかし、その時には既に手遅れになっており、ナゴミは首を切断されていた。

そして、女は見せつける様に二人の首を両手で掲げるとニタリと笑って見せる。


俺達はそれを見て窓を殴り、女を睨みつけてながら腰を座席に落とした。


「油断・・してたわ。」

「俺もだ。」


俺はマイコの隣に腰を落とし、頭を項垂れる。

まさかこんな短時間で2組もやられるとは思わなかった。

俺自身も彼らがそれなりの期間、生き延びているので大丈夫だと思っていたのだ。

しかもこの駅でも既に日に2時間という法則が崩れていると言う事は次の駅でも同じ事が予想される。

生き残るためにはこの中で最も長く生き延びているマイコの知識が必要不可欠だ。


「マイコ・・・マイコ!」


しかしマイコは返事を返さず、顔を手で覆って俯いたままだ。

しかも体が小刻みに震え、すすり泣く声も聞こえる。

これは・・・心が折れているかもしれない。


人一人の心はとても弱い。

だから支え合って生きて行くのだが今のこの状況がそれを困難にしている。

それにマイコは先に死んでしまった2組とは付き合いも長い。

きっと色々な事を語り合い、思いを明かし合って来たのだろう。

その4人とのこんな別れ方をしてしまい体よりも心が悲鳴を上げているに違いない。

俺は今はそっとしておこうと、ただ傍に座り体を寄せるだけに止める。

もし次の駅までに元に戻れなければ俺が背負ってでも連れて行くしかない。


「2人とも聞いてくれ。」


するとダイキとスミレはこちらへとやって来て対面の席に座る。

その顔色は二人とも良いとは言えず、スミレに関しても既に限界が近そうだ。


「2人は元の駅へ戻る手段を知っているか?」


するとダイキが手を上げながら小さく頷いた。


「この車両は先にしか進めないんだ。だから隣のホームまで移動して折り返す必要が有る。」

「そうか。それで、2人はここから先の情報は?」


すると2人とも首を横に振って否定する。

ここに来て1週間くらいなら仕方ないだろう。

あの駅がこの辺で一番安全だと言うならあそこまで戻る以外に方法はない。

最悪、戦って倒してでも安全地帯を手に入れる必要が有る。

そうしなければ不眠不休でこのまま居れば全滅は必至だ。


「なら、隣のホームまで移動して乗り換えるぞ。そして、串刺しを目指す!」

「分かった。」

「は、はい。」


そして数分ほど走った所で前回と同じ様に次の駅を知らせる車内アナウンスが響き渡った。


『次は、極寒~極寒~。』


しかし、俺はそれが示す意味がイマイチ理解できず、首を傾げる。

それでも状況が分からない以上は俺は全員に頭を下げさせ慎重に外を覗き込む。

するとそこには白銀の世界が広がり、ホームは雪で覆われていた。

そして、電車が止まり扉が開くと雪は深さが50センチくらいまで積もっており、寒さもマイナスではないかと思わせるほどに冷えている。

これは歩くだけでもかなり大変そうだ。


そして、最大の問題はマイコとスミレの二人だ。

マイコは今も気力が戻らず、碌に歩けそうにない。

白い息を浅く吐き出し生きている事は確認できるが、俺が支えなければ歩く事も出来ない程だ。


そして、スミレの場合はやる気よりもその服装にありスカートにスニーカーだ。

季節も春の後半だったのでこれは普通だが、どう見ても雪道は歩けないだろう。

それはダイキも同じ事を思っていた様で自分からスミレに声を掛けた。


「スミレ・・その。俺の背中に乗れ。」

「い、いいよ!私重たいから!」

「スミレ、ここはダイキの言う事を聞いて乗ってくれ。これから急いで隣のホームに行くがここからどれくらいの距離があるのかも分からない。だからお前は体力を出来るだけ温存しておけ。何時あの女に襲われるかも分からないんだからな。」

「そ、それだとダイキ君が・・・。」

「俺なら大丈夫だ。この通り鍛えてるからな。お前くらいなら重りにもならないぞ。」


そして、スミレはオロオロしながらも決心を固め、ダイキの背中に負ぶさった。

きっとダイキに余裕があるなら、今の奴は背中に幸せを感じているだろう。

スミレは体型は小柄だけど胸はあるからな。

その証明としてダイキの顔が赤いのは本人の名誉のために黙っておこう。


そして、それを知ってか知らずかダイキの耳元でスミレは心配そうに声を掛ける。


「ゴメンねダイキ君。辛くなったらいつでも言ってね。」

(うお~、息が・・息が耳に~!!)

