表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/100

『リョウメンスクナ・1』

「ぜぇぇったいに、NOだッ!!」


 バー【ARTEMIS(アルテミス)】のカウンターでリザは目を吊り上げて全力拒否の構えを見せていた。

 対するアルミアは涼しい顔でグラスをつつきながらリザを見据える。


「つーかなんで仕事以外でも会わなきゃいけないんだよ!! こっちにもプライベートってもんがあるんだ。 掃除人(スイーパー)のアレコレを持ち込むんじゃねえ!」


 例のオフ会話をさっそく切り出したアルミアに、リザはまるで病院に連れて行かれることを知った飼い猫のように噛みついていた。


 ただでさえリアルの情けない自分を隠し通したい中、レイスもとい光太郎にはバレたかもしれない不安でいっぱいなのだ。そこにトドメを刺されてはたまったものではない。

 天地がひっくり返ってもオフ会などに参加してなるものかと、リザは硬い意志を固めていた。


「あらら、そうですかー。 それは残念至極ですね~」


 頬に手を当てつつ、アルミアは笑みを崩さない。


「では、リザちゃん抜きで我々だけで楽しんできますね~。 キョウカちゃんもレイスくんに会いたがってましたし、私も彼のことは興味ありますから~」


 ピシッとリザが一瞬、凍り付いた。


「そ、そうかよ……、い、いいんじゃねえか?別に。 あたしには関係ねぇことだし……?」


「そういえばユージーンさんの娘さんも、父がいつもお世話になっているからお礼がしたいなんて話も聞きましたねぇ~。 ちょうどレイスくんと近い歳だとかなんとか~」


「は!? な、なんだその話!? そんなとこまでアイツの話って広がってんのか!?」


「遠方からになるそうですが、ジェイスくんとシェルちゃんも声をかけたんですよ~。 シェルちゃんもウキウキでしたね~、なんででしょうか~?」


「ぐ、ぬ……」


 もはやバレバレなのだが、リザは必死に感情を表に出すまいと唇を硬く引き結んだ。

 乗るな、これはアルミアの罠だと何度も頭の中で繰り返す。


「まぁ、ひとまず。 チーム『パラベラム・バレット』の代表からはお言葉のみ、ということでよろしいですか~?」


「ま、まぁな。 仕方ねえしな……」


「フフフ、ではライバルが一人減ったことですし、キョウカちゃんにも報告しなくては~。 当日は血で血を洗う奪い合いか、いっそ三人四人でお相手させて頂くか~。 うーん、楽しみですね~!」


「え、な、ちょ!? どういう意味だそれ!?」


 慌てたようにガタッと椅子から腰を浮かせたリザに、ニンマリとアルミアが口角を吊り上げる。


 触らぬ神に祟りなしと沈黙を決め込んでいたカウンターのチェシャは、その様子を見て「喰いついちまったにゃあ」と心静かに、祈りをささげた。


「さぁ~? 関係ない方は知りません~?」


「アルミアこの野郎……。 わかったよ、行くよ! 行けばいいんだろ?」


「えー、そう言われると逆に来させたくなくなりますね~」


「はぁ!?」


 不満そうな表情を浮かべてアルミアは躍起になるリザをさらに煽る。


「どのような事情があれ、あのわけもわからず困ってる様子のレイスくんを一方的に遠ざけて話もしないような腰抜けを呼ぶのは、ちょっとどうかなーと私は思ってるだけですが?」


「てんめぇ……」


 目を剥いて怒るリザを、アルミアは鼻で笑う。


「おや、怒りましたか? だったらどうします? 少なくとも、私は貴女を参加させることを良しとしたくはありませんが……。 ああ、ではこうしましょう」


 ホルスターに手をかけていたリザを横目に、アルミアはチェシャの本をカウンターに引っ張り出した。


「ミッションをどちらが早く攻略できるか勝負です。貴女が勝てば会合の参加を認めましょう、負ければ残念ですがまたの機会という事でいかがですか~?」


 ゲームの問題はゲームでカタをつけよう。

 アルミアはそう提案した。


「―――やってやろうじゃねぇか、この野郎!!!」


 秒速で罠に突っ込んでいったリザは、まんまとオフ会参加権を賭けてタイムアタック勝負をする事になった。

 この事実に彼女が気が付いたのは、ログアウトしてからのことだったという。




※※※

 



「では! アルミアチームVSリザチームでスピードクリア勝負っすよ!! チーム分けはこちら!! アルミアチームはウチことキョウカ! ユーおじさん! アルミアさん! 対するは先輩と―――」


「待て待て待て待て!!!」


 急に呼び出されたと思ったら、なんの事情の説明も無く唐突に勝負宣言をされた。

 しかもアルミアチームは三人、レイスはリザと二人チームだ。


 五人を分ければそりゃそうなるよ、とレイスはまず思った。


「人数不利がまずあるだろ!! 三対二だぞ!? しかもそっちはめちゃめちゃバランスよく近距離から遠距離まで対応できるメンツだし!!」


 せめてユージーンさんはこっちに寄越してほしい所だ。

 心の安寧という面においても非常に重要である。


「……うるせぇな、あたしで二人分だよ。 文句あるか?」


 イライラ全開のトゲのある声色でリザがそう言った。

 来た当初からもう怒髪天を突くようなオーラを纏っている彼女に、レイスは「あ、はい」と答えるしかなかった。


(アルミアさん、これは一体全体どういうことですか!? なんで俺はリザと二人でミッション攻略をする羽目に!?)


 レイスの送ったアイコンタクトでのサインを受けて、アルミアはにっこりと笑う。


(いわゆる荒療治です~、がんばっ!)


 いっそ清々しいまでに丸投げだった。

 しかも荒療治どころではない。イチかバチか、車のバッテリーを使って心臓に電気ショックをかけるとかそういう所業だ。


 普通に死ぬ可能性が高い。


「んで? 何で決着つけんだよ、さっさと始めようぜ」


 リザが鋭い目つきでアルミアを睨みつける。

 アルミアはチェシャから本を受け取ると、全員の前にドンッと開いた。




「次の我々の敵は……『リョウメンスクナ』です」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