世界からの要求3
ここは、王城内のとある一室。俺は、机に突っ伏して死んでいた。
…。
いや、本当に死んでいる訳ではないんだ。こう、精神的に追い詰められて、無気力になっている的な意味だ。これがアニメなら、よくあるチーンという効果音が鳴っている事だろう。
そんな俺の背中を、隣に座ったアンシアが撫でてくれている。ああ…癒される。
俺がこんな事になっている理由…それは、知ったからだ。知ってしまった。
本当に…どうするか……。
あの後、俺たちは話をするに当たって、部屋を移動することになった。長くなるのと、仮に俺が協力出来なくても、もう秘密を知る人物となるのだからとの事で、内部の部屋に通して貰えたのだ。
この時点で、すでに後戻りできなくなっている気がするが…それでも、貰える情報を聞かない訳にもいかなかった。
そして、いよいよ知る事になった現実は…なんだかんだで平和に過ごしていた俺にとって、衝撃的なものだった。
頭の中を整理していこう。
まず、そもそも商業がどうのという前に、この国の内情を一部、俺は知る事になった。
暮らしている分にはそこそこ平和に見えていたが、その実この国の中枢である王城内では、とんでもない状況…だったそうだ。
だった…つまり過去形である。
その危機的状況を、過去のものとした出来事こそが、先日の王都襲撃事件だという。俺たちが、地竜で逃げ出したあの事件だ。
先ほど聞いた話を真実だとするなら、あの襲撃によって愚王は断罪され、悪化し続けていた状況を、脱したという形になる。
この話を聞いたときは、あのカインの王城への突撃が、少なくとも自棄になったものでは無く、この新しい女王様に、協力する為だったのだと、少しばかり安心した。様々な苦労やドラマがあったようだが…それはもう、終わった事だ。
そう…先にこの話が出たのは、あくまで本題に移るための、予備知識に過ぎない。
本題…つまり商業の異常について、目の前の女王が、これから改善する為に動こうとしている。そういう立場にあると、先に知る事が出来た。
まず前提として…前国王は、それはそれはひどい暴君だったらしい。
ある頃から、異様に権威を振りかざし、気に入らない人間を…消してしまう事もあったそうだ。
組織というのは怖いものだ。そんな王でも、形態としては最も偉い人間。すぐに対処したりは、どうにも出来なかったという。
先日の件で、ついに断罪されるまでに、前王は国の主要な人間も、数多く罰してしまっていた。そして、その中には…国の政治を支えていた重鎮もいた。
そんな事を続けていては、当然、行政機能にも綻びが出てくる。
そもそもが、元の世界のように何百人体制などではない。さらに、現状優秀な人間というのは、魔族への対応…つまり軍事関係に集中させているんだそうだ。
戦う事の出来る、もしくは頭が切れる人材は、現状そこに回さざるを得ないらしい。国が頑張っているおかげで、俺たち一般人は平和であっただけで、実は相当、そちらも大変な状況なのだという。
さあ、そんな中…残された人間たちは、どうしていたのか。
…いよいよ、商業事情の話だ。




