閑話。害虫駆除は必須スキルだからね。
時間的には一話目と二話目の間くらい。のライト君。
「おまえ!ずるいぞ!」
「リィに害虫を近づけるわけないでしょ」
突然降ってきた言葉に驚くことなく、ライトは飄々(ひょうひょう)と返答しながら、声のした方に視線を向けた。
気配を消して近付いたならともかく、駄々漏れの気配で近寄って来られたのだから、驚く方が難しい。
年の頃、4、5才…縮んだリィナと似たような年格好の少年が、苛立った表情でライトを睨んでいた。
柔らかそうな白銀の髪と、幼児らしいぷくぷくとしたまぁるいすべらかな頬をもった幼児に近い少年の苛立ちの表情は、怖いどころか、思わず頬を緩めてしまいそうな愛らしさではあった。
けれども、それらは全て半透明で、肉を纏わないその姿は空間に映し出された精巧な像のようだった。
ヒトに似て非なる存在だと、改めて実感する。
リィナの悲鳴が聞こえた瞬間、ライトは彼女の周辺にあった気配を全て吹き飛ばした。
ついでに、吹き飛ばした存在が近付けないように対策済みでもある。
お互い視界には入っていなかったが、シーリンは誰がやったか理解したのでこうやって抗議しに来たのだろう。
…いや。このシーリンが誰がやったか感知出来るか、と言われると微妙なものがある。他のシーリンから事前に聞いていた、のかも知れないな、とライトはかなり失礼な事を考えながらシーリンに向き合っていた。
「害虫じゃない!お前なんかに僕は負けないんだからな!」
「吹き飛ばされて言う台詞じゃないよね」
「うぅうるさい!うるさい!ちょっと油断しただけだ!」
「うーん…コドモに付き合ってる暇はちょっとないんだよね、僕も」
悠然としたライトの様子に、シーリンは悔し紛れにわめき散らすが、ライトは歯牙にもかけず呆れた声で返した。
それに更に激昂したシーリンは、ライトに指を突きつけながら、叫んだ。
「お、お前が出来るのは僕を吹き飛ばすだけだけど、僕はお前を殺せるんだからな!僕の方が強いんだ!」
「また吹き飛ばされたいんだね」
気付かなくてごめんね、とにっこりと笑いながら、吹き飛ばすべく力を右手に込めた。
条件反射のようにシーリンが身を竦めた。
シーリンの瞳が涙目になっているのも見てとれる。
「教えておいてあげるよ。僕はシーリンを消せる。存在を塵一つ残さず、ね」
「ウソだ!ただのヒトに消せる訳がな……え?なんでお前、そのけ…」
何かに気付いたように、驚愕に目を見開いたまま何かを言いかけたシーリンを容赦なく吹き飛ばして、ライトは小さく口元だけで笑いながらぽつり、と呟いた。
「出来るんだよ、僕は」