#26 案内された謁見の間で、オレは言葉をなくした!
城門の中はケンロ=クエンやオーミとは全然規模の違う、大都会って感じだった。建物の雰囲気はやっぱり中世ヨーロッパ風なんだけど、どの建物もお城かって思うくらい大きくて、でも機械仕掛けの車なんかも走っててすごい不思議。
夜になっても通りにはたくさんのひとが行き来してて、ちょっと元の世界を思い出す。
オレ達と同乗した王様は、プレーナを膝に乗せて髪を撫でたり頬ずりしたり……プレーナが暴れると光の輪を増やしてがっちり拘束してしまった。やばい、絶対に変態だ。
「ふふ、照れちゃって。かわいいなあ」
どう見たって嫌がってるだろ。目のやり場に困るくらいのイチャイチャぶりで(一方的だけど)、オレとブランカは静かにうつむいていた。
「君たち、そんなに緊張しないで。詳しいことは城に帰ってから話すけど、私は本当に君たちの敵ではないから」
その笑顔が胡散臭い。まだ若く見えるけど、不老不死の研究とかしてるなら外見じゃわからないしね。
ふと、ブランカが耳元でささやいた。
「少し……ハヤに似ているわね」
前言撤回、人形にも人間の女の子と同じくらいの愛を注げる、素晴らしい王様だ。
お城につくとオレ達はまず、きれいな服に着替えさせられた。王様の客だからってことだけど、白タイツだけは断固拒否。着慣れない派手なロングコートにフリルたっぷりのブラウス、タイツは免れたけどけっこうピチッとしたパンツにブーツ……落ち着かない。
案内された謁見の間で、オレは言葉をなくした。
ブランカとプレーナが……おそろいのドレスを着てる!
きれいな銀髪をアップにして、華奢なティアラを乗せて、上品な薄紫色のドレス。うああああ、なんてきれいなんだ! ブランカの戸惑った顔も、プレーナの相変わらず勝気な顔も、いい!
「ちょっと、オシャ・レイ! なんでこんな動きにくい服着なきゃいけないのよ!」
「こら、プレーナ。もう私は国王なんだから、ちゃんと陛下って呼びなさい」
「……へーか」
あれ、もしかしてプレーナと王様って、本当は仲がいいのか? なんか素直じゃん。
「ハヤ……変じゃないかしら……?」
「え? すごいきれいだよ。似合ってる。悔しいなあ、いいセンスしてる」
「私は、ハヤが選んでくれた服の方が好きよ」
く……ブランカ、愛してる!
さっさと解放してもらって、早く二人きりでデートしたい。
「えっと、ハヤ君とブランカちゃん、改めてお礼を言うよ。プレーナを見つけてくれてありがとう。彼女は私の大切な……ん、なんていうか、恋人って言っちゃっていいかなあ?」
プレーナはぷんとそっぽ向き、大臣とか兵士とかは頭抱えてる。
「もう聞いたかな? 彼女は私の姉のために作られたと。残念ながら、目的は果たされなかったけれど、私はそれで良かったと思ってる。人間の心を人形に移して延命だなんて……」
オレとブランカは思わず顔を見合わせた。なんか、想像していたのと違う。この王様が、プレーナを作らせたんじゃなかったのか。
「私は当時、まだ幼くてね。姉の死は悲しかったけれど、これでプレーナは自由になって、一緒に遊べると思っていたんだ。なのに、研究所で事故が起きて、それっきりプレーナは行方不明で。無事を信じて探し続けていた」
「それならそうと言ってくれたらいいのに……」
あんな強引な捕まえ方したら、誰だって警戒するよ。
「だって、プレーナが力持ちなのは、私が一番よく知っているから」
とにかく、敵じゃないとわかってホッとした。なんか、急に疲れと眠気が……ああ、腹も減ってるな。察した王様は、豪華な夕食をご馳走してくれた。