「ゴホン・・・、さっきも言ったが気にするな。ほ、惚れた女くらい何処までも運んで見せる。」

「え!」


ダイキはドサクサに紛れて告白紛いのセリフを吐くとスミレは驚きの表情を浮かべる。

しかし、ダイキにはこれが限界だったのか声を上げて進みだした。


「良し行くぞー!」


そして俺も同じようにマイコを背負ってダイキの後を追いかけようと立ち上がる。

しかし、その瞬間!


「お(もい)!」


俺はマイコを背負った瞬間に女性に言ってはいけない上位の言葉が口から飛び出しそうになる。

しかし、俺はそれをギリギリで掛け声に変えてダイキが歩いた後を進んで行った。

こうすれば体力が温存出来て片方が辛くなったら前後の交代も出来る。

それにしても脱力している人間を運ぶのはかなり大変だと聞いたがその通りだ。

しがみ付かないから傾きそうになるし、俺だけの力で運ばないといけない

出来れば自分で歩いて欲しいとは思うがコイツには既にここ数時間で何度も命を助けられている。

それにダイキではないが惚れた女くらい面倒を見れなければここで助かる意味はない。


「ダイキ、無理はするなよ。」

「オウ!」


そして、階段を慎重に下りるとそこにも白銀の銀世界が広がっていた。

床は雪で覆われ、天井からは鋭い氷柱が伸びている。

簡単に落ちて来そうにはないが注意しないと寒い地方では氷柱により死者が実際に出ているらしい。

俺達も油断しているとザックリやられそうだが、ここにも何処かにあの女が居る筈だ。

そうなればあれはそのまま奴の凶器にも変わる可能性がある。

俺達は慎重に進み戻る為のホームの案内板を探す。

すると50メートル程進んだ先に目当ての案内板を発見した。

雪が付いて見えにくいがそこには確かに戻った先の駅である『首切り』と書かれた文字があった。


「それにしてもちょっと遠くないか?これは虐めだろ。」


命を狙う存在が徘徊する世界で虐めも何も無いとは思うが、その距離が俺の想像を遥かに超えていた。


「まさかこれから5キロも歩く事になるとはな。」


これは確実に急いだ方が良いだろう。

そうしないと俺達の足が凍傷になってしまうかもしれない。

それにもし背後に女が迫っているなら引き離す必要が有る。

または前に居るなら体力が残っている間に遭遇したい。

そうすればもしもの時に対処が可能かもしれない。

そして、俺達はそれから速度を上げて進み始めた。


その間にダイキとスミレは二人だけに聞こえる声で会話を始める。


「あ、あのね・・ダイキ君。さっきの事なんだけど?」

「ああ、俺もこうして歩いてて決心が着いた。今度は俺の話を聞いてくれ。」

「うん。」


そう言ってダイキはスミレを助けてからずっと探していた事を話した。

そして、スミレもあの後にダイキの為にイメチェンをして今の様な姿に変わった事を打ち明ける。

すると互いの擦れ違いによって2ヶ月も無駄にしていた事を知り、小さな声で笑い声をあげる。


「スミレ、俺とここを出たら・・その・・。」

「うん、良いよ。」

「まだ何も言ってないぞ。」

「ダイキ君の為なら何でもしてあげる。だから一緒に生きて帰ろ。」

「お、おう。」


ダイキはそう言って力強く頷き、スミレはそんなダイキの背中に強くしがみ付いた。

そして互いに感じる体温と鼓動を感じて極寒の地に春の花が咲き乱れる。

しかし、それを邪魔する奴は突然に現れた。


「ゲヒャハハハ!」


しかも現れたのはダイキのすぐ横にある雪の平原からだ。

女は既に氷柱を手にしており、それでダイキを殴りつけた。


「グハ!」

「お・・んあ・・は、もらっだ!」


そして、倒れたダイキとスミレの内、スミレを片手で持ち上げると抱きしめる様に自分の体へと押し付けた。

