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周囲の近況と新たな課題

食中毒でダウンしており更新が遅れました。申し訳ございません。

 下野国 祇園城 小山晴長


 宇都宮城を攻める準備を進めている最中、少々気になる情報が祇園城にもたらされた。それはこの間小山と同盟を結んだばかりである益子家の当主益子勝宗が病を患って家督を嫡男の勝高に譲り隠居するというものだ。


 元々勝宗は高齢であり、いつ家督を嫡男に譲ってもおかしくなかったが病が原因となると話は変わってくる。今年に祝言を控えていることを考えると不測の事態に備えて時期を少し早める方がいいかもしれない。あとで益子に問い合わせるべきだな。


 後継の勝高という人物については詳しくは知らないが、今度小山家入りする三男三郎太勝定とは不仲であることは確からしい。隠居した勝宗が勝定を可愛がっていたことも不仲に拍車をかけたという。どちらかというと勝高が一方的に勝定を嫌っているようで、勝定が兄を毛嫌いしているという話は出てこない。


 その勝高の評判なのだが良くも悪くも凡人で器量も戦の腕も父勝宗に遠く及ばないそうだ。二十代後半らしいので経験はそれなりに積んでいるようだが下野の有力勢力となった益子家を率いるには些か不安が残る。勝宗存命中は小山との同盟は堅持されるかもしれないが、兄弟の不仲が今後の同盟にどう影響するか今のところ読めない。勝高が軽挙を犯すほど愚かではないと思いたいが。


 東から不穏な情報が届いたが、一方で西からはめでたい報せがもたらされた。それは佐野小太郎豊綱に嫁いだ妹のさちからの手紙だった。



「おお、さちが懐妊したのか」


「まことでございますか?それはおめでたい」



 手紙を読んだ俺が思わず声を上げると、それを聞いた家臣らは驚き、喜んだ。


 手紙によると懐妊はついこの間明らかになったらしい。嫁いだ当初は夫の小太郎豊綱との歳の差や環境の違いもあって互いに遠慮しがちだったようだが、さちから積極的に声をかけたことで徐々に仲が深まり穏やかな関係を築けているという。


 豊綱は口下手で武人気質な人物だが年下のさちのことを大切に扱ってくれているらしい。年上の義弟になる豊綱とはあまり話す機会はなかったのでこういったところから彼の人となりを知ることができたのは良かった。


 出産時期はおそらく来年以降になるだろうが富士に続いて妹の懐妊を知ってなんだか感慨深い。佐野家からすれば男児を産んでほしいのだろうが、俺からすればさちと子供が無事にいてくれれば嬉しいものはない。もし無事に子供が生まれたのなら俺にとって初めての甥または姪になるのか。


 富士も今年出産予定でだいぶ腹も大きくなっていた。今は侍女やいぬらの介護によって不自由なく暮らせている。母上からも出産のときの助言もいただいているという。そうか、富士も無事に出産できれば今年に俺の初めての子供が生まれるのか。そして母上にとって初めての孫、父上に見せてやれなかった孫になるのか。せめて母上には父上の分まで孫を抱かせてやりたいものだ。


 俺の傅役だった大膳大夫もかなり年をとってしまった。本人は生涯現役と唱えているがすでに家督は弦九郎に譲っており、近年は体力の問題もあって戦場に帯同することも少なくなっていた。生まれたときから祖父がいない俺にとって祖父代わりだった大膳大夫が元気なうちに子供を見せてやりたい。


 さちの報告にほっこりしていたが、南の方からは少々心配な情報が耳に入ってきた。結城で政勝義兄上の子供である若王丸が病に倒れたとのこと。これは結城方面に張っていた加藤一族の者からの情報だ。


 若王丸は数年前に生まれた結城家の嫡男だが小さい頃から病弱だったらしく度々病に倒れていた。今回はそこそこ大きな病だったようで義兄上だけでなく祖父にあたる政朝義父上も神仏に病気治癒の祈願をしていると聞く。結城家は以前多賀谷と小田が手引きした内乱で当時の嫡男と三男を失っており、男子は義兄上しかおらず義兄上の子供は若王丸と娘のふたりのみ。義兄上と義父上も唯一の後継ぎを失いたくないはずだ。


 この時代はまだ医術が未発達の時代だ。関東には医聖と称される田代三喜がいるが今彼は足利学校で指導をしていると聞く。今すぐ要請したところで老齢の三喜が結城に赴くには時間がかかる。小山と付き合いのある常陸の芹沢もどちらかといえば戦傷を専門としており病気の治療は得意としていない。小山としてできることは少なかった。


 小山も石鹸の生産で衛生概念は改善したがそれ以外では他の領と大して違いがない。宇都宮攻めが落ち着けば本格的に医療について力を入れた方が良いかもしれない。課題は多いができることから始めなければ疫病などから領民を守ることができない。まずは足利学校に小山の人間を送り込むことから始めるべきか。

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― 新着の感想 ―
[一言] ご自愛くださいませ もうそろそろ、北条の足跡が。。。
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