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『オブジェクトナンバー“0021”・3』

「突入!!」


「ホアチョー!」


 まず殴り合いも行ける俺とキョウカが突っ込まされる。

 廊下を渡った先の部屋はオフィスになっていた。パソコンが何台もデスクに並び、バラまかれた書類やひっくり返されたコーヒーカップが当初の混乱具合を物語っている。

 血や死体は見当たらなかったので、アナウンスを聞いて急いで逃げだしたのだろう。


「……キョウカはわかるけど、俺を出すのは違うくない? 対人はまだしも、三メートル級の怪物と殴り合いとか無理なんだけど」


「大丈夫っす! 先輩はクマと殴り合える男っすから! ウチはよく知ってるっすよ!」


 この野郎、余計なことを。


「中はクリアだ。 何かないか探そう」


「手早くいこうぜ、おっさんはそっちを頼む。 アルミアは奥だ」


 リザは早速、引き出しやロッカーを確認しながら指示を出す。

 頷いた二人も同じように探索に取り掛かった。


 レイスは一度、全体を見回す様に部屋を眺めた。

 何か今の場所やこの施設“アルファ”のヒントになるような物はないかと期待してのものだが、パッと目につくアイテムはない。 パソコンの画面はいずれも暗転しているし、書類は手に取っても英語もどきが書いてあるだけで読めなかった。


「ふーむ……」


「あ、先輩! 先輩! ちょっとこれ見てくれっす!」


「ん? なんだキョウカ?」


 キョウカに呼ばれた場所に付いていくと、デパートの壁とかに掛かっている階層の案内図があった。


 全部で十五階層、【レベル.1】から【レベル.5】まで三階層ごとに区分けされている。

 そして図の形を見るに、どうやら“アルファ”の施設は地下に作られているらしく、地上に脱出するには【レベル.5】の一階を目指さなくてはならないようだ。


「これ、ウチらはどこにいるんすかね?」


「たぶんここだ、【レベル.1】の二階層。 十四階のフロア」


「うへぇ、下も下っすねぇ」


 その通りだ、そしてこの三階層ごとのレベル分けも一筋縄では行かない予感がひしひしと伝わってくる。

 怪物を閉じ込めておく施設なのだ、セキュリティは万全だろうな。今回は逃げられてたけど。


「あ! みんな! 拳銃があったよ!」


 手前のロッカーを探っていたユージーンから喜色のある呼び掛けが聞こえた。

 急いでそちらに向かうとユージーンが机に三丁の銃を並べていた。


 まず一丁目はヘッケラー&コッホ社製の【VP70】だ。

 ポリマーフレームを始めとする先進的なアイデアを採用した意欲作だったが、実用面で問題が多くあまり成果が得られなかった小型自動拳銃だ。


 二丁目はベルギーのFN社製の【ブローニング・ハイパワー】。

 十発以上の装弾数を実現する“複列弾倉(ダブルカラムマガジン)”を実用拳銃に世界で初めて採用したモデルだ。部品数が少なく合理的で堅実な設計が好まれ、50か国以上の軍・警察機構で使用されていた過去がある。


 最後はアメリカのコルト社製のリボルバーマグナム【コルト・パイソン】だ。

 以前に『エレベーターで異界に行く方法』のマンションで会ったハリケンが持っていたコルト・アナコンダの仲間と言えばわかりやすいだろう。.357マグナム弾を使用する強力な銃だ。

