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DiffErenCeScapE  作者: 有紗
第1章
7/11

2-4

明けましておめでとうございます

今年も何卒よろしくお願いします

 夜になり、家の崩壊を懸念して外にテントを張る。

 ディガンマが持っていたイベントの賞品で、外見はただの小さいテントで、中は豪華なベッド付きの空間というちぐはぐな構造になっている。

「ああっ!」

 ラムダの悲鳴に全員が反応する。

 寝る準備をし、ディガンマが周りに警報結界のスキルを張り巡らし始めた時だ。

「どうした」

 結界を張り終えたディガンマは、手を頬に添え、ムンクの叫びのようになっているラムダに近寄る。

 寝床の準備をしていた子供二人は、父がいるから大丈夫と作業に戻る。

「ディガンマ…私、凄く大変なこと思い出しちゃった…」

「?どうした」

「もしかして、もう新しいスキルを手に入れることができないんじゃあ…」

 青ざめたラムダはガッチリとディガンマの腕に縋り呆然と呟く。

 住人からのクエストの中に、スキルクエストが紛れ込んでいるのだが、そのクエストの内容を知るものはもう居ない。

 と言うことは。

「「ああっ!!」」

 ラムダの言葉に反応したのは子供二人で、シーツや枕を床に落とし、ムンクの叫びを演じている。

 ただ一人冷静なディガンマは、落ちたシーツや枕を拾い上げ、叩いてベッドに放り投げる。

「…準備中断。話がある」

 そう言うと、絨毯の上に胡座をかく。

 三人は首をかしげながらも、大人しく座る。

 ディガンマのことだ、無駄な話しはしないと分かっているからだ。


「実は、9月のバージョンアップから、新しい設定がされることになっていた。臨界者クリティカラーと呼ばれる一人のプレイヤーが、新しいスキルを生み出すスキルを手に入れたことにして、一回だけオリジナルのスキルを作るというクエストだ。プレイヤーたちは国民の話を聞いて回り、かなり遠回りをしてから、その臨界者にたどり着くことになる」

 珍しく饒舌なディガンマは、ポカンとしているスティグマやラムダをスルーして、目を瞬かせるファイに視線を向ける。

 何となく、察したらしい。

 この中で頭の回転が速いのは、明らかにファイだった。

「その臨界者がお父さん?」

「ああ」

「へ?」

「マジ?」

 再び、ファイは眉を寄せながら、恐る恐る口を開くと。

「お父さんは…運営陣?」

「まあ、遠からず」

「ええっ!?」

「はぁ!?」

 全く予想していなかったラムダとスティグマは、ファイとディガンマの顔を交互に見る。

 どうやら二人の話は本当らしい。

「え、まて、ちょーっとまて。父さんってマジで運営陣?」

「そうだな…直接的な製作者ではない。M.P.の副社長をしている」

「「は…」」

 あっさりと言い切ったディガンマに、例の二人は唖然とする。

 M.P.はスポーツゲームやレーシングゲーム、アドベンチャーなどを多く取り扱うオンラインゲーム会社で、RPGであるDiffErenCeScapEはM.P.の中でも変わり種扱いである。

 ファイといえば、

「M.P.の、えーっと、槇本まきもと弘一こういち副社長?」

「ああ、よく覚えていたな」

「母さんが、カッコいいわねーって言ってたから」

「…そうか」

 複雑な顔をしたディガンマをじろじろ眺め、

「そう言われてみれば、確かに槇本副社長だわ。余りいじってないのね」

 と溢した。

 衝撃から帰ってきたラムダは、頬を赤くさせ、うっとりとディガンマを見つめる。

「仕事もできて優しくて強いなんて…ステキ…」

 違う世界に翔んでいるラムダは、全員が無言で放っておく。

「はー…それで臨界者に選ばれたってことか」

「まあ、色々あったんだがな。唯一全てのスキルを集めていたことが大きいらしい」

「なるほどねー。じゃあ、お父さんって臨界者で完成者コンプリショナーなんだ」

 新しくスキルを作れる臨界者と全てのスキルを手に入れた完成者。

 完成者は、既存のスキルクエストを別の形で他のプレイヤーに提示できる権限を与えられている。

 月や曜日、天気などによって、発生するスキルクエストは変わってくる。

 従って、今すぐにでも欲しいスキルがある者にとっては有難い設定だったが、如何せん完成者は自己公表である。

 そして、唯一の完成者は周りに公言していない。

 それ故か、完成者は未だいないものだという認識が強い。

「よく完成したね」

「スキルクエストの攻略法を知っていたからな」

「いやいや、知ってても簡単にできないだろ、あれは」

「そうだな、部下たちもいつも燃えていた。如何に難しいクエストを作るかで、徹夜で会議をよくしていた」

 少しは手加減しろよ、と思う。

 ファイとスティグマが渋い顔をする隣で、ラムダが素敵ね、と笑った。

「取り合えず、これでスキルの心配は無くなったね。良かった良かった」

「ふふっそうね、安心だわ」

 一先ずは、だが。

 楽しそうにベッドメイキングを始めた女性二人を、男性二人は肩をすくめた。



造語ばっかだ…

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