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躓きと、一歩目3

 俺はソウさんの店を出てすぐ、マリーの店を確認していた。

「まだ、戻ってきていないか……」

 姿が見えないのは心配だけど、今は考える時間が欲しかったし、都合がよかった。俺はその場を離れて、特に当てもなくトボトボと歩きながら、できる限り落ち着くように努めて、思案を始める。

 俺が犯した間違い……。それは、俺の世界の常識、俺の世界にとっての普通を、いつの間にか判断基準にしてしまったことだ。

 もちろん俺だって、そこまで考えなしなわけでも、バカなわけでもない。

 最初のうちは、むしろそういう軽率なミスが無いように、充分注意していた。だからしばらくの間は、口を出したりしなかった。マリーに徹夜までさせて、ここの情報を聞き出した。自分自身で市場調査もした。いざ行動を始めるとなった時も、できるだけ失敗しても取り返しが付くことを、よく考えてから実行した。ローリスクローリターンな作戦で、確実な利益を得ようとしていたはずなんだ。今の状況だって把握していて、次の作戦へ移行するタイミングを計る余裕すらあるつもりだった。

 でも、実際のところは全然違った。

 異世界に来て、どこか浮かれていたせいだろうか。それとも単純に、いつも通りの悪い癖で調子に乗ってしまっただけだろうか。何にせよ、全く状況が見えていなかった。

 例えばさっきソウさんに教えてもらった、売り上げの落ちた店があったという話だ。

 俺の世界では、異なる商品を扱う店が一か所に集まっていて、そのうち客の増えた店が一つでもあれば、ついで買いによる売り上げ向上を見込むことができた。

 これはお客が、実際に商品を目にする機会ができたことで、当初の予定にはなかった物をついでに買って貰えるというものだ。元の世界では、わざわざこれを狙って、全く別の会社が同じ敷地に店を出すのが、メジャーになっているくらいだった。

 他にも様々な利点があって、非常に理にかなっている戦略だったんだ。

 いや、理にかなっているのは、この世界でもそうなんだ。

 通りがかる人が増えるのは、店にとってプラスになる。ここまでは、この世界でだって変わらない。

 でも違ったんだ。しかも、俺はそれを知っていた。

 俺は宣伝という方法を取ると決めた時、何をどう考えてそうした?

 俺はこう考えたんだ。

 旅の人ばかりで、手持ちのお金に余裕のある人が少ないなら、最初からマリーの店を目的としてくれる人を増やせばいい。

 そう、もともとついでに何かを買う余裕があるような客は、ここにはほとんどいなかったんだ。

 マリーの店が高価な商品を扱う店だから、それが顕著に表れていたというだけだ。

 さらに、ここの市場や、ここへ来てくれるお客さんたちを見ていればわかる。この世界の人たちは、ほとんどの人が痩せ型だ。個人差はあるけど、太っている人なんてほぼ見かけない。それだけ、日々の生活さえもきつい人たちが多いということだ。

 そんな中、マリーの店だけ目立ってしまったらどうなる?

 日々の生活を必死にやりくりしている財布から、初めから予定していたとしても、高額のお金が出ていって、果たして他の店でも普通に物を買えるのか?

 そんなはずは無かった。

 俺の宣伝で、手持ちの少ないまま市場に顔を出した人も居たはずだ。最初にマリーの店で買い物してしまったことで、他の店での購入を止める人たちが、少なくとも何割かは確実に居る。扱っている商品が違うとか、そんなことは関係ない。

 そんな余裕のある客は、この世界にはほとんどいないんだ。

 思い返してみるとどうだ?

 少し考えるだけで、こうして答えが出てくる。正しく状況を見極めるためのヒントは、充分すぎるほどあったんだ。


 店が何者かに、破壊されてしまった件についてはどうだ?

 俺はあの場面を見て、慌てた。

 それはもう慌てた。

 でも、マリーはどうだっただろうか?

