1/33
プロローグ
都会から郊外へ異動して半年、噂には聞いていたが、正直なめていた。まさか、雪国の冬がこんなに恐ろしいなんて。吹き付ける雪で視界はゼロ、路面は完全に凍りつき、さらにその上にふんわり積もっている。
こわい、こわい!
ハンドルを握りしめる手に力が入る。どんなに目を凝らしても、全く先が見えない、まるでオレの人生みたいだぜ! なんて考えてる場合じゃない。やっと覚えたばかりの通勤経路、まだ感覚だけでカーブを切れるほどじゃないぞ。
おまけにブレーキ踏んじゃいけないこの状況で、いかに生還するか……集中しろ、オレ。とにかくここを乗り切れば、暖かい部屋でお気に入りの曲を聴きながらのんびりゲームして……へへ、昨日、やっとレアカード引いたんだよな。あれをリーダーにして、デッキは……
オレは、バカだ。
集中しろと自分に言い聞かせた矢先に、ゲームのことを考えてるんだからな!
後悔した時には心地よい浮遊感とともに、オレの愛車は空を飛んでいた……