王都の生活も落ち着いて5
もう、この夢も当たり前になっている。
人が、暗い塊に飲み込まれて死んでいく。こんな夢を見ている事に、慣れてしまっているのは、果たして正常と言えるのだろうか。
これもずっと、考え続けている事だ。
まあ…いいか。
今日は、確かめたい事があるんだ。
…。
勇者は、いつも通り、暗い塊と激しく衝突している。
そこに伸びてくる光…やっぱり、違う。
イエローが対処してくれた魔術とは、違うものだ。
それに考えてみれば、俺達が相対したのは、この塊から出てきた何かで、塊そのものじゃない。
そうすると…やはり別の何かだと考えておいた方が良いな。
次にカインと会えたら…様子を見て……、踏み込んで大丈夫そうなら、本当は夢の話を出来ると良いんだけど…。
目が覚めた。周りは静かで、ここには俺しか居ない…事も無かった。
「おはようメル」
「我よりも遅いのだぞ。眠りすぎだな」
ここは…店だな。自分の部屋だ。
久しぶりにこの村で起きたって言うのに、入ってきた記憶も無く、突然こことは…ゲームのリスポーンじゃあるまいし。
もっと平和に、皆にただいまを言いながら遠出を終えたかったよ。
「それで、今回は何とかなった…って事でいいの?」
「ああ。今回は…な」
「なるほど…ね」
あの夢は、間違いなく未来に起きるし、それまでにも、何があってもおかしくないって事だ。
「翔」
「何?」
「我は何もお主達に話せぬ。これは世界のルールじゃ。そこを違える事は出来ぬ…だが、お主を呼んだ以上、何とかその…上手くやって欲しいとは思っておる」
「うん」
なんだろう。らしくないと言うか、最近は本当に諦観していたのに。
「だからこそ、出来る限りの手助けを、我はして来た。そして、これからの話だが、特にお主のすぐ近くに居なくても、何とかなるようになるじゃろう。完全に離れたりはせぬがな。そんな感じじゃ」
俺は、メルの言葉に含まれた意味を考えた。
おそらく、これはメルに許されてる範囲で伝える事が出来る、最大限のヒントなんだ。そう言う意図を感じた。
世界のルールとは何なのか。それがメルをどう縛っているのか。俺には分からないけど…。
おそらく、今言った通りの事は、してくれていたんだろう。
メルは俺達と一緒に、なぜか居るだけのマスコット…では無かったと言う事だ。
いや、元々神様だし、当然マスコットでは無いんだけどな。
直接助けられないのを、傍に居てもどかしく思ったのか。それとも、俺はもっと気付くべき事を気付けて居なくて、何とかしようと、ぎりぎりを攻めて話をしてくれたのか。
どういう心情で、今この話をしてくれたのか。それも、やっぱり分からない。
ヒントの意味も、すぐには分からない…。
だから、ちゃんと覚えておく。そして考えるよ。
それが、将来カインを助ける世界の秘密に、関わる事なのかもしれないからな。
さて…皆はどうしてるかな。
メルの様子からするに、あの塊騒動は、問題なく解決してるみたいだけど…?




