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#20 動画とかで見たことがある、絶対に良い子はマネしちゃいけないやつ!

 ヘアスプレーとライター、これは火の魔物には使えない。缶詰とパンは明日のために残しておかなきゃだし、あとはタオルとケータイとイヤフォンと……ちょ、何か使えるものは……あった! これだ。動画とかで見たことがある、絶対に良い子はマネしちゃいけないやつ!


 手のひらにすっぽり収まる容器から白いタブレットをざらっと出して、口の中に放り込んだ。鼻の奥がスースーする。続けてオレは水の瓶を二本取り出し、全部飲み干した。そう、水とはいってもミネラルウォーターじゃない、外国かよここはって内心つっこんでたんだ、ちょっとレモン風味の炭酸水!


 心地よい爽快感が喉を過ぎ、胃に落ちる。


 ブランカは……ああ、プレーナを引きつけてくれてる。ごめんね、危ない方を任せて。


 ……よく似た美少女がにらみ合い、それぞれの人形(武器)を構える姿はなかなかの迫力で。って、プレーナも人形を扱うのか。


 なんて思ったのは一瞬で、腹の底から怒号がこみ上げる。オレの身体はがくがくと震え、そして弾けるように吹っ飛び、ついに……




 ぼええええええぇぇぇぇえぇぇええぇ……




 マーライオンのごとく強く、激しく、噴き出す水が消火していく。すごい威力だ。




 ……ええぇぇえぇええぇぇうぇえぇぇ……




 ちょ、おかしい、おかしいって! なんであんな小さな瓶二本分の水が、こんな大量になるの! 誰か止めてっ!


 ブランカとプレーナは驚いて、戦いが中断している。そんな目で見ないで。


「な……なんなの、汚いわねっ!」


 ちくしょう、プレーナめ。おまえが火事なんか起こすからだぞ!


 うう、内臓が全部出る……もうダメ……でも、だいぶ火は小さくなって……ああ、よかっ……た……


「ハヤ! しっかりして! なんて無茶な魔法を……」


 ありがとう、ブランカ。こんなアホな技を、いいように言ってくれて。大丈夫だよと言おうとしたけど、大きな空気の塊が出ただけだった。


 薄れゆく意識の中で、ブランカの一撃がプレーナに大ダメージを与えたのが見えた。プレーナは顔のあたりを押さえて何か叫び、どうやら撤退したみたい。すごいな、ブランカ……女の子の(それも自分とそっくりな)顔を攻撃するなんて……


「ハヤ! ハヤ! どうしよう……お願い、みんな、ハヤを助けて……!」


 ブランカの声を聞きつけた勇者の末裔が、おずおずと様子をうかがった。すでに火は消し止められ、魔物の姿はない。


「すごい、これ、彼が……?」


「そうよ。お願い、中に運ぶのを手伝って」


 勇者の末裔はそれくらいならと背負い、ソファーに寝かせる。大魔法使いの弟子が簡単な治癒魔法をかけると、少し呼吸が落ち着いた。


「王都につくまで私がみんなを守るから、どうかハヤを……」


「うん、任せて。君も無理しないで」


「ありがとう」


 またプレーナが戻ってくるかもしれない。不安と緊張で眠れない夜になった。オレは気絶してたけど。



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