 落ち着いていた。

 少なくとも表面上は冷静に、起こってしまった事に対して行動を始めていた。こういうことがあるかもしれないと、マリーはわかっていたんだ。

 ここには警察も、警備会社もない。

 この前詐欺師が来て、それを対処していたみたいに、ここの市場の人たちが、自分たちでなんでもやるしかないんだ。

 だから、市場の人たちとの友好関係は、これ以上ないほど大切にしなきゃいけない。出る杭になっていはいけない。あまり目立ってはいけない……!!

 マリーが最初から俺に言っていたことだ。

 意味をはき違えていた。そりゃあ目立ち過ぎは良くないよな、みたいな、なんとなくの理由なんかじゃない。もっともっと、重大なことだったんだ。

 ここの市場が、誰も売り上げを伸ばすの為の仕掛けをせず、閑散としていたままだったのも納得だ。

 目立ってもし反感を買えば、ここに居られない。ここに居られなければ、他に行くあてもない。商売ができない。お金も無くなる。そういう悪循環の中にあったんだ。

 そして俺は、マリーをこれ以上ないほど目立たせてしまった。この市場での、マリーの立場を奪ってしまった。

 それがあのザマだ!

 でも、どうすれば良かったんだ?

 あのまま、ずるずるとお金が底を突いていくのを、ただ見ていればよかった?

 もっと、問題なく稼ぎだけを増やす画期的な方法があった?

 それとも、俺さえいなければ、マリー一人なら何とかなった……?

 そうかもしれない。これまでだって、マリーはここでやってきていたんだ。自分でも、俺が家計に負担をかけてしまってるって、わかったいたじゃないか。

 考え始めるとキリが無かった。俺がどれほど迂闊だったか、これでもかと思い知らされる。

 こうして自分ですぐ気付ける程度のことを、俺はわかっていなかったんだ。

 いっそ、このまま……。

「どーこ行くって言うんだろうなあ……」

 俺は思わず笑ってしまった。

「お兄さん」

「え……」

 どのくらい歩き回っていたかわからない。でもここへ来てそれなりに経ったおかげで、癖にでもなっていたのだろうか。

 気が付くと俺は、村からマリーの家へと返る時に使う、森の入り口近くにいた。

「お兄さん、今日は色々ありましたし、もうこのまま帰りましょう」

 そしてそこには、今一番顔を合わせづらい、この世界で一番の恩人の姿があった。その人は、さっき別れた時とは違って、なぜか少しだけ、晴れやかな表情をしていた。


 俺はマリーと並んで、最近やっと慣れてきた山道を歩く。

「えっと……結局店、あのままにして来ちゃったけど、よかったのかな?」

「大丈夫ですよ。とりあえず、今日だけはソウさんが見ておいてくれるそうですから」

「あ、そうなんだ」

 あの後、市場に戻っていたんだな。入れ違いになったか。

 それにしても、気まずい。気まずすぎる。

 あんな事件を引き起こす原因を作ってしまって、しかもその後よりによって、市場の人を犯人呼ばわりだ。

 これでは、マリーの立場が無い。どんな顔をしていればいいのか、見当もつかない。

「お兄さん、私、言わなきゃいけないことがあるんです」

 言わなきゃいけないこと……そうだ。俺の方こそ、まず言わなきゃいけないことがある。

「「ごめんなさい!」」

 なぜか、マリーと声が重なる。

 俺はそれが意外で、後に続けようとしていた言葉を忘れてしまった。

 一方、マリーは落ち着いた様子で、話を続ける。

「お兄さんには、嫌な思いをさせてしまいましたよね。本当に、ごめんなさい。私のせいで……」

「そ、それは違う! それはこっちのセリフだよ。俺がやったことで、マリーはあの市場に居辛くなってしまった。ちょっと上手くいったからって、調子に乗ってた。本当にごめん!」

「……いいえ、やっぱり、謝るのは私の方です。だって、私は……わかっていたんですから」

「そ、それ! 俺も……もう遅いけど、さっき気付いた。マリーは、あの市場でやってはいけないことをきちんとわかっていたんだって。あんな風に、目立ち過ぎちゃいけないって、ちゃんと俺に言ってくれてたのに」

