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生活はどうなった4

 メルことメルクリウ様は、神様だ。

 初めて出会った時は、独特の凄みがあった。

 これは、何かが起こるに違いないって、それはそれは期待したものだ。


 まあ、それだけだったけども。


 今メルは、俺が作ったまん丸猫人形の中に、精神を憑依させている。

 そうする事で、俺の行く先に付いてきたのだ。

 ほとんど寝ていて、果たして意味があったのかは不明だが。

 本来の力があれば、そうした憑代が無くても、本体である神樹から離れる事は出来るらしいけど、今は力が足りず、仕方なくそうしているらしい。


 そんなメルなのだが、この村では毎日普通に起きている。寝坊助だけどな。

 だからやっと、こうしてゆっくり、話をする時間も作れた訳だ。

「つまり、この夢って言うのは、この世界の神様が、共有してみている物なんだ」

「その通りだ。基本的に、この世界の者では、何をどうしようと、この未来が訪れるのは避けられんだろう」

「そこで、メルみたいな神様だったり、俺みたいな異質な存在が重要になってくる訳だ」

「そうだな」

「と、なると…。毎日見てる夢は、ここから俺が、意味のある事を何も出来なくて、タイムリミットを迎えた場合の結果なんだね」

「うむうむ。さすが頭はそこそこ回るな! さすが我の選んだ人間だ」

 うーんドヤ顔。

 というか、ただの人形だったはずなのに、この目やら口やらはどうなってるんだ。

 普通に動いているけど、こんな変化みたいなことが出来るなら、その分の力で他の事が出来るのではないか。

「ちなみにだけど、この未来に影響を与えられる人間…いや、存在って、どのくらい居るの?」

「それはわからん」

「ええ…」

 本当に…欲しい情報を授けてくれない神様だ。

「神なんぞ腐るほどおるし、分かるはずも無いだろう。もっとも、そ奴らはもう、アテに出来んよ」

「確か…もう今は、色々と手を尽くした後で、すでに力を使える神は少ないんだっけ?」

「そうなのだ。全く、どいつもこいつも脳筋でな。事態の解決の為に、戦う力を授ければ大丈夫などと、短絡的に動いたそうなのだ。それで、ここまで追い詰められていては、世話無いの」

「ふうん…。ねえ、メルも同じ神様なんだよね? その他の神様が踏ん張ってる時、メルは何してたの? あと今、他の神様がどうしてたのか、誰かから聞いたみたいな言い方だったけど、その相手は? 力になってくれないの?」

「あーそれはのー…」

「…」

 あ、これは答えないつもりだ。

 目線を逸らし、よく分からない鼻歌なんぞ歌っている。

 まあとりあえず、これからに影響する事では無さそうだし、問題無いなら無理には聞かないけどさ…。

 どうにも、重要な事を言い忘れてそうなんだよな。

 不安だ。


 あの夢は、元々はもっとひどい結末だったのだろうか。

 最後に立ち向かっている勇者がそもそも居なくて、なすすべなく世界が滅んで、終わる様なひどいものだったのだろうか。

 暗い何かと勇者が戦う夢は、これまで何度か変化してきた。

 その内容は、未だ勇者が死んでしまう結末のままだ。

 しかしそれでも、良くはなってきている。

 ハッピーエンドを迎えるための、最後の一押しが出来るのは俺だけだと言うのなら、やるしかない。

 俺が戦いを助けることが出来るくらい、力を付けて強くなるって線の方が、個人的には未だに嬉しい。

 でも俺を呼んだメルが、他ならぬ商業の神様だって言うしな…。

 なんとも、夢の無い話だ。


 このまま訓練を続けていたら、どこかで無双ルートに入り込めないものかなー。

 毎晩見せられる重たい内容の夢から逃避するように、俺は妄想と言う名の夢をこっそり見ていた。

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