黄色の王都
あれから特にトラブルも無く、俺たちは王都へとたどり着いた。
騎竜便のおじさんとも別れ、いざ町の中へ。
「はあー…」
「おっ…きぃ…」
思わず息が漏れてしまう。
本当は、城下町を見たのも初めてだし、目的を考えれば、目の前のこちらを一番に気にしないといけない。
しかし、何と言ってもやはり、城だ。デカい。まだ距離はあるはずなのに、これでもかと目立っている。
さらに大きさもさることながら、この色だ。黄色、とても黄色い。少々くすんでしまっているが、それでも目立つのには変わりない。
にしても黄色か…イエローの事を思い出すな。
以前の旅の途中、偶然知り合った行商人。結局あれから、一度も会えていない。
今思い出しても、何と言うか…不思議で、でもきれいな人だったな。
「…」
そんな事を考えていると、服の裾が引かれた。
「ああ、ごめんごめん。じゃあとりあえず、町の探索から入ろうか」
「…はい」
こうして俺たちは、散策を開始した。
アンシアは、俺の服を掴んだままだ。なんともかわいらしい。
俺たちは、喧騒に誘われて、この町の市場にやって来ていた。
「ほっ、はっ、ほっ、は」
「メル、さすがに止めて」
「いやー久しぶりに元気が有り余っておってなー」
「なら自分で歩いたらいいのに」
「嫌じゃ。生地が汚れるだろう」
「…」
もうよく分からないなこれ。
メルは、町に入ってしばらくした頃、目を覚ました。その後、どういう訳なのか、俺の頭の上で跳ねている。
元気が余ってるって…良く寝てるのは普段も一緒だし、どういう理由なのだろうか。
例のごとく、聞いても気にするなって返されたし。
この町に何かあるのだろうか。やはり王都だし、例の、神の力的なものが、かなり溢れているとか。
結構、良い線行ってる気がする。
さて、肝心の町の様子だが、さすがは王都と言ったところだろう。
俺たちの居た村はもちろん、石の町に比べても、ずいぶんと人が居る。この世界で初めて見た、寂れていない市場と言えるだろう。
しかし、手放しに良いという訳でも無い。
何と言うか、雰囲気が固いのだ。
賑やかで、楽しそうなショッピングモール。そんな空気では無い。
これは、やはり魔物による被害が原因なのか。それとも、もっと他に理由があるのか。
この町に滞在している間に、誰かから上手く話を聞きたい。出来れば、何人か知り合いも作って…。
まあ、ともかくまずは、一番の目的を目指そう。
「メル様…めっ」
「むぅ…」
そんな中、落ち着きのないメルを、ついにアンシアが抱きかかえた。
というか、二人ともそれでいいんだ…?
アンシアが、めっ、してるのも、メルがそれで大人しいのも、すごく違和感がある。
普段から、二人はこうだった…のか?
村に戻ったら、もう少し店以外の事も、気に掛けた方が良いかもしれない…。
アンシアが、こうしてぬいぐるみを抱えて歩いている姿も、なんだか懐かしい。
少しばかり違和感があるのは、小柄と言っても、少し背が伸びたからだろうか。アンシアには、これからも平和な暮らしを送って欲しい。
その為にも、気合を入れていこう。
どこが試験会場なのかは分からないけど、まずは、あの目立つ城に行ってみよう。
俺たちは、和やかな雰囲気に包まれつつも、間違いなくそのままでは居られない、試験の会場を目指して歩いていった。




