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『オブジェクトナンバー“0021”・14』

「よし、この辺なら広そうだな。 どうだ?キャロライン」


「はい、十分だと思います」


 包囲網を突破した後、リザ達は攻勢に打って出るためのキリングフィールドを探していた。

 いくつかの部屋を抜け、キョウカのカンが反応した大扉を押し開けると、ようやく条件に合致する広い実験場のような場所を見つけたのだった。


「じゃ、取り掛かるねリザちゃん」


「私もお手伝いします~」


 ユージーンは背中のリュックを降ろすと、中から四角い物体をいくつも取り出した。

 プラスチック爆弾の代名詞ともいえる【C‐4爆薬】だ。現実なら3キログラムもあれば車両一つ粉砕できる威力を持つ。こちらの世界でもその攻撃力は折り紙付きだ。

 手分けしたアルミアとユージーンは実験場の中央や天井に、C‐4を設置していく。


「お兄ちゃん、そっち持って」


「おう」


 ジェイスとシェルは荷物から三脚を立て、分解しておいた銃を再び組み上げていた。

 長い銃身と箱型の機関部を合体させて出来上がったのは【ブローニングM2重機関銃】だ。簡単に言えば戦車や戦闘ヘリに搭載する大口径マシンガンである。人間が手に持って撃てないことからわかる通り、並みの銃とは比べ物にならないダメージと弾幕が期待できる代物だ。


 リザはその光景を横目に見つつ、対0021用に用意したグレネードランチャーに弾を込めていた。

 リボルバーをそのまま巨大化させたような外観のそれは【MGL-140】と呼ばれている武器だ。

 一発づつ弾込めしていくグレネードランチャーと違って、シリンダーに装填された六発のグレネード弾を連続で発射できる機構を持つ。瞬間火力で言えば、ロケットランチャーを上回るパワーを発揮できるだろう。


 いずれも一瞬の内に勝負を決めるため、保管庫から厳選してきた武装の数々だ。

 パワーオブパワー、全てを焼き尽くす暴力こそ正義である。


「おっけー、終わったよリザちゃん」


「こっちも準備できたぞ」


 戻ってきた面々を見回し、リザは了解と頷いた。

 戦えるメンバーは全員で六人。キャロラインは離れた場所から想定外の事態が起きないか周囲確認を行ってもらう形になる。

 あとはオブジェクトナンバー・0021を招き寄せ、一気呵成に攻め立てるのみだ。


「キョウカ、任せたぜ?」


「うっす! 無問題(モーマンタイ)っすよ、ウチは本番に強いタイプっすから!」


 ことの要は、いつも通り囮役になるキョウカだ。

 最悪、彼女ごと敵を葬らなければならなくなる危険なポジションだが、他に任せられるような人物はいない。


 ファサッと自慢のツインテールを揺らし、キョウカは二本の刀を抜剣した。

 彼女はそのまま、円形に敷設されたC‐4爆薬の中心に立つ。

 その外周ではジェイスがM2重機関銃のハンドルを握り、シェルが相手を麻痺させるテイザー矢を弓につがえていた。アルミアは聖なるショットガンを腰だめに構え、ユージーンはC‐4の起爆装置を片手に握っている。

 全てはタイミング次第だ―――とリザは軽く息を吐いて、MGL-140のグリップをしっかりと握った。


「さぁ、出てくるっすよ―――“スマイルフェイス”!!」


 キョウカが第二のルールを破る。

 その名前を口にした者を狙って、オブジェクトナンバー・0021は現れるという特性。それを逆手に取って、このキリングフィールドのど真ん中に奴をおびき出す作戦だ。


 ゆらりとキョウカの背後の空間が揺らめいた。

 影が像を成しながら、その怪物じみた長い腕が鞭のようにしなる。

 出現とほぼ同時のあまりに速く、鋭い突き。死角から繰り出されれば、どんな掃除人(スイーパー)であってもひとたまりもない奇襲攻撃。事実、そうやってスマイルフェイスは多くの人間を屠ってきたのだろう。

 機械的でありながら学習する怪物は、命を奪う上でもっとも効率的な一撃を実行した。


「―――そこ(・・)だぁッ!!」


 しかし極限まで集中力を高めキョウカには通用しない。

 僅かな空気のブレに即座に反応した彼女は、擦り上げた刃でスマイルフェイスの一閃を受け流した。

 軋む金属音と衝撃の火花が舞い散り、キョウカとスマイルフェイスを緋色に染める。


「今っす!!」


 キョウカの声に応じるように、シェルが引き絞った弦から指を離した。

 飛翔した金属矢は物体として顕現したスマイルフェイスの背中に突き刺さる。同時に青い電撃が(やじり)から放たれ、100万ボルトの閃光がその身体を縛り付けた。キョウカは素早くバックステップの勢いに乗せて、連続宙返りを決め、一気に距離を離す。


「発破っ!」


 ユージーンが手元の起爆スイッチをカチカチと二度入れると、円形に敷かれたC-4爆薬が一斉に炸裂した。

 火炎と瓦礫飛び散るように広がり、破壊オブジェクト判定だった天井が落ちてくる。もちろん、巨大な鉄板とコンクリートが降り注ぐ先はスマイルフェイスの真上だ。


『いぎぃいいいいいい!!』


 ここに来て初めてスマイルフェイスは叫び声を上げた。

 それは苦悶とも怒号とも取れるような、空気が震える咆哮だった。


「撃てッ! 撃ちまくれ!!」


 瓦礫に潰されて動きを阻害されたスマイルフェイスを見て、リザが号令をかける。

 ジェイスがM2重機関銃の引き金を引き、狙撃銃に使用する大口径弾を秒間100発にも迫る勢いでぶっ放した。

 鉄の弾雨にアルミアの聖なるショットガンも加わる。彼女はリザの【火葬弾】に効果が近い【ドラゴンブレス弾】を弾倉に装填していた。コッキング毎に吹きすさぶ花火のような炎の嵐が、スマイルフェイスの肉体を焼き尽くしにかかった。


「くらいやがれ!」


 火力過多と呆れられても知ったことかと、リザはMGL‐140のトリガーを引き続けた。

 40ミリグレネード弾がいくつも山なりに飛翔し、弾幕と火炎と砂塵がたちこめる地獄にさらなる爆炎をもたらした。


 戦車数一台を余裕で破壊しうる攻撃を集中させ、スマイルフェイスにめったうちにするチーム・パラバレムバレット+α。

 普通にやりあえば危険度が高いというならば、普通をかなぐり捨てて一点突破を狙うのみ。実に素直だが効果的な作戦が功を奏し、全員の弾が切れるころには叫び声一つも上がらなくなった。


「………」


「………」


 全員が視線を通わせ、朦々と揺蕩う砂埃の向こう側へ銃口を油断なく構えなおす。

 ―――動きはない。スマイルフェイスの大きなシルエットも、瓦礫の向こうには確認できない。

 数秒の沈黙がとても長く感じた。だがそれだけ経っても、敵が行動を起こす気配はなかった。


 ふっとリザも少し力が抜けた瞬間。


「………やったか(・・・・)


 この場面でもっとも言ってはいけないセリフをジェイスが呟いた。

 

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