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異世界(から来た)食堂

作者: 橘 六六六



 俺、久留米雷太(ぐるめらいた)は小説家に成りたく都会に出て来て。今はライターとして活動している。そして今日からグルメライターの仕事が入り。抜き打ちでこの東京の隠れたグルメを紹介したく探し歩いているのだけれど。何処も他の雑誌で取り扱われていたお店ばかりでなかなか店が決まらなかった。


 しかし、30分程歩いて探して居ると。ビルとビルの間に見た事の無い飲食店が出来ていた。


 店の外観は木造建築の古びた感じではあるが大きい建物で、門構えも立派な物であり。俺は門をくぐり扉を開けて中に入ると、中は大きなテーブルと椅子が列び。カウンター席も含めて40名は座れる程の物であった。


 俺はカウンター席へと座ると、奥の厨房から身の丈3メートル程の筋肉隆々のトカゲに似た男が腰にエプロンを巻いて現れぶっきらぼうに挨拶をした。


「おう!らっしゃい。デスズズズガンへようこそ。俺は店主のズズズガンだ。注文はどうする?」


とハロウィンでリザードマンの格好なんてしている男が。メニューも無いままに、尋ねてくるので。私は店主のズズズガンに変な名前だと思いつつも


「メニューを貰えますか。」


と訊ねると。ズズズガンはメニューを俺の前にポンっと投げた。俺は(こんな態度の店が美味い筈も無い。)そう思い立ち上がろうとすると、ドアが壊れんばかりに激しく開けられ


「店長は居るか!誰に断ってここで商売しとんのじゃい!ここは傳刃(でんぱ)組のシマやぞ!」


と明らかに反社の人達が四人入って来て。俺は店を出るタイミングを見失った。


 店長のズズズガンは厨房から身の丈程の槍を持って現れ。


「この店が戦闘民族デスガドガン族の戦士料理を振る舞う店である事を教えてやろう!」


そう言うと。ズズズガンは俺を見ると微笑み。微笑むがトカゲの顔で微笑むので、なかなか不気味なものである。そんなズズズガンに反社の四人組は


「何を気色の悪いコスプレしとんのじゃい!」


そう言うと、懐から短刀を取り出してズズズガンに襲い掛かった。咄嗟の事で俺は震えながら見ているとズズズガンは槍を振るい。一瞬にして反社の人達が失神して床に倒れた。


(た、助かった。)


と心の中で思ったが。ズズズガンは俺の方を見て


「注文は決まったか?」


と言い出した。全然助かって無かった。俺は諦めて


「え、えーっと。ドリンクは何が有りますかね?」


そう訊ねると。ズズズガンはバン!とカウンターを叩き、俺はビクン!となってズズズガンは


「ドングリなんか置いてねえぞ!」


と怒り出したので。俺は慌てて


「いや!ドングリじゃなくてドリンクです!飲み物!」


そう言うとズズズガンは優しく


「そうか。脅かして悪かったな。それじゃお前さんに特別にデスガドガン族伝統の戦前の飲み物である『戦士の咆哮』をサービスしてやろう。」


そう言うと。奥から緑と茶色の混ざった。ドロドロした液体の入ったグラスを持ってきた。そして俺は恐る恐る口に入れると


(クソ不味い。汗を大量に集めて、それを発酵させて凝縮させた様に臭くて泥に唐辛子を入れた様な味がする。)


俺は思わず。吐き出すとズズズガンは俺を睨み


「戦士を侮辱しているのか?」


と凄むので俺は慌てて飲み干して


「ま、まあ刺激は強いが戦士のあのアレだな...つ、強くなった気がします...」




と無理に言葉を出すと。店主のズズズガンは嬉しそうに



「どうだい戦士の咆哮は?コレはデスガドガン族の戦士が戦争を前に身を清めるドガス湖の水に、デスガドガン族の戦士が戦争の前に食べるガーリックの実を入れて1ヶ月置いたジュースだ。戦争前の二千人のデスガドガン族がドガス湖にギュウギュウ詰めで水を浴びる姿は絶景だぞ。」


(あの臭いはデスガドガン族とやらの汗の臭いか...)


俺は話しを聞いて気分がワルくなったが、下手な事を言えば殺される。文句なら後で記事に書こう。と気持ちを落ち着けた。するとズズズガンは機嫌良く


「嬉しいな!他の料理も気合い入れて作るぜ!」




と太く長い尻尾をブンブン振りながら、厨房へと戻り。大きな皿に何かが溶けた様な茶色い塊を乗せて私達の前に出して来た。俺はそれの臭いを嗅いだが、明らかに腐った何かの臭いがする。何かの動物の死体が腐った臭いだヤバい。


 俺は不安になりズズズガンへ、この料理が何かを尋ねると。ズズズガンは腕組みをして


「これは、ギアニ豚の中にマカの実を大量に詰めて土の中に埋めて1ヶ月寝かせた物だ。」


そう言うので、俺は心の中で


(だから何で1ヶ月寝かせるんだ!それは腐ってんだよ!)


と突っ込みを入れた。明らかに腐った肉を俺は恐る恐る口に入れたが。酸っぱさを通り越した苦味が口の中に腐臭と共に広がり、吐き出しそうになったが耐えて飲み込んだ。


 するとズズズガンは頼んでも居ないのに次の料理を持ってくる。俺は瀕死になって食べているのにズズズガンは全く気付かずに


「どうだ?うちの料理は元気が出るだろ!」


と上機嫌に訊ねてくる。俺はもう返事も出来ずに口を押さえるので精一杯だ。


 そしてそんな俺に構いもせずに次に出されたのは毒イモムシの唐揚げだった。そして固まって居ると俺はズズズガンに無理矢理に口を開けられ毒イモムシの唐揚げを押し込まれて。戦士の咆哮で無理矢理飲み込まされた。


 俺は意識が朦朧となりながら必死で持ちこたえて居ると。ズズズガンは次なる皿を持って


「これはデスガドガン族のデザートで、コカマカケシの実をギアニ牛の乳に混ぜて使ったアイスクリームだ。」


と説明して出した。見た目も普通のアイスクリームで味も冷たく濃厚な甘さで美味しく食べる事が出来た。するとズズズガンはご機嫌で


「お前の事は気に入ったぜ。困った事が有ったら何でも言いな。デスガドガン族が力になるぜ。そういやさっきのアイスだが興奮作用が有って、デスガドガン族は夜の営みの時に食べるんだ。元気が出るぜ。」


そう言われた所で。俺の意識は途絶えてしまった。



◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️◼️◻️



そして次の日に目を冷ますと俺はズズズガンが居ない事を確認し。店から逃げようとしたが扉が開かない。俺はドアに体当たりしてやっとの思いでドアを開けて外に出る事が出来た。


 俺は眩しい陽射しを浴びて清々しい気持ちで周りを見ると。そこには沢山のデスガドガン族が尻尾をビッタンビッタンさせていた。そして俺はまた意識を失った。





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