生活はどうなった
辺境のこの村で、市場の環境が変わり始めた。
お客さんにとっては、まだそこまで変化は無い。しかし、店側の俺達にとっては、すでに大きな変化となっている。
「そこ、これで平気かね」
「翔君が持ってきた水平器があったろう」
「かあ~地味な作業だよこっちは。あんた替わってくれないかい」
「アンシア、あんた頑張りすぎだよ! ほれこっち来て休みな!」
「ひゃ、わ…」
建築現場では、だんだんと活気が感じられるようになってきた。時には不満も飛び交っているが、それでもエネルギーを感じられる。
これまで、あまり他の人と絡む姿を見なかったアンシアも、なんだか溶け込んだ様子だ。
「それ、本当に本当の話なんだよねえ?」
「我も見てきたのだ。保障するぞ!」
「あたしはメルクリウ様が、このぬいぐるみだと言うのも、まだ慣れないよ」
「なぜだ!? 信じろ!」
講義では、見知らぬ知識がどんどん増えるにつれ、疑惑の声をあげながらも、少しずつ慣れている様子だった。初めは不安そうだった皆が、最近は笑いながら話している。
まだ、信じられないという感想が多いかもしれない。でも、それはそれとして、受け入れる事が出来つつあるみたいだ。
メルは、この講義に入り浸っている。神様として、なんだかんだと気になるらしい。普段の様子を見ていると、こうした勉強とかは苦手そうだが、頑張っている。
責任感からそうしているなら、神様として生まれるのも、なかなか楽ではなさそうだ。
「まいどあり」
「またお客さん途切れちまったねえ」
「あ、そうだあんた、こいつだけどね…」
悲しい現状ではあるが、この環境になってから、市場は一番暇な担当区画だ。
最初の頃こそ、一番不安そうにしていたところでもあるが、すぐに慣れて、今ではやる事が足りず、そわそわしている。
そのおかげか、良く商品について話をするようにもなっていた。暇つぶし扱いの様になっているが、それが実際有意義なのだから上々だ。
加えて、すぐ近くでガタゴトと建設をしているせいか、それが目立つようになるにつれ、少しずつ新規顧客も増加傾向だ。
今まで村には寄るけど、この市場には寄らない層が居たって事だな。いわゆる潜在顧客と言う奴だ。
お客さんになってくれる可能性があったのに、今まで呼び込めていなかった人たちが、この段階ですら存在するんだ。
気のせいかもしれないが、常連さんの来店する頻度も上がっている気がする。
ちょっとした変化が、気になるのかもしれない。
今のところは総じて順調。
市場の皆も、寂れて、ほとんど俯いていたこれまでより、忙しい今の方が元気そうだ。
実際人間、やる事が適度にあった方が、健康的に生活できるものだ。
今の皆を見ていると、これまで相当、おかしくなっていたんだなと思えてくる。これなら、予想よりもはるかにいい店にしていけそうだ。




