『オブジェクトナンバー“0021”・13』
―――それぞれが黒光りする無骨な銃を手に取り、並べられた弾倉を叩き入れてボルトを引く。
―――ジャキンッ!!と金属音を立ててくわえ込まれた弾丸が薬室に送られ、発射態勢を整える。
―――ゴトリと机に置かれた木箱から手榴弾を一つ二つ掴み、腰や胸の辺りに括りつけていく。
―――アイテムを満載したポーチやリュックを身に着け、しっかりとバンドで固定する。
―――サブウェポンの拳銃のスライドを引いてホルスターに収め、ナイフも鞘へと差し込む。
―――最後に高火力の大型銃器をゆっくりと肩に担ぎあげ。
「デエエエエエエエエエエエエエエエエンッ!!!!!!」
「うるせぇッ!!」
ドヤ顔キョウカの興奮と共に放たれた叫びに、ジェイスが抗議の声を上げた。
とはいうものの、確かに生まれ変わったと表現してもいいくらい全員の武装は完全なものになった。
アルミアは没収されていた愛用の聖なるショットガンと聖なるグレネードランチャーを肩に下げ、投げナイフと焼夷手榴弾を腰のポーチや太ももに巻いたベルトに収納している。
ついでに髪も後ろで括り、動きやすいポニーテールに変えた。このゲーム、変なところで融通が利くのである。
キョウカは腰裏に交差させるように日本刀を二本差し、さらに倉庫で見つけた山刀を背中に二本追加していた。加えて超至近距離での戦闘を想定したコンバットナイフを身体のあちこちに仕込み、さながら歩く全身刃物ウーマンと化していた。
ユージーンは自前の武器は狭い場所には向かないと判断し、別の銃を手にしていた。
名称は【ステアーAUG】。オーストリアで開発された機関部後方配置式アサルトライフルだ。プラスチック部品をメインとしたコンパクトなデザインで、標準的な5.56mmNATO弾を使用する。取り回しと命中精度に優れ、機関部が後方―――つまり肩の前にあるおかげで反動を効果的に抑制する効果も持っている。総じて集弾性と火力を両立させた隙が無い構成だ。
上部には標準装備のオプティカルスコープが搭載されており、かなりユージーン向きの武装と言える。
ガチガチのヘルメット&ボディアーマーの格好も相まって、特殊部隊のエースのように見える。
リザはいつものブレイクエッジとソードサンダラーをホルスターに構えていた。
ようやくメイン武器が帰ってきたと本人もかなりご満悦である。
そして他に使えるものはないかと倉庫を探った結果、面白い効果を持つ弾をいくつも発見したらしく、それらを嬉々とした表情で弾倉ポーチにセットしていた。
「おー、んでそれがジェイスとシェルの完全体か」
ジェイスの装備はガントレットとコンバットブーツをはめ、何かと現代的な格好に変わったにも関わらず持っている銃はえらく古めかしかった。
リザの知識が間違っていなければこれは【ブローニングM1918自動小銃】という名前で、略称を【BAR】という。1920年代から第二次大戦後まで使用されたアメリカの歴史ある銃だ。
前期モデルは突撃銃として、後期モデルは分隊支援火器として改修されたりと様々な側面を持っており、ゲームによってもアサルトライフルだったり、ライトマシンガンだったり分類が分かれている事が多い。
ジェイスが持っているのは塗装でわかりにくいが、恐らく最初期のモデルだ。
それに通常装備ではありえない、刃渡りが長く分厚いブレードが銃身下に取り付けてあった。
狙撃ライフルのように肩当てとグリップが一体化した握りを利用し、まるで片手剣のように振り回して使うつもりなのだろう。
武器が壊れない仕様をいいことにやりたい放題しているようだ。
「めっちゃガンでブレードって感じっすね!!」
「フッ、威力はお墨付きだぜ?」
ジェイスは自慢げである。
「まー、お兄ちゃんはイロモノ装備スキーだからねぇ。 BARをガンブレードに改造しようなんて人、まずいないよ」
