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まさかのアップしてなかった
先月にはできていて、アップしてなかった内容薄い話です
途中、念のための資金調達、つまり何体かのモンスター退治した後、ヤルセという街に到着する。
街の露店を見て回り、市場価格なるものを調べることにした一行は、一通り見終わったあと、黙って裏通りに入る。
「見た?」
「見た」
「見たわ」
「見たな」
「どうする?」
「どうもしない」
「どうもしないわ」
「どうもしないな」
「ふむ」
「まあ、いいじゃない。物価が十分の一だったら、今のままでも十分に暮らせるわ」
「……取り合えず、」
「「「取り合えず?」」」
「先に宿を取ろう」
「ふむ」
「あら、宿のこと忘れてたわ」
「同じく」
「同じく。どこがいいか聞いてこようよ」
「どこで?」
「…冒険者ギルド?」
「そうだな。妥当だ」
結論からいうと、昔に比べ今の物価は下がっているらしい。
それに加え、今までなかった、鉄貨というものが現れたらしい。
銅貨の百分の一の価値があるそうだ。
閑話休題。
資金に関しては何ら問題なくなったのでー勿論貨幣は同じものだと確認済み。どうやら昔の貨幣の方が信用度が高いらしいー少しばかり値の張る宿を一人一部屋取った。
連れで一人一部屋なのが余程珍しいのか、宿の者は訝しげな表情を見せたが、母のキラキラな笑顔と話術で今ではすっかり仲良しになっている。
「ふふっ、素敵ねー」
自分の部屋を見て回った四人は、誰となしにディガンマの部屋に集まった。
中々雰囲気の良い宿に、ラムダやファイは満足そうに笑う。
レンガ製の壁に、青や白、クリーム色、ベージュなどの落ち着いた色合いの布がかかっている。
天蓋付きベッドも深い青や藍色をしていて、女性陣、特にファイの好みにあっていた。
ベッドに腰を下ろしたり、イスに座ったりしながらリラックスする。
「では、第五回家族会議をはじめます。議題は『今後の予定』です」
「はいはーいっエルフの森に行きたい!」
「もーファイちゃんったら、せっかちねぇ」
「挙手、指名は基本だろ」
「ごめーん」
「ズズ…」
ラムダの号令で始まり、一連の流れを何時も通りだと思いながら、ディガンマは緑茶を啜る。
茶葉をアイテムボックスに入れておいて良かったと、心の底から思った。
落ち着く。
全員からの視線を受け、仕方なく口を開く。
「ファイ」
「はーいっ。えっとね、さっき冒険者ギルドの掲示板に
『エルフの森―ソングラードの調査
ランクC:パーティー
報酬:情報により変動
1200B〜
期限:依頼受理より三週間
それを越える場合死亡判定を下す
契約違反は罰金2000B 』
ってあったんだよね。と言うわけで行こう!」
「ん?」
「いや、繋がらねーよ」
「……………ファイ、理由を」
ディガンマは気づいたようだが、考えるのが苦手な二人は首を振り、理解できないとの意志表示をする。
仕方ないなぁと呟いて、ファイは誇らしげに笑う。
「エルフなら、何かしらの情報を持ってるはずよ。それに、エルフの森に調査を向かわせるということは、エルフの森に異変があったこと間違いなし。あそこに異変が起きるだなんてよっぽどのことだよ。なんせ、900年の間、名称も位置も殆ど変わらずあるんだから。エルフの、森に対する執念は深い。一寸のことらなエルフたちで片してる」
ひょいっと肩を竦めたファイは、お茶を口に含み続ける。
「もしかしたら、エルフはもういないかもね」
「それは、」
「逃げたんじゃなくて、滅んだ。そう考えるのが妥当だな」
息を呑んだラムダを宥めるように、ピトリとファイがくっつく。
ラムダの真っ青な顔と、困ったファイの顔がかち合う。
「まだそう決まった訳じゃないよ」
「うん、そうね。でも可能性は高いのでしょう?」
「まあ、ね。大体、エルフがいるのなら、エルフの森についてギルドが情報収集させることがおかしい。ギルドはエルフの森と連絡を取り合ってるはずだしね。さっき言ったエルフの情報っていうのは、エルフの持ってる本や日記に書いてあること。エルフ自身からは無理って分かってるし、ギルドからそう簡単に情報は得られないとも思ってる」
「おい、100%滅んだって思ってるって言ってるぞお前」
「100%じゃないよ、99%だよ」
イスに腰掛けていたディガンマが、足を組み替えながら首を傾げる。
「多数決だ。行くか否か」
一瞬の沈黙の後。
「行くだろ」
「行きます」
「行くよ、提案者だし」
「………決定か」
やっと落ち着いたと思ったのに、と残念に思わなくもない。
背もたれに首を預け、息を吐き、一同に顔を戻す。
「準備だ」
待ってましたとばかりに、一斉に動き出した。