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下野小山戦国異聞 関東八屋形の復興  作者: Rosen
関東享禄の内乱編
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古河城攻め

 下総国 古河城 足利高実


 古河城内は混乱に陥っていた。兵糧の横流しと買収が判明し、備蓄していた兵糧のほとんどが外部に流出してしまったのだ。残っているのはわずかにひと月あるかどうか程度でとてもじゃないが籠城するには心許なかった。


 しかも兵糧を担当していた者が姿を消しており、真相は闇のままでさらに目撃証言によると幾人も大金欲しさに兵糧を売り流していたことが判明したのだ。


 兵糧の流出と担当者の失踪に衝撃を受けた城主の父は指揮を放棄して部屋の奥に閉じ籠ってしまった。しかし代役を指名しなかったことから指揮系統が混乱。


 ひとまず私が指揮を執ることになったものの、戦の経験のない若い私に軍の指揮なんてできるわけかわない。気づけば兄率いる寄せ手側があっという間に古河城を包囲してしまい、守り手側は完全に後手を踏まされていた。


「ああ、もうどうすればよいのだ!?」


「お、落ち着いてくだされ」


「これが落ち着けるわけがあるか。もう包囲されてしまったのだぞ。どうにかせよ!」


 古河城が混沌になっている状況の折に晴氏側から開戦前の使者が古河城に現れる。使者は結城政朝だった。私は動揺していることを悟られないように表情を殺しながら対面に臨むが、兄側の要求はこちらを逆撫でするようなものだった。



「父上の隠居に私の出家だと!?こちらを愚弄するのも大概せよ!そんな条件呑めるわけなかろう!」


「ならば戦あるのみでございます」


「貴様ッ、父上を裏切って憎っくき愚兄に従いよって。公方に忠誠を誓う結城の家名が泣いておるぞ」



 必死に抗議するが、政朝は一切付き合うことなく、交渉が破談したことを理解して颯爽と古河城を後にする。



「結城め、私のことを憐れんでいたぞ。決して許せぬ!」


「そんなことございませんぞ。落ち着いてくだされ」



 そして交渉破談から半刻も過ぎないうちに敵が動き出した。川岸にある川手門以外の城門に兵を集結させて、いつでも攻められるように陣を構える。



「なに、兄上が動いただと!?急ぎ、支度せよ」


「その、人員は誰を向かわせますか?」


「誰でもいいからさっさと向かえ!」



 バタバタしながらもなんとか兵を配置させたが、誰がどこに移動したのか正確に把握できている者は少なかった。


 大手門には宇都宮と簗田が、はね橋門には小山と結城の軍勢が法螺貝の音と共に押し寄せる。守り手は物見櫓や柵の向こうから寄せ手を射抜かんと矢を放つが、混乱の影響で兵の数がまばらの状態であったために散発で終わってしまい、矢は何人か射抜いたがほとんどは竹束で防がれてしまう。



「どうしたことだ。敵が浮き足立っているように見えるな。これは好機ぞ。皆の者、押し進め!」



 敵の手応えがないことに気づいた寄せ手は好機とばかりに一気に兵を繰り出した。大手門を守る兵は速度を早めた寄せ手に苦しみながらもなんとか応戦する。やがて寄せ手は門の目の前まで接近することに成功したが、大手門は水堀で守られており攻めにくく守りやすい造りになっている。兵の中には勇敢にも水堀に飛び込んで泳いで渡ろうとする猛者もいたが、その者らは渡る途中で一人残らず矢の餌食にされてしまった。また水掘の底には逆茂木や竹槍が埋め込まれており泳いで渡るのは至難の業だった。


 唯一の道は大手門につながる土橋だが幅はそこまで広くないため大軍では一気に押し切ることができない。守り手も土橋に人数を割くのでそう簡単に突破はできなかった。



「良いぞ!このまま押し返せ!」



 家臣からの報告に私は上機嫌で命令を下す。なんだかんだで私には才能があったかもしれない。


 だが、それも一蹴される。突然大手の方から悲鳴が上がると敵が押し寄せてきたではないか。



「扉が開いたぞ!今が好機じゃ。攻めよ攻めよ!」



 突然内側から扉を開けられたのだ。



「何故だ!何故門が勝手に開いたのだ!?」


「敵の内応です!もはや戦線は持ちませぬ!」



 そんな馬鹿な。このままでは負けてしまう。ど、どうすればよいのだ。



「ち、父にお伺いを立てるぞ」



 私はそう言って本丸の奥へ逃げるように駆けていく。そんな様子を冷たい目で見る家臣の姿に私は気づくことはなかった。


 寄せ手が攻め始めてからおよそ一刻。古河城の二つの門は破られ、敵は古河城の三の丸へ殺到した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦国時代は畿内が中心の作品が多いですが、関東が中心の作品は読んだ事がなかったので 一気に楽しく読ませていただきました。東北に負けず劣らずのカオスがありそうでこれからも更新楽しみしています。…
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