閑話。文目(あやめ)も分かず…
(意)ものの道理も分からない。判断がつかない。
思い出したのは、つい最近だった。
構われる事に、反発を覚えるようになった頃だった。
それまでは何を思うこともなかった。
気付いたら、周囲のヒトが入れ替わっていることも。
他人との接触の少なさも。
…傍に、居ることも。
ふと気がついた。ある日突然。
彼が自分を『管理』していることに。
解っている。
あれは紛れもない愛情。純粋な、親愛。
愛しているからこその、執着。
いつの間にか消えていた彼らは、自分にとって害になる、と判断されたが故に遠ざけられた事も。
それでも。
それ、でも。
『溺愛』でも『過保護』でもなく、『管理』だと。
そう思った。
大好きで大切で、愛しい、存在。けれど同じくらい大嫌い。
それ以来素直に甘えられなくなった。
離れて欲しいのも本当。
しつこく構われるのが鬱陶しいのも本当。
構われる事を嬉しいと思うのも、本当。
矛盾した感情に蓋をして、見ない振りするのに精一杯だったのに。
思い出して、しまった。
昔の記憶が、殆ど無い事に。
そして辛うじてある記憶の中に、『兄』の存在なんて欠片も無い事に。
…ドウシテ?
『兄』なんていない、けれども。
アレは紛れもなく『兄』だと、識っている自分がいる。
この器に根差す繋がりでなくてもアレは『兄』だと識っている。
ああ、けれど。
どうしてだろう?
どうしてそう思うのだろう?
私は…私は誰、なんだろう?