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マリーと文通を3

 俺は、着実に日々スケジュールをこなしていた。

 俺がこの国の人間として働いていて、貢献できる事は限られている。元々政治畑の人間では無いのだから、当然だ。だから最近は、共通して役に立つはずの知識を、ロア君を筆頭に教え込んだりもしていた。

 例えば、管理体制に関する事だ。こんな学校のクラブ活動みたいな管理で、国の中心部が回っていて良いはずは無かった。時間をかけ過ぎだと思う事でも、ずさんな管理により問題が起こってしまった際のデメリットを天秤にかけ、どうしても、100%を目指さなければいけない作業という物があるんだ。

 例えば最近の世の中だと、ダブルチェックが有名かな。一つの確認を、別の人間がそれぞれ一回ずつ行い、計二回にする事で、より精度を上げようと言うやり方だ。

 こう書くと簡単に見えるのだが、現実では意外とこれすらも出来ない事が多い。よく何らかの不祥事に関するニュースでも、これが出来てなかったって流れてたな。

 本来、こういう管理部署は、仕事が足りないと言える位の人手が必要なんだ。だからこそ、これだけ時間があるのに、質を落としたら許されないと言う、一種の圧が生まれる。働く人間も、ミスが無いよう愚直になれる事が多い。

 これすら失敗する原因として大きいのは、人手を増やさずに、このダブルチェックだけやるようにしろ、といった指示の出る事が多いからだ。こうなると話は別で、先程とは逆に、2回チェックされるんだから、自分は適当でも平気だろう、などと言う甘えが生まれる。最悪、一回目は適当、二回目はただ印を付けているだけ、みたいなひどい状況になったりする。そして、一度崩れた管理体制は、これまでそれで平気だった、とかいう魔法の言葉で、なかなか元に戻らない。働いている人間も、全員が全員、危機管理意識なんてものを意識しながら、仕事をしている訳では無いからだ。実際俺も、あれは再教育が大変だった…。

 だから、ロア君達には、正しい体制を維持して貰いたい。その為にも、こういう理屈を含めて、教えていると言う訳だ。


 そうした中、マリーとの文通は予定通り、月一のゆっくりとしたペースで進んでいた。

 初めこそおかしな方向のやり取りになっていたが、あれ以降は特に変な勘繰りも無く、業務連絡めいた手紙が届いていた。それは逆に、何かあったのを隠しているのではと、心配になる程だ。しかし、こうして手紙は届いている以上、間違いなく無事ではあると言う事でもある。勝手に不安に駆られて、村へ様子を見に行く訳にもいかない。なにせ、往復にだって2週間が掛かってしまうんだ。

 そして今日も、そんな手紙の届く日だった。

 特に変わらぬ店の状況が書かれていて、一安心した時だ。その続きを読んで、俺は一瞬呆然となった。

 そこに書かれていたのは、アンシアのおばあさんの…訃報だった。

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