「まあ、それもありますけど、わかっていたのはそれだけじゃないですよ。私は……私の代わりに店が危なくなっている人が居るのもわかっていました。わかっていて、でもやっぱり、また自分が稼げなくなってしまうのが怖くて、黙っていたんです。あと少しだけ、あと少し余裕ができるまでって……」

「それ……は……」

 いや、不思議なことではない。

 ソウさんが、市場の状況を把握していたんだから、同じように市場に居たマリーだって、知っててもおかしくないだろう。

 でも、意外だった。こんな得体も知れない俺みたいな奴を、世話してくれたマリーだ。他の人に、何か負担が掛かったりしているなら、すぐに俺をひっぱたいてでも、止めてくるようなイメージだった。

 そんな思いやりのある、優しい女の子だと思っていた。

「あ、失望させちゃいました……? いやあ、私もやっぱり、自分の命は大切なんですよねー」

「え、命……?」

「はい。お金稼いで、ご飯を食べなきゃ、死んじゃいますからねー」

「あっ……」

 また、一つ気づかされた。

 いや、思い出した。いつから意識の外に追いやっていたんだ?

 店をやっていけないだとか、お金が底を突くとか、そこで終わる話では無いんだ。

 元の世界なら、破産申請だとか、ただ実家に帰るとか、仕事を失敗したってどうにでもなる。

 次の為に何かしらの方法がある。

 少なくとも、仕事の失敗が命に直結するなんて、スタントマンとか、そういう仕事でない限りあり得ない。

 でもここでは違うんだ。お金が稼げなければ、それは直接、死に繋がる。元の世界ではただの仕事、ただの商売だったことでも、ここでは命掛けでやらなければならないことだったんだ。

 そうなると、また事情が変わってくる。

 見ず知らずの俺を助けてくれるなんて、優しい子だなーなんて呑気に感じていていい話じゃない。どれだけ人間ができていれば、マリーは俺を、こうして世話するって言う選択ができたんだ?

 いや、マリーだけじゃない。

 ソウさんもそうだし、他の人たちだって皆、自分の命がかかっていたんだ。

 だとすると……ここの人たちは皆、俺なんかとは人間ヒトとしての格が違う。

 俺や、俺の世界の人間が、ずっと死と隣り合わせで、危険に追いやられて、そんな状態でこんなに長い間、何もせずに、何も言わずに堪えることができるのか?

 例えそれが、仕方のないことだったとしても……。

「なんだか驚いてます? てっきりお兄さんだって、それがわかっているから、ああして私の言った事を守らずに、あれこれしたんだと思ってましたよ。お兄さんだって、飢え死には嫌でしょう?」

 俺も、わかっていた?

 果たしてそうだろうか。少なくとも自覚はしていなかった。

 でも無意識には危機感を感じていて、それであんなことがあるまで、気が付くことができなかった?

 調子に乗っていたのも相まって、視野が狭くなっていたのか?

 いや、どんな理由があっても、結局言い訳だ。俺が未熟だっただけだ。

「そうだとしても、悪いのは俺だよ。マリーが謝らないといけないことなんて、一つもない」

 少なくとも俺には……。

 俺は思わず顔を逸らした。

 さっきまで感じていた罪悪感が、より実感を帯びてくる。しかしそんな俺に、普段通りの軽い口調で、マリーが言葉を投げかけてくる。

「……お兄さん、何か勘違いしてませんか?」

「勘違い?」

「なーんか聞いていると、お兄さんが全部悪くて、そのせいで私がこんな状況に陥ってるーみたいに聞こえます」

 思わず振り返って、俺は答える。

「いや、だって、その通りでしょ」

「あー! やっぱりそんなこと思っていたんですね! 思い上がらないでく・だ・さ・い!」

「あ、で、う、ぐっ」

 言葉に合わせて、顔を指でつつかれる。

 とても暗い話をしている途中とは思えなかった。

「確かにお兄さんを頼って、ここの所お店の運営をお任せしていましたけど、店主は私、お兄さんを養って上げているのも私ですよ? それなのにお兄さん、自分に全部責任があるーみたいな顔して、いつからそんなに偉くなったんです?」

 マリーは、からかうようにこちらを見ていた。俺のことを責めたりする気なんて、微塵も感じられなかった。

 そうだ、俺はこんなところでも間違えていた。

 マリーを、まだ若いのに偉いだとか、しっかりしていてさすがだとか、上から目線でそんな風に思っていた。

 俺は一体何様だ?

