連れ去られたのは
その後、無事飛龍の背中へと引き上げられた俺たちは、広い広い空を進んだ。
すでに十分速いと思っていたのに、そこから飛龍はさらに加速していった。そんなとてつもない速度で飛行する生物の上に乗っていて、本来なら一瞬で吹き飛ばされそうなところだ。しかしそこは、イエローが障壁の様なものを、飛龍の背の上に展開していたらしい。まさに飛行機の中に居る様な理屈で、無事に流れる景色を眺めていた。
そして、あれよあれよと言う間に到着したその場所は…。
俺たちは、飛龍から降りた後、連れ立って廊下を歩いていた。
「イエローって…本当に何者? 絶対ただの行商人じゃないよね」
「それはー、秘密だって言ったでしょ?」
「…それで俺はこれから、何をすれば? あと、付いてきちゃった連れは…一緒でも平気?」
「んー…それは微妙な線だと思うけど…まあいいよ!」
相変わらずと言うか、どこまでも元気だなあ。
知り合いの中だと、最もフランクな性格してるのに、反して一番謎が多いのも彼女だ。そのアンバランス感も、魅力の一つかもしれないが…。
またしても考え込んでいる俺の横では、イエローがアンシア達に、改めて話しかけている。飛龍の上では、騎乗や魔術に集中していたのか、長い事静かだったからな。
アンシアは、少々面食らいつつも、しっかり挨拶を返している。
ローナとメルは、こんな状況でもマイペースだ。落ち着いた様子…と言うよりも、のんびりした感じ。
ローナなんか、今もまわりを見回して驚いているみたいなのに、それでもなお、歩きながら寝てしまいそうに見える。何と言うか…器用だな。
俺なんかは、そわそわしてしまって仕方がない。何と言ってもここは、つい先日まで遠目に眺めていたあの王城…その内部なのだ。
そう、俺たちはなんと…先日までいた王都に戻って来ていた。
行先がここだと知った時は、それはもう驚いた。
内部抗争や、敵国や魔族による襲撃…理由はいくらでも考えられる、先日のあの騒ぎ。それに巻き込まれないようにと、急いで脱出したと言うのに、まさかのとんぼ返りである。
そんな王都だが、空からパッと見た限りでは、町は至って落ち着いている様だった。何だかんだで、一週間以上は経っているし、あの騒ぎは、割と早く収拾が付いたと言う事だろうか。それなら、あの様子も納得だし、何より大規模な損害なども出なかったと言う事になる。まずは、良かったと言えるだろう。
話しながらゆっくりと歩を進めていた俺たちは、仰々しい扉の前へと辿り着いた。
「とまあ、とりあえず、話を聞いてよ。ね?」
「まあ、ここまで来たし、聞くけどね」
これから俺たちは、この扉の向こうへと通される。
そこでどんな話を聞けるのか、そもそも誰が待っているのか。少し緊張してしまう。
しかし、予想外にも降って湧いた、国の中枢と話す機会だ。話を聞くのは良いとしても、可能ならこちらにも旨味のある話をしたいな…!
俺は不安もあれど、大きな期待を持って扉の先へと進んで行った。




