世界からの要求2
この国の商業について…か。
「それは…率直に言って良いんですよね?」
「…? はい」
不快に思われる事を言ったら打ち首、みたいなイメージをしてしまったけど、そういう感じではないか。
「では…」
俺は少し考えた後、思っていた事を話し始めた。
「はっきり言って、俺の常識からすれば不思議な事ばかりです。異常とすら思います」
「…やはりそうですか」
「はい。まず国内の物価格差がひどすぎます。そして村や町の閉鎖的な商圏、自由度の低さ…大まかに言ってもかなりの数があります」
「ええ」
「そして、何より不可思議なのが…そんな状況で、慎ましくとはいえ、物流が成り立っている事です」
そう、おかしいんだ。
初めて村以外の状況を調べた時も、変だとは感じた。その時は、こんな状況だから、未来であそこまで貧困化が進んでしまうんだろうと、安易に考えていた。
でもその考えは、ここ一年間で変化していた。
ぎりぎり何とかなっているとか、そういう次元の話ではない。今後、流通はおかしくなってしまうだろう…みたいな、先の話ではないんだ。
今…このたった今、この国が何とか回っていること自体がおかしい。
これは、つい先日まで運営してきた、丸猫屋一号店での、販売実績によって気付いた事だ。それまでは、市場にずっと居たと言っても、自分が商品を管理していたわけじゃないので、確信を持てなかった。
ずばり、売れている物がおかしいんだ。
よく、商品を置いて売れないのなら値段を下げればいい。欲しい人がいつか買って行くさと、安易に考える人が居る。同業者でも、そういう人は居た。
しかしそれは間違いだ。
売れない物は、存在する。
その地域では価値がない。値段が高すぎる。逆に低すぎて不信感を与えてしまう。これまでこの世界でも、意識して回避して来た要素だ。もちろん他にもある。
それなのに…石の町や、砦町の状況と合わせて分かった。この世界では、売れるはず無い商品の、販売数が多すぎる。
例えば、うちの店よりも他の町の方が安い商品。うちは確かに、大規模な調整を行い、あの商圏内では安い商品が多い。しかし、明らかに異常な物価が存在するため、すべてが最安値という状態ではない。
それから、嗜好品に近い商品。この世界の現状に対して、どうにも販売数が多い。それに分布もおかしい。まばらでは無く、きれいに一ずつ売れるのだ。もちろん一つも売れない物だってある。でもそんな中、予想より売れるなら、複数売れてしまう物が出ても良いはずだった。それならば、俺の知らない、売れる要素が存在するという可能性もあった。
少しの間ならともかく、それが丸猫屋で実績管理を始めて、ここ一年続いているのだ。
こんな事は、自然な市場では起こりえない。
まるで…作為的な何かが働いている様な…。
では、その作為的な点は、一体誰によって作り出されているのか。最近は、そこがとても気にかかっていた。
まだまだ俺の主観からすれば、寂れているレベルの客数だ。全員とはいかなくても、お客さんの年齢層や風貌、もっと言えば顔を覚えている人だっている。明らかに一個人ではない。
ならば、組織的に行われているのか。そんな事をする…出来る組織は、一体どこだ?
俺は、これまでの調査で判明していた、この国の商業に関する異常を、可能な限り簡潔に話していった。それでもかなり、かかってしまった気がするが、それほどおかしいと言う事だ。
そんな俺の話に対して、反応は…。
「はー…すごいね」
「私も…驚きました」
「あたしも、絶対力になってくれそうって思って、翔君を勧めてみたんだけど、想像以上だよ」
そう言って驚きを前面に出す、イエローと女王様。
確かに、パソコンが無いこの世界では、あの規模の管理は大変だった。むしろ今後、売り上げが増えたら無理が出そうだ。
俺だって、元の世界からの流れがなければ、あんな作業やりたくない。他の従業員にも、覚えてもらうべきか…。でもあれ、必要性を理解してくれる人って限られてるんだよな。
「翔さん…そこまで見抜かれてしまっているなら、もう隠しても仕方がありません」
「え、はい」
いかん。また店の事を考え始めていた。
「今回、私が依頼したい内容は…まさにその事なのです」
「それはつまり…この異常事態を、国は把握しているんですね」
「はい。すべてお話していきます。なのでどうか…事態の解決の為に、力を貸して頂きたいのです」
「…まずは、お話を伺います」
今度は、やっとこちらが話を聞けそうだ。さて鬼が出るか、蛇が出るか…。
ちなみに、ローナは立ったまま、いつの間にか目を閉じていた。寝ている…のだろうか。
本当、器用だな。
先日は、体調を崩して更新が遅れ、申し訳ありませんでした。
えーそして、今回も私事なのですが…今度はPCが…クラッシュしました。
それにより、この小説の一番詳しい設定資料と、設定画が闇へと…還りました。今泣いてます。
設定は、脳内メモから全力で再出力しています。しかし絵の方は…もう…。そちらを楽しみにしてくださっていた方は、申し訳ありません。
本出したい! と言っているのに、危機管理が足りていませんでした。
もし同じ書籍化を目指すライバルの方々が、これを読んでくださっていたら、すぐ、バックアップを日課にしましょう。私はします。
小説の更新は…止めません! …止めたくない! …止まらないはず




