『リョウメンスクナ・2』
ステージはとあるゴーストタウン。
バブル期の土地開発と共にいくつもの集合マンションや住居が立ち並んだものの、その後の不景気によってあえなく街としての機能を失った不幸な土地という設定だ。
山を削り取る形で強引に開発を進めた結果、その土地に古くからいる邪悪な者どもが目覚めたとも……、怪しい宗教団体が巨大な実験施設を建築し、そこで行われた儀式が呪いとなって街に広がったとも……真っ黒な噂が絶えない。
今回はこのゴーストタウンで異常な地震を検知し、調査に向かった先発部隊の捜索と救助が主な目的だ。連絡が途絶えてからもう十二時間になるらしい。
また可能であれば地震の原因の究明と、現在ゴーストタウン内で起きているであろう事態の収拾を任されているそうだ。
この少人数でどないせいっちゅうねんと言いたいが、我々は掃除人なので割となんとかなってしまうのもまた事実だ。
たぶん、なんやかんやで先発部隊が全滅しているところを発見して、ボスを倒しに行く流れに嫌でもなるだろう。
うん、頑張ろ。
「街一つともなると、捜索範囲は膨大ですね」
レイスが付属したマップを見ながらどうしたものかと呟いた。
「いくつか地震や老朽化で倒壊した建物もあるそうで、多くはありますが探しきれない程ではないそうですよ~?」
「ほほう、なるほど……」
「それに先発部隊が最後に連絡をしてきたポイントもわかってますからね~。まずはその地点まで向かって、そこから捜索範囲を広げていくのが妥当かと思います~」
アルミアの言うとおりだとレイスは頷いた。
しばらくの道中はアルミアチームと共に行くことになりそうだなと思っていた矢先、ぐいっと襟首を後ろに引っ張られた。
「なーに、敵の大将とくっちゃべってんだレイスッ!!さっさと行くぞ!!」
「いやでもリザ……、行く先は同じなんだし固まっていった方が安全じゃ……」
「いいか、これは勝負なんだ!!どっちが勝つかの勝負!!んな甘いこと言ってると出し抜かれんぞ!!あたしは何としてでも勝たなきゃいけねぇんだ、お前も気合入れろ!!」
「お、おう……」
もはやリザ自身も頭に血が回りすぎて冷静な判断ができなくなっていた。
傍から見れば、彼女がレイスに会いに行くためにレイスをこき使っているという光景である。
いつ気づくかな~とアルミアはひたすら面白いものを見る目でそれを眺めていた。
「準備はとっくに整ってるだろ!?出撃るぞ、レイス!!」
「え?いや、もうちょっと出来ればアイテム類の整理をアァ――ッ!!膝がァ――ッ!!」
膝裏を蹴られ、地面に転がされたレイスはそのままリザに服を掴まれると、ズルズルと引っ張られながらバーを後にした。
「……アルミアちゃん、いったい何がどうなってるのかなこれ?」
「先輩めっさ蹴られてたっすね!!」
不安そうに呟くユージーンと愉快そうなキョウカに、アルミアは意味深な笑みを浮かべる。
「時には戦争を起こした方がいい時代もあるってことですよ~」
「もうちょっと穏便にしてあげようよ……レイスくんの胃に穴が開くよ、あれじゃあ……」
「フフッ。なーに、戦っているうちに態度もほぐれてきますよ~。首吊り効果ってやつですね~」
「吊り橋効果ね!?心中しちゃってるからそれじゃ!!」
ユージーンの中でさらに不安が加速しつつも、仕事は仕事だ。
三人はリザたちに続いて『リョウメンスクナ』のミッションへと向かうのだった。
※※※
「なんじゃこりゃ……」
バンから降りたレイスは開口一番にそう言った。
目の前のゴーストタウンの惨状から目が離せない。
空は夕暮れよりも深い朱に染まり、もはや血の色と表現してもいい。吹きすさぶ風は生暖かく、舞い散る砂と塵はもの悲しさを感じさせる。
錆びて崩れた骸骨のような建物が街中の方々に見て取れ、ゴーストタウンというよりはRPGのラストダンジョンのような様相を呈していた。
世界の終わりという風景がどういうものかと聞かれれば、レイスはまずこの壊れた街の姿を挙げるだろう。
「……ちったぁ、骨がありそうじゃねえか」
リザも気を引き締めるように息を吐くと、バンから銃器を取り出していく。
いつものM93R〝ブレイクエッジ″を二丁と腰裏にSAA〝ソードサンダラー″だ。
これに加えてリザは新たに【クリス・ヴェクター】というサブマシンガンを一丁携えていた。
威力の高い.45ACP弾を使用しながら、低反動・高発射レートを実現したコンパクトな短機関銃だ。装弾数は三十発。拡張性も高く、ストックの交換や各種オプションパーツも容易に取り付ける事ができる。
まだ本格的に改造しきれていないが、いずれは〝ツヴァイハンダー″という名前をつけようとリザは考えていた。
「こんな最初からクライマックスな現場は初めてだな……こっわ」
レイスは今やデフォルト装備となったAK-12を両手に持っている。
アンダーバレルにはグレネードランチャーをオプションで取り付け、上部のレールには中距離用のACOGスコープが乗っている。銃口には新しいマズルブレーキを組み込んでおり、フレームも反動制御がしやすいよう改造が施してあった。
レッグホルスターのHK45の方には拡張弾倉に加えて、今回は消音機を新たに取り付けていた。
市街地であるならば、もしかしたらステルス行動の必要も出てくるかもしれないという懸念からだ。
あとは背中のリュックにツールやアイテム類をいつものごとく満載してある。
万全の構えだ。
「行くぞレイス。遅れるなよ」
「了解」
そういえば、紆余曲折した経緯こそあれ、ようやくリザとゲームがプレイできるとレイスは気が付いた。しかも、ここしばらくはなかった二人きりでの攻略だ。
(これは、頑張らないとなぁ……)
ぐっとお腹に力を込めるように気合をいれ、レイスは早足でリザに続いた。




