第4話
しばらく夜空を飛び続けてサンタクロースとレッドは
小さくて静かに眠る街にたどり着いた。
そこには、赤い屋根を持った一軒の小さな家があった。
「見つけたよ、サンタクロース。夢を持った子供の住む家さ」
レッドは、その家の2階の窓の前で音がしない様にそりを停めた。
「10歳の女の子がいる。いつか有名な歌手になりたいって思っているんだよ」
レッドは鼻をくんくんと鳴らして言った。
「じゃぁ、弾むようなテンポのある美しい声をあげよう」
サンタクロースはそりから身を乗り出した。眉間にかかる黒い前髪を払い
口元を引き締めた頬にはやや赤みが戻っていた。
「どんな女の子なんだろう。やっと夢を持つ子を見つけたね。すばらしい」
サンタクロースは気分よくそう言った。
「綺麗な子だから見惚れないようにね」
サンタクロースは、そう言うレッドをおいて家の窓を通り抜けて中に入った。
この時、サンタクロースはいつものように気づかれないように入ったのだが、
子供がいつも寝ているとは限らない。
眠っているように見えて、実は起きているときもあるし、サンタクロースがうっかり音をたてて起こしてしまう事もある。
サンタクロースが、その不思議な力で美しい声を女の子に与えたとき、偶然にもその子が目を覚ました。