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#3 美少女が首をかしげる仕草って、なんて可愛いんだろう!

 さて、どうしようかな。もう動く気もなくて、軒下に座り込んでぼーっとしてると、またドアが開いた。


「入って」


 美少女だ! フードをはずしてる! さらさらの銀髪、宝石のような赤い瞳、人間離れしたきれいな顔は、本当にオレの好みどストライクだ。


「や、オレ……」


「お金なら、心配しないで。何も食べてないんでしょう?」


「……うん」


 美少女は他のひと達みたいにオレを変な目で見たりせず、にっこりほほ笑みかけてくれた。


「何も食べないと、人間は死んでしまうから」


 たしかにそうなんだけど。変な言い方するなあ。


 彼女が金を払ってくれたからか、女将がオレから取り上げた魚料理を運んできてくれた。新しいの出せよ。


「君は食べないの?」


「私は……」


 言いにくそうに口ごもって、そっと手袋をはずした。指の関節が、人間じゃない。機械のような、人形のような。


「義手……?」


 彼女は悲しそうにほほ笑んだまま、首を振った。まさか、信じられない。


「人形なの」


 オレはまじまじと彼女の顔を見た。ふっくらやわらかそうな頬はほんのりピンクで、かわいらしいくちびるも、ちょっと潤んだ瞳も、どう見たって人間じゃないか。きれいな声、手の温も……彼女はその手で、オレの手に触れた。冷たい。


「はは、信じられないな。どうして人形が動いてるの? どういう仕組み?」


「……創造主マスターは科学者でありながら、魔法も使えたの。精密な機械で作られた私に、魔法で意思を与えてくれた。少しでも、人間に近づけるように」


 なぜ、なんのためにという質問には、「わからない」とだけ答えて黙ってしまった。気まずい。


「あ、えっと、なんでオレに飯おごってくれるの? オレ、何もお礼できないよ?」


 美少女が首をかしげる仕草って、なんて可愛いんだろう。オレの下心、あ、いや、熱いまなざしには気づかず、慎重に、正確に記憶をたどる。


「ドアの前に座り込んでいるあなたの様子がおかしくて、女将さんに聞いたらお金を持っていなかったから追い出したということで、おなかがすいてるのかと思ったの」


 それは間違いじゃないけど、オレの聞きたかったことではない。オレは、何も見返りがないのに、なぜ親切にしてくれるのか、という理由が知りたかったのだ。


「……わからないわ。困ってるひとは助けてあげなさいと創造主マスターに言われていたから」


 なるほど、人形だから感情ではなく、創造主マスターってやつの指示に従うのか。


「その、創造主マスターは一緒じゃないの?」


 人形ならメンテナンスとか必要なんじゃないか? そばにいなくていいのか?


創造主マスターは……もうずいぶん昔に亡くなったわ。私は彼の意志を継いで、人間の世界を知り、心を得るために旅しているのよ」


 しまった、余計なことを聞いた。


 申し訳ない気持ちでいると、彼女はとくに悲しむでもなく淡々と打ち明けてくれた。心を手に入れるまで、まだまだ時間がかかりそうだな。


「あ、じゃあさ、オレも旅についてってもいいかな? オレ、ここのことが何もわからなくて、金も使えなくて、困ってる(・・・・)んだ」


 うん、なかなか卑怯だぞ、オレ。予想通り彼女はじっと考えたあと、小さくうなずいた。


「この街はよそ者に警戒心が強いから、明日にでも別の街に移動するけど……それでもいいのなら……」


 全然オッケー、君とならどこまでも! ああ、もうオレ、目覚めなくていいや。ずっとこの世界で暮らすよ。


「ありがとう! オレ、林 光輝。君の名前は?」


「ブランカ……空白ブランカよ。よろしくね、ハヤ」


 あ、しまった。できれば名前で呼んでほしかったな……



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