 こちらは特に装飾もないシンプルな黒一色の4インチモデルになっていた。


「またこれ、使いどころに困りそうなラインナップですね」


「う、うん。 弾もそれぞれ予備の弾倉が一個あるだけで、安心できるほどじゃないね……」


 さて、こちらは五人。誰がアタッカーになるかという話だが……。


「では、パイソンはおじさまですね~。 精密射撃が出来ますから」


 パイソンを片手にクルクルと回していたアルミアは、自分が使うとは言わずにそのまま手の中で返して、グリップ側をユージーンに差し出した。


「え、いいの!? こういうデカイ銃はアルミアちゃんが使うものだと……」


「私に対するイメージはよくわかりましたけど~、状況が状況ですので~」


「う、いや……けしてそんなことは……。 わ、わかったよ。 リボルバーはじゃあ、おじさんが使うね?」


 受け取ったユージーンさんは早速、握った具合や照準を確かめている。

 服はツナギに変えられたが、何故かユージーンさんのグラサンはそのまんまなんだよな。

 うーむ、やはりグラサンおじさまにリボルバーは非常に厳つく似合う。


「まぁ、次はリザだな。 どっち使う?」


「そうだな、じゃあこっちの小さい方にしとくぜ」


 VP70を受け取り、流れる動作で薬室と弾倉を確認する。

 洗練されていてとても美しい。リザは「いい感じだ」と笑って、安全装置を掛けた。


「で、キョウカは外して俺かアルミアさんですね」


「そうですね~、私はどちらでも~?」


 レイスは考える。武器は無いよりはあった方が絶対いい。

 とはいえ、誰が持つべきかは彼の中で他に答えは無かった。


「もちろんアルミアさんです。 上手く使ってください」


 レイスはブローニングをアルミアへと渡す。


「じゃあ、レイスくんにはこれを差し上げます~。 そこの用具庫に入ってました~」


 お返しに少し長めのモップを貰った。

 モップ、モップかぁ……。


「て、定番ですね……」


「でしょ~? やはり前衛がいなければ撃つのも苦労しますから~」


 これ全力で囮にしていくつもりだなこの人。


「あ、先輩! 前衛ならウチがやるっすよ! そのモップ一本で十分っす!!」


 元気よくキョウカが横からモップを奪い去っていった。

 確かに破壊可能なアイテムではないみたいだし、武器にはなりそうだが……。


「よっ! ほっ! ハイィッヤ! うん、オッケっす」


 ブンッと空気を切る音を立てて残心を決める。

 三国志の英傑かと思うくらい、キョウカは見事にモップを長柄武器のように振り回して見せた。

 流石はチーム・パラベラムバレットだ。何も常識が通用しない。


 めぼしい物はそれくらいで、あとは何もなかった。

 しかしこの段階で銃三丁にモップ方天戟が手に入ったのは僥倖と言ってもいい。


 問題はここからだ。

 部屋を調べた限り、先に進める扉がいくつか確認できた。

 全体マップがいまだに把握できないので、カンに頼った探索を強いられる。

 ただし、ここでは既に数十名のプレイヤーが同時に探索を始めているので、必要な情報やキーアイテムを先んじて取られる可能性も高い。

 これで快く協力して情報を開示してくれるプレイヤーならばいいが、意図的に隠してくる奴らも一定数はいるだろう。

 ゆえに、こちらも切れる手札として重要な手掛かりが武器以上に必要だ。


 時間との勝負になる。

 なるほど、ジェイスの言っていた事前調査は確かに強力なアドバンテージになるな。

 探さなくてはいけない物が、向こうは最初からわかってるんだから。


「順当に端から行くか……、リザの直感に任せるか……」


 レイスがそう提案しようとすると―――。




 きゃあああああああッ!!!



 

「悲鳴……? どこから」


「こっちだ! ついてこい!!」


「え、あちょま! リザッ!?」


 弾かれたようにリザが扉を蹴り開け、走り出した。

 思っていたのとは違う展開になったが、進むべき指針は決まった。

 そう、あえて危険の真っただ中に飛び込んでいく方向性だ。

 まったく、いつも通りに大変すぎる……。


「キョウカはリザに続け! ユージーンさんは二人の援護! アルミアさんは後方警戒を!」


「了解!」


「はいです~」


 スイッチが入ったチーム・パラベラムバレットは、レイスの指示に従い迅速に行動を開始した。


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