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『リョウメンスクナ・4』

「さてさてー、こちらはどうしましょうかね~?」


 ご機嫌にエクソシストカスタムがされたベネリM4とグレネードランチャーを携え、アルミアが意気揚々と先を歩く。今回は久しぶりのシスター服の装いだ。


「いっそ二人とドンパチするのも楽しそうっすよねー!ここ、対人は許可されてるみたいですから!」


 後に続くキョウカもいつものスポーティな軽装。しかし打刀に代わって小太刀を数本ほど背中や腰に身に着けている。

 今回は逆手二刀流を試したいと、テンション高く宣言していた結果の装備チョイスだ。サムライガールの次なる高みはニンジャマスターらしい。


「……いや、もうちょっと二人とも集中しようよ?もう、いつ敵が出てきてもおかしくないんだよ?なんだか……どこもかしこも気味悪い雰囲気だし」


 最後尾のユージーンは眉を八の字にして不安そうに辺りを見回していた。

 ミリタリージャンパーにチェストリグを回した民兵スタイルにサングラスの格好だが、へっぴり腰も相まって若干情けない姿を見せている。

 移動しながらの市街地戦ということも想定して、フルオート射撃もセミオート狙撃も可能な【M16A2】をメイン武器に、中距離用スコープや銃を安定させるための二脚(バイポッド)をパーツとして取り付けていた。


 M16A2はその見た目の通りアサルトライフルではあるが、とあるスナイパー漫画の影響を受けて、ゲーム内ではカスタマイズ次第で狙撃銃に競れる性能までアップグレードできるようになっている。

 ユージーンの銃はいまだ途上ながら、十分にその能力を発揮できるカスタムが成されていた。


「ふむ、確かに……。あまりレイスくんとリザちゃんを気にしていても、我々がやられてしまっては元も子もないですからね~」


「じゃあどうするっすか?今日の隊長はアルミア姐さんっすから!遠慮なく言ってほしいっす!!」


「いちおう、向こうの住宅街を抜ける方が最後の通信場所までは近いと思うよ?たぶん、レイスくんたちもそっちに移動してるんじゃないかな……」


 ユージーンは片手にサイシーバーを持ち、街のマップを確認しながらそう言った。

 ふーむと口元に人差し指を当てながらアルミアは小首をかしげ、悩む仕草をする。


「いえ、同じルートを行っても面白くありませんし~、ここは正攻法で行きましょう~」


「え?正攻法?」


 ユージーンが顔を上げた時には、もうアルミアはグレネードランチャーを構えていた。


「発射~」


 ポンッ!!と放物線を描いて発射された弾頭が、道を塞いでいた瓦礫の山に命中すると同時に―――。

 

 大爆発が起きた。


「………」


「………」


 ゲームでなければ鼓膜がぶっ飛んでいたほどの爆音と衝撃波だった。

 実際、ユージーンは地面にひっくり返っているし、キョウカも耳を押さえて唸っている。


 当のアルミアは、爆風できれいに消し飛んだ瓦礫を見てご満悦である。


「サーモバリック弾。いえ、()()()()()()と言ったほうがわかりやすいですかね~」


 通称、小さな核兵器とも呼ばれる爆薬だ。

 従来の爆風によって飛散する破片で相手を殺傷する爆薬ではなく、純粋に凄まじい熱と衝撃波による力で人体を破壊するえげつない兵器である。第二次大戦期に研究が開始され、2000年頃まで様々な改良が加えられてきた歴史を持つ。


 その弾頭を何のためらいもなくアルミアは発射し、無理やりルートをこじ開けたのだった。

 正攻法による力業である。暴力はいいぞと声を大にして主張するが如くだ。


「いやいやいやいや!?何してるのアルミアちゃん!?」


 起き上がったユージーンが悲鳴のような声を上げる。


「はい!これでショートカットが開きました~」


「開いたんじゃなくて、吹き飛ばしたんだよ!!」


 確かに破壊可能オブジェクトを設置していたということは、黒幕(マインドマスター)もこのテロ行為によるルート取りは想定してはいたのかもしれない。いや、それにしたって心臓には悪いけど。


