君が生きる意味
分割しております乁( ˙ ω˙乁)
「あなたたち、大丈夫!?」
霊障士が駆けつけてきたのは、そのすぐ後のことだった。
誰が通報したのかわからないが、今の状況ではものすごくありがたいが予断を許さない状況なので、とくに尋ねることはなかった。
菜奈は手早く現在の状況を可能なかぎり細かく早口で説明して、幸いにもすぐに理解してくれた霊障士たちが急いで一覇と菜奈の応急手当を始める。
彼女たちは意識のない一覇を優先して、てきぱきと手当にあたった。
だが……
最初に声をかけてくれた女性の霊障士が、一覇を診てから悲愴の表情でうなだれる。
「この子……もうだめね……」
「そ、そんな……一覇は……一覇はどうなるの!?」
菜奈の声に、霊障士はただ首を横に振った。
一覇は未熟ゆえに霊子を一度で大量に失ったショックと菜奈に取り憑かれた影響で、死の淵に立たされている。
霊子欠乏症だ。
霊障士の女性は、とても難しい顔で呟いた。
「せめて彼と同じ霊子があれば……」
霊子欠乏症は、実のところそこまで難しい症状ではない。正しく処置すれば、必ず回復する。
しかし。
この場にいる霊障士の中で、一覇に輸液する必要のある金の霊子を持ち合わせている者はいなかった。
金霊子自体、別に珍しいものではない。
通常の戦闘であれば、五つの性質それぞれを持つ霊障士のグループを応援に寄越すのだが、今日はあいにく非番の霊障士が多く、間に合わせのチームを編成して来たのだ。
運が悪かったとしか言いようがない。
一覇を救うには、一覇の霊子と同じものを用意しないといけない。……一覇と、同じもの。
菜奈は自然と、視線が自らの手のひらに集中したことを感じる。
思いついた。一覇を救える、その手段。
————まだ、間に合うはず……っ!
「……彼の霊子なら、ここにあります」
「なんですって?」
菜奈の言葉に、霊障士は目を剥いた。
「わたしはさっきまで彼に憑いていたから、多少なりともまだ持っているはずです」
幽霊は取り憑いた原子体の、霊子を奪って分解し、自分のものにする。
今の菜奈にはきっと、自分が元々持っていた火の霊子に、わずかながら分解されきっていない一覇の金の霊子が含まれているはずだ。
霊障士は急いで、簡易の検査キットで菜奈の霊子を調べる。
結果が出て仲間と目を見はって、すぐに霊子用輸液チューブを用意し、専用の機械にそれぞれの先端を繋いだ。
それの片方を菜奈の右腕に刺し、もう片方を寝かせた一覇の左腕に刺そうとして……手を止めた。
「でも……いいの?もちろん彼は助かるけど、あなたは……」
霊子を奪われた霊子体は、死ぬ。
こんな結果、1+1より簡単にわかることだ。
だけど
「いいんです……わたしは十分“生きた”から」
花のような笑顔で、菜奈は言い切った。
————君には大切なことを教わった。大切なものをもらった。
だから……だから今度は、わたしがあげる番だよ、一覇。
《愛》を知ることができた。《恋》をすることができた。
この気持ちは、永遠の宝物だ。
眠っている一覇の無防備な手を、自分の手で握りしめる。
とくんとくんと、確かな心臓の鼓動と熱を感じた。
「絶対、絶対に死なせないよ。君だけは……」
まだ続くよ!!




