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お久しぶりです。
お待たせいたしました。
夏休みももう終わろうかという頃。
ファイとスティグマは、共に依頼をこなすことになったディガンマとラムダを待っていた。
この四人、全員ギリシャ文字の読み方を名前につけていたので、グリィーク・ファミリーと呼ばれている。
ディガンマ・カイは寡黙な32歳で、やることはワイルドで、思わずアニキと呼びたくなるような男前さを持っている。
体術を主に使い、仙術の達人とも言われている。
しかし、あまり自分のことを話さない。
仕事をしているのかすら誰も知らない。
知られていることと言えば友人に引きずられてゲームを始め、かなりの古参だということくらいだ。
因みに、その友人は一年前に海外へ単身赴任を境に、家にゲームを置いていかざるを得ない状況になったらしい。
どんな状況だ。
ラムダ・オミクロンはOL25歳。
明るく優しい聖母なような女性で、生産や回復魔法が得意だ。
噂ではファンクラブがあるという。
ただ一つ欠点があるとすれば、ディガンマ以外の前ではさらりと禁句というかR指定が付きそうなことも言ったりすることだ。
初心者の頃ディガンマに助けられてから、脇目も振らず猛アタック。
彼の前では乙女になる。
但しディガンマがどう思っているかは、やはり謎な状況にある。
「すまない、遅れた」
「んーん、気にしないで、お父さん。私とスティーが早く来すぎちゃっただけだから」
因みに、グリィーク・ファミリーの家族構成は父母兄妹である。
スティグマとファイの間でどちらが上かのガチバトルがあったが、珍しくラムダが怒り勝負は中断、誕生日順でスティグマが兄になった。
「ラムダがまだか」
珍しいな、と続けたディガンマに、スティグマはニヤリと笑う。
「まー、母さんはいつも早いもんなー」
理由はディガンマを待たせたくないから。
『ごめーん、まったー?』
『ううん、全然』
も理想らしいが、やはり待たせるのは嫌らしい。
しばらくの間、三人でーディガンマは一言も話さずにー談笑していた。
「どうしたのかな…お母さん遅いね」
いつまでたってもやってこないラムダに、ファイは不安そうな顔をし、辺りを見回す。
ディガンマが眉間に眉を寄せながら、
「おかしい」
と呟く。
「?父さん?」
「どうしたの?」
二対の目がディガンマを見る。
「ラムダからの応答がない」
いつの間にやらラムダへスキルで話しかけていたらしいディガンマに続き、
「ホントだ」
「ログインは…してるよな」
メールを送ろうとして失敗したファイと、グループメンバー画面でラムダのログインを確認したスティグマは、少々困惑顔でお互いを見る。
ディガンマは眉間にシワを寄せたまま、目を忙しく動かす。
「ログインしてなくても、メールって届くよね」
「エラーで無い限りな。メール届かなかったのかよ」
「うん…グループトークも無理だし…グループチャットは?」
「…や、応答なし。どうなってんだ?」
慌てる二人に、
「二人とも落ち着け。一先ず、ラムダと合流しよう」
冷静に対処するディガンマに、ハッとした二人は、
「そ、そうだよ!この街にいるのは間違いよね」
「だ、だな。うし、行くぞ」
と駆け出す。
「…………だから落ち着け」