 いまだ炎がくすぶる惨状を目の当たりにしながら、ユージーンはひたすらに、やっていいのかなぁ……これ、大丈夫かなぁ……と答えの出ない自問をするばかりだった。


「さ、進みましょう~!」


「あ、ちょっと待つっす!アルミア姐さん」


 復帰したキョウカが小指で耳をほじりながらアルミアを止めた。

 そして数度、耳を叩きながら聴覚が正常に戻った事に安堵すると、ゆっくりと左右を見渡した。


「囲まれたっす」


 素早くアルミアはベネリM4を構え、ユージーンはM16を握った。

 キョウカもシャリン!と腰から二本の小太刀をそれぞれ抜いて、逆手に持ち変える。


「やっぱり、瓦礫を吹き飛ばしたのはやりすぎだったって!めちゃめちゃ怒らせたよこれは!」


「そのようですね~!テンション上がってきました~」


「うーん、ブレないなぁ!ホント!」


 それぞれで背中をカバーしあいながら、全方位を見渡す。


 やがてすぐに“ソレ”は現れた。


 ガリガリに痩せた人間、と全体像だけでいえばそうだ。

 しかし、左右の足の長さが違うせいで左足だけ引きずりながらケンケンして迫ってきたり、関節が四つある腕を振り回しているやつがいたり、一つの首から頭が二つ生えている奇形が混じっていたりとバラエティに富んでいる。

 いずれの人型実体も、落ち窪んだ黒目だけの瞳を三人に向けながら、獲物を前にした獣のように舌なめずりをしていた。


「な、なんだこの敵……!?」


「端的に言えば、“リョウメンスクナ”のために犠牲になった人たちの怨霊……ですかねぇ~」


「“リョウメンスクナ”って、このステージのタイトルの?」


「詳しくはまた後ほど、今はこの包囲網を突破いたしましょう~。キョウカちゃん!!」


「アイサー!先行するので離れずについてくるっすよぉ!!」


 ステップ、反転、そして加速。

 走り出したキョウカを追って、ユージーンとアルミアも転進し、グレネードでこじ開けた道へと向かっていく。


『ヒイイイイイイイイアアアアアッ!!!!』


『アアアアアアアッ!!!』


『イキイイイイイイッ!!!』


 それを合図に異形たちも動き出した。

 歪な身体へのダメージも無視しためちゃくちゃな走り方で三人に迫り来る。


「こ、のぉ!!」


 ドドドンッ!ドドドンッ!と引き金を細かく弾きながら、ユージーンは距離の近い異形から始末していく。奇形の身体のせいでバランスは悪く、弾丸のストッピングパワーだけでも簡単に転ばせることが出来るのが幸いだった。


 しかし如何せん、数が多い。あっという間に迎撃をすり抜けた異形が距離を縮めてくる。


「ほいさ、ほいさ~!」


 ユージーンの攻撃をカバーするように、アルミアのベネリM4が火を噴いた。

 距離が縮まればそこはショットガンの間合いだ。散弾を受けた異形は、いろいろと描写に配慮された黒い肉塊を飛び散らせながら消滅していく。


「弾切れ!リロード!」


「了解です~」


 アルミアはベネリM4を四発ばらまき、こちらも弾が切れたのですぐさまサイドアームのジェリコ941に持ち替えて援護を継続させる。


 ユージーンは弾倉のリリースボタンを押しながら、手首をスナップさせて銃本体を勢いよく傾け、その勢いに乗せて弾倉を放り捨てた。

 左手には既に新しい弾倉が握られており、手間をかけることなく流れるように装填される。


『キイイイイシイイイイッ!!!』


「むっ!?」


 一匹、ジェリコの攻撃を受けながらもユージーンに突進を敢行した。

 アルミアが投げナイフに手を伸ばしている最中、先にユージーンが動いた。


「はぁああああっ!!でぇいッ!!」


 銃の先端に取り付けられた銃剣(バヨネット)を突き出し、攻撃が届く前に異形の胸を刺し貫くと、返す刃で豪快に斬り上げた。

 肉をザックリと引き裂く手応えを感じながら、ユージーンは異形の消滅を見送った。


「やりますね~!ユージーンさん」


「これでも娘にかっこいいとこ見せなきゃだからね……、いろいろ頑張ってるよ!」


 弾倉の交換を終え、また火閃を放つM16。

 その間にアルミアも素早く四発装填(クアッドロード)を決めてベネリM4の弾数を整えた。


「キョウカちゃん!そっちは大丈夫!?」


「無問題っすー!」


 逆手に刀を構えた関係で極端に短くなったリーチ。しかし、それを補うようにキョウカは素早い体捌きを駆使して群がる敵と切り結んでいた。

 円舞のように回転させた身体の遠心力を乗せ、敵陣をすり抜けるように強烈な斬撃を見舞っている。


 回避と攻撃を同時に繰り出し、手数で圧倒する様はまさにニンジャのようだ。

 小柄な体躯も相まって、異形も狙いを絞るのが難しいらしい。


「へへん、まだまだギア上げていくっすよ!」


「目を回さないよう気をつけてくださいね~」


「回転数の話じゃないっす!!」


 瓦礫を爆破して道を拓くという、嫌でも目立つ行動のせいで完全にマークされた三人だったが、それでも元気よく攻略を開始した。

 

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