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一太刀愛せ その瞳に映る世界  作者: 谷花いづる
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プロローグ

 初めまして&こんにちは!

 何番煎じか分かりませが、乙女ゲームものを書いてみたくて始めました。しかし、作者は余りゲーム自体をした事がないです。

 なので、乙女ゲーム風のものとして読んでもらえれば幸いです。

 拙作ですが、少しでも楽しんでもらえたならば嬉しいです。

 愛されたい、けれどもそれ以上に愛したい。

 相手の存在に溺れたい、でももっと私の存在に溺れてほしい。

 もう、余所見なんて、出来ないくらいに―――――。



 私の心は、たった一人へ向けた独占欲で張り裂けそうだった。



*****



 三日月が闇空に取り残され、ぽつねんと淋しそうに浮かぶ夜。

 私は家のバルコニーへ続く出入口に立ち尽くしたまま、ここに来てしまったことを後悔していた。

 目の前には深く抱き締め合う、親友と義兄。お互い一ミリも離れたくないという気持ちが、ありありと分かる愛に満ちた幸福の形がそこにはあった。



 目の前の光景を、見てはいけない。

 そう、頭では理解できていても酷い混乱と動揺で焦ったのか、目を逸らすことが出来なかった。

 心は傷付き、ゴボゴボとどす黒い負の感情に埋め尽くされ、今にも吐き出してしまいそう。次々に、己の中に隠れ潜んでいた醜い部分が露呈していく。

 それらを全部引っくるめてぐしゃぐしゃに丸め、察しの良い親友は気づいているだろうに、平然と義兄に抱きついているその顔へ投げつけて爆発させてしまいたい。

 しかし、こんな時でさえそんな勢い任せなことも出来ない意気地無しな私は、その衝動を戦慄く唇に血が滲むほど噛み締めることで抑えつけた。



 そのうち視界が歪み、二人の姿がぼやけてはっきりしなくなる。一筋の雫が瞳からツーッと頬を伝い、バルコニーの板の間へ流れ落ちてポタッと音をたてて吸い込まれていった。

 まだ寒い、三月の冬の匂いが混じるひんやり吹く風が。頬を伝う雫を、拭うように撫で去っていく。



 何時も、そう。

 気がついた時には、何もかもが手遅れ。

 こんな事になるのなら、ちゃんと伝えていれば良かった。



 「好きです」って。



 心臓が可笑しくなりそうなくらい、想っているのに。

 義兄妹という関係を壊したくなくて、怖くて、言えなかった。

 わかってる。私が伝えても伝えなくても、今の状況が変わることはなかったと。彼が私に振り向いてくれる可能性はゼロで、良いところ生意気な義妹が少しだけ素直になって、家族愛を示してくれたと思われる程度のことだろう。

 そこに、恋愛感情などない。

 それでも、彼と愛し愛される幻想を夢見ては、残酷な現実を突きつけられる毎日。





 噛み締め過ぎた口内は、血の味独特の鉄臭さが充満している。それは、じわじわ競り上がる私の中の彼女に対する、どす黒い激情と酷似していた。吐き気がする。

 悲劇のヒロインだなんて、思ってない。

 だけど……彼女の気持ちに気づけず、浮かれて恋の相談をしていた自分が、恨めしい。



 「ハッ………ハハッ。まるで、道化じゃないっ…………!」



 蚊の鳴くような呟きで、渇いた自嘲を零す。

 のたうち回る羞恥心と悲痛。どうしようもない苛つきに、手が真っ白になるほど強く拳を握り締めた。ギリッ、と奥歯が嫌な音をたてる。



 目の前の光景から身体を無理矢理に引き離し、着ていた部屋着のフードで顔を深く覆う。急いでその場から逃げ出し、自室へ駆け込んだ。

 独り、部屋に篭り扉に背を預けると、ズルズル膝から床へ崩れていく。



 「っ…………うぁぁ……………ふぅっく……………!!」



 手で口元を覆い、誰にも聞かれないように声を押し殺し、嗚咽を飲み込んだ。でないと今すぐ、胸の奥で荒れ狂う叫びを言葉の刃、或いは暴力の刃にして襲いかかってしまいそうだった。

 静かに咽び泣く自身の瞳からは、次から次へと涙が溢れ、はらはら頬を濡らしてゆく。



 留まることを知らない涙と一緒に、この恋心も流れていってしまえば良いのに。



 息も出来ない、悲しみと切なさの中。

 私の最低最悪な十六歳の初恋は、儚く、泡沫のように消えていった―――――。

 読んでいただき有り難うございます!

 今日は二話、更新します。

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