 マリーは俺より、はるかに長い間、ここで商売を続けている。

 いや、それだけじゃない。

 俺は社会人になって、商売に携わって、精々6、7年程度しか経っていない。

 対してマリーは、小さな頃から店をやっていたという話だった。今高校生くらいに見えるってことは、小さい頃からやっていたなら、少なくとも俺と同じくらい長く、商売に携わっているはずだ。

 それも、この命がけの商売の世界で。

 この世界での経験値どころか、商売を営んできた長さ自体ですら、マリーの方が上ではないだろうか。

 だとすれば、俺は思い上がりもいいところだ。

「いやあ……もうぐぅの音も出ないよ。本当、もう……申し訳ありませんでした」

「うわ、ちょっと何いきなり気持ち悪い言葉遣いしてるんです? 気持ち悪い」

 わざわざ二度、心に刺さることを言われた気がするが、さすがに突っ込む気力はなかった。

 人生でここまで精神的に追い込まれたのは、さすがに初めてかもしれない。

「あーもう、お兄さん顔を上げて下さい! なんだか色々しょい込んでるみたいですけど、私はお兄さんに感謝だってしてるんですよ」

「感謝……?」

 そんなことをされる要素がどこかにあっただろうか。元の世界の知識でチートだーとか考えて、散々引っ掻き回しただけではないだろうか。

「そうです。もともとうちは限界でしたし、正直お兄さんに会わなかったら、とっくに飢え死にしていたかもしれません」

「でも、上手くどうにかできていたかもしれない」

「それだけじゃありません。私、お父さんのことは大好きですけど、あの通りあんまり話をする人じゃないですから、話をする相手ができて、少しは嬉しかったですよ」

「少しはって……」

 俺はおどけて見せるマリーに合わせて、愛想笑いを返す。

 笑顔を作るのなんて、もう慣れたものだと思っていたけど、今は上手くできている気が全くしなかった。

 マリーはこんなにも強い。

 今言っていた通り、俺がマリーにできたのは、ほんの少し話し相手になることくらいだったのかもしれない。

 もう、お世話になってるわけにはいかない。俺の持っている知識は、ある程度マリーに教えてある。今は、幸いお金だってそこそこマリーの手元にはある。俺が居なくなっても、ソウさんだっているし、何とかやっていけるはずだ。

 だから――

「お兄さん!」

「!」

 マリーに片手を掴まれ、そのまま正面同士で向き合う。それからもう片方の手も掴んで、俺を強い瞳で見上げてきた。

「お兄さん、ちゃんと私の声、届いてますか?」

「も、もちろんちゃんと聞いてる。今まで迷惑かけて、本当に悪かった」

「やっぱり、わかってない……!」

「いや、そんなことない」

「だったらなんで! さっきからお兄さん、私が言ったことに、でもとか、否定してばっかりで、ちっとも聞いてくれてません!」

「あ……」

 マリーが泣いていた。さっきまで、カラ元気だとしても、普段通りに明るく振る舞っていたマリーの瞳から、ハラハラと涙が零れ落ちる。

 その姿は儚くて、小さな力にも負けてしまいそうで、さっきまで感じていた強さは、もうはっきりとは感じられなくなっていた。

 そうか……。

 本当、俺は今日だけで、何回思い直せば気が済むんだろうか。

 マリーも、この世界の人たちも、確かに俺よりよっぽど強いかもしれない。でも、だからってマリーが、まだ俺より若くて、弱い部分もあるという事実が、打ち消されて消えるわけじゃない。