すると氷の様に冷え切った女の体は瞬く間にスミレから体温と体力を奪い始める。


「スミレ!・・この放しやがれ!」

「ヒャハハハ、お・・ぞい。」


女はそう言ってダイキを躱し相手にしない。

それどころか氷柱とスミレを同時に抱きかかえ、更に体温を奪うのを加速させていく。


「はがく・・たずけ・・ないど・・・おんだが・・死ぬぞ。」

「待ちやがれこの腐れ外道がー!」


しかし、既にスミレの肌は青くなり始め、吐き出される息も白さを失っている。

そして、真っ青になった顔をダイキへと向けた。


「に・・げて。わたし・・を置いて・・て。」

「そんな事が出来る筈ねーだろ!待ってろすぐに助けてやるからな!」


そう言ってダイキは姿勢を低くすると女に向かって行った。

しかし、女はまるで足元に雪が無いかの様な素早さで躱し、嘲笑う様な声を上げる。

そして、スミレは次第に瞼が下がり始め、呼吸が浅く早くなっていく。

それを見てダイキは必死に向かって行くが頭に血が上り過ぎたその動きはあまりに直線的で単調になっていた。

そのため女がそれを見て笑った事にも気付かない。

すると駆け寄るのに合わせ女はスミレと一緒に抱き込んでいた氷柱を手に握り、丁度いい高さに下がっているその頭へと一瞬で振り下ろした。


「ダイキ!」

「くそ・・・ゆ、ユウヤー!ここは俺に任せて先に行けー!!」


ダイキは頭から血を流しながらなんとか立ち上がると再び腰を落として構えを取った。

俺はその後姿を一瞬見詰めるが背中の重さを感じ、その場を進み始める。


「ダイキ!待って・・・。」

「先に行けー!」


すると俺の言葉を遮る様にダイキからの激が飛んでくる。

俺は顔を逸らすとそのままホームがある方向へと進んでいった。


「ここは通さねえからな。それにスミレも返してもらう。」


ダイキから見てもスミレは既に呼吸が止まり死んでしまっている事が分かる。

しかし、死んでいるからと言ってもこのまま背中を見せて逃げるのは漢として我慢が出来なかった。

それに勝てなくとも、そしてここで死んだとしても生きているあの二人の為に道を譲る事は出来ない。

それに先程の頭部に受けた一撃のダメージは大きく、恐らくは自分もそれ程長くはないだろうという予感も感じていた。

いまはアドレナリンが出て痛覚が麻痺しているがもうじき立っている事も困難になるだろう。

そして、ダイキは体が動く内に最後と思える特攻を仕掛けた。

すると女は一歩も動かず、その勢いの全てを体で受け止める。

しかし、女が倒れる様子は無く、腰にしがみ付いているダイキへと笑みを向けた。


「お前何を笑って・・・。」

「認めましょう。アナタ達の愛は本物です。」

「何を言って。」

「・・・。」

「そんな!そんな事があるはず。」

「さあ、眠りなさい。これであなたもお終いです。」


それと同時に女は氷柱の先端をダイキの心臓へと突き立てる。

それによってダイキは床に叩きつけられ血を吐き出しながら僅かに残っている意識で上を向いた。

そこには女が笑みを浮かべ自分の横へとスミレをそっと下ろしている。

しかし、ダイキは指の一本も動かせず、そのまま闇へと落ちて行き命の炎を消した。

そして、死んだことを確認した女ここでもさっとが手を振るう。

するとそこには一切の者は消えており、まるで新雪が降り積もった後の様に綺麗な白銀の世界が広がっていた。


そこから見えるのは遠くに歩いて行くユウヤとマイコの後ろ姿。

それと二人が進む事で出来る白い道だけだった。

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