「お前に言われたくねぇよ!!」
そうツッコミが入った通り、シェルは防御の薄そうな布の軽装に……黒塗りの“弓”を背負っていた。
しかしこれも立派な現代武器である。名称は【コンパウンドボウ】。
弓の板の両端に滑車がついている玩具のような形状だが、発射される一矢はボディアーマーすら貫通する威力を持つ。それでいて、弦はそれなりの筋力があれば簡単に引けてしまうという物理学マジックをふんだんに用いた設計である。
ゲーム内では矢を出してつがえる動作に慣れが必要だが、使いこなせれば速射や狙撃までこなせる万能武器にもなりうるポテンシャルを秘めている。矢の種類も豊富で、シェルは主に爆発する矢を使用しているようだった。腰の矢筒に赤色の警告色を示した矢が何本か入っている。
ちなみに、とある映画をリスペクトしているのか、シェルは頭にハチマキをするようにバンダナを巻いていた。
この兄妹、どちらも大概であった。
「準備は整ったな?」
リザの一言で全員顔を引き締める。
依然として0021・A実体の群れは扉を攻撃し続けており、そろそろ打ち破られそうな気配を見せている。倉庫の出入り口はここ一つだけなので、強行突破以外の方法はない。
「作戦はシンプルだ。 突破して、罠を張って、呼び出して―――殺す。 以上だ」
この上なく分かりやすい
ただし、キャロラインも賛同した作戦だ。これだけ武装が整っているならば、0021を倒す事は不可能では無いという判断なのだろう。
それだけ掃除人という戦士を信頼してくれたとも取れる。
「シェル、狼煙をあげろ!!」
「りょーかい、リザ!」
先頭に立つリザの横で、楽しそうに頷いたシェルがギリリと矢を引き絞る。
パシュン!!と空気を切り裂いて飛翔したプラスチックの矢は、赤く明滅する弾頭を抱えながらカンッ!と扉に突き刺さった。
そして一秒のカウントが入ると同時に、大気を殴りつけるような火炎を吹き上げて炸裂した。
キイ―――ン、と頭の奥から響く耳鳴りを感じながら状況を確認する。
爆発によって生じた衝撃波に乗って飛んで行った鉄扉は、すぐ近くにいた0021・A実体達をことごとくなぎ倒していた。
スペースが開けたと判断したリザはすぐさま片手を上げ、ピッ!と前方を差し示す。
「突撃ぃ―――ッ!!」
いくつものマズルフラッシュと共に戦端が開かれた。
「キョウカ! 手伝え!!」
「先鋒っすね! 了解っす!!」
銃弾の挨拶が終わると同時に、二つの影が列から飛び出した。
二本の刀を携えたキョウカと、床にブレードを擦らせて火花を散らしながら疾走するジェイスだ。
「オオオオラアッ!!」
ジェイスは空中にグルン!と回転しながら飛び上がると、その勢いに乗せたBARを思いっきり叩きつけた。0021・A実体の一人がブレードに粉砕されて消し飛ぶも、当のBARは流石の無傷である。
ジェイスはそのまま片手のBARで周囲の敵を斬り付けて打ち倒し、追加で現れた連中にはバラ撒くように弾丸を見舞った。
「援護するよお兄ちゃん!」
「おじさんも……!」
後衛組の二人から精密射撃が飛翔する。
ユージーンのAUGからは、指で連射を切りながら放たれる人力のバースト射撃が。
シェルのコンパウンドボウからは、頭を貫く強力な矢が鬼の速度で飛んでいく。
隊列の護衛にはチーム最強格のアルミアとリザが担当し、キャロラインを含む全員に敵を近づけさせまいと大暴れしていた。
「やっぱブレイクエッジがあると違うな!!」
「はい! やはり自分の愛銃だとキレッキレに撃てますね~!!」
もはや奇襲すら物ともしないチーム『パラベラム・バレット』は、早々に0021・A実体の包囲を食い破り、駆け抜けていった。
しばらく不定期になります。
よろしくお願いいたします。