 当たり前だ。

 この世界へ来て、興奮して、不安を感じて、どれだけ物事を見失っていたんだ。

「マリー、ごめん」

「ん、今度こそ、ちゃんと私の言ったこと、わかったんでしょうね?」

「うん、ちゃんとわかった。これからは、必要な分はマリーに頼るし、俺にできる限り、それ以上にマリーを守るよ。勝手にどこかへ行って、消えたりもしない」

 マリーは少し驚いた顔をした後、掴んでいた両手を離してくるりと振り向き、スタスタと歩き始めてしまう。俺も、ゆっくりその後を追った。

「まあ、とりあえずある程度はわかったみたいですし、よしとしてあげます!」

「はは、ありがとうマリー」

 どんな表情かはわからないが、その声色には、またいつも通りの元気が戻っていた。なぜだかいつもより、歩くスピードも少し速いみたいだ。

「ん?」

 と思っていたら、マリーがピタリと歩を止めた。何かあったのだろうか。

「お兄さん、一つ聞いても良いですか?」

「何、マリー?」

「驚いて思わず聞き流すところでしたけど……勝手に消えたりしないってどういうことです?」

「え、いやーそれはー」

 なぜだろう。

 先ほどまでの声色に、ほんの少ーしながら、苛立ちのような感じが加わっているように感じるのは。

「お兄さん、まさか勝手に責任感じて、どこかへ行ってしまおうとか思っていたんじゃありませんよね?」

「いやーまあ……。でもほら、ちゃんと思い直したから、ね?」

「ね? じゃありませんよ! 私が何も言わなかったら、本当にいなくなってたんですか? もう信っじられません!」

「そ、そうだよね! どれだけの間、寝泊まりさせて貰って、ご飯食べさせて貰ったかって話だよね! 無責任すぎだよね! ごめんなさい!」

 俺はビシッと腰を曲げ、誠心誠意マリーに謝罪した。確かにどうかしていた。あのまま居なくなっていたら、恩知らずにも程がある。

 そのまま5秒か、10秒か、地面を見たまま待っていると、やがて頭上から声がかかる。

「そういう問題じゃ、ありませんっ……!」

 怒っているような、そうではなく不満をぶつけるような微妙な言い方だ。

 そしてマリーは、また先をズンズンと歩き始めてしまった。俺は慌てて頭を上げ、駆け足でそれに追いついていく。

「ご、ごめん。本当、いなくなったりはしないから! どういう問題だったの?」

「……今日のお兄さんのご飯は、いつもの半分だという問題ですね」

「え!?」

 絶対さっき言っていた問題の中身と違う! というかあの少ない食事の、さらに半分!?

「待って、マリーそれはできれば勘弁を……。ほら、他に何か、マリーの言うこと聞くからさ?」

「何でもですか?」

「何でも! そりゃあもう!」

「でも、だめです」

「そこを何とか!」

「だーめですっ」

 そうしてなんでもない口論をしながら、いつもの帰り道を歩き続ける。

 もう俺たちの間に、さっきまであった気まずさはほとんど無くなっていた。そして俺は、ご飯抜きじゃなくて、半分ってところが、やっぱり優しいし、かわいいところだな、なんてどうでもいいことを心の中で考えていた。

 本当に、色々考えを改めさせられた日だったけど、ある意味この程度で済んでよかった。ソウさんの言うとおり、店に土魔術を打ち込んだ犯人に、感謝してもいいくらいかもしれないな。

 少し、どころではない躓きだけど、また一歩一歩、この世界で生きるために進んでいこう。

 でも今は、少しだけこのまま、無心に会話を続けていたい。

 そうして俺は、積み重なった問題を、少しの間だけ横にどけて、マリーとの言い合いを楽しみながら、足取り軽く、山道を歩いていくのだった。

 ようやく、想定していたこのお話での一山目に、ひと段落がつきました。

 読者の方に伝えたいことが伝わっているか、それだけが不安です。

 次回はまた少し、この世界でのサブエピソードを入れられたらと思っています。

 読んでいて気楽に笑えるお話にしたいですね。

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