第○種接近遭遇!?う、ウラギリモノ~
期間が開いてしまい申し訳ございません。
寛大なココロで読んで頂けますと幸いですm(_ _)m
今回は三話同時投稿します。
これが同時投稿一個目です。
ビーは色々規格外だ、と思う。
言動もヒトのそれと違和感がない。
確かに物理的には同一空間に存在しているが、しかし。
シーリンとヒトは別の世界に生きているというのに。
シーリンとは、ヒトの生み出した過剰なエネルギーを取り込むモノ。
精神だけを纏い、空間の歪みを解す役割を与えられたモノ。
かのケモノによってズタズタにされた空間は、再生しきらなかった。
というより、彼、がそこまでの手間をかけなかった、といった方が正しい。
彼女にしか意識を向けない彼は、彼女に影響しない事には力を割かなかった、が放置したら結局は彼女の害になる。
だが、『今』彼女に影響ないことに意識を向ける気などさっぱりないので役割を押し付けるモノを造り出した。
それが、シーリンと、ヒト。
結局は彼女…女神に影響するのだからめんどくさがらずに先に対処すれば後々楽かもしれないのに、と思うのはさて措き。
造り出されたモノ達の役割は、煎じ詰める所、エネルギー供給と空間の安定作業だ。
その一環としてモノ達は片や魔術を使い、片や力…魔力を振るう。
それにより、彼女は物体を操作するのだ。
更に恐るべきは、肉身が無いくせに感触を伝えられる。
魔力を膜のように張り巡らせているだけだが、膜の感触を弄れるシーリンは他に居ない。
改めて考えると恐るべき力だと思う。
…あぁ、でもこの突拍子のない傍若無人さはビーがヒトでないからこそ…?でもヒトでもこの位の傍若無人はいるし…シスコン(ばか)とかシスコン(ばか)とかシスコン(ばか)とか。
扉から上半身を生やしたビーを仰ぎ見ながら、リィナは現実逃避ぎみに思考を空転させる。
そんな呆然とした少女の様子に、ビーは悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべて、口を開いた。
「ダレが傍若無人なのかしら?うっかり発言は相変わらずね」
「…ッ!?」
驚きで声もでないリィナの様子に、愉しそうな笑みを浮かべながら、ビーは扉を完全に潜り抜けてリィナの目の前に立った。そして、更にリィナに追い討ちをかけようと口を開いた、その時。
扉が後ろにぐいっと開き、支えを失ったリィナはころり、と後ろにひっくり返った。
何の心構えもなかったリィナは、ぶつかるっ!と思い、とっさに体を強張らせ、目を固く瞑って衝撃を覚悟したが、背中に小さな柔らかい衝撃を受けただけだった。
「すまん。大丈夫か?」
「……ッ!?」
耳元で聞こえた声に驚いて目を開けて見上げると、フォルテが相変わらずの無表情でリィナを支えながら見下ろしていた。
その瞳には、親しい者には解る位微かだが、申し訳なさそうな色が浮かんでいた。
「だ、大丈夫!ごめん!ありがとっ」
現状を理解したリィナは、ぱっ、とフォルテから離れると早口で謝罪とお礼を口にした。
フォルテはそれに微かに頷いて応え、視線をリィナから外して、室内に向けた。
「…話し声が聞こえたが、誰か居たのか?」
「えっ?…あっ」
フォルテの問いかけに驚いて室内に視線を戻すと、いつの間にかビーの姿が消えていた。
シーリンはリィナが一人の時にしか、現れない。
今までの関わりから十分分かっていたことだけれども、リィナは内心でビーに盛大に文句をつけた。
気まずい状態で一人置いてくなんて~!
不自然に固まったままのリィナを訝しそうに見やりながら、フォルテは口を開いた。
「シーリンが、いたのか」
疑問型の体を取りながら、断定の響きを持ったその言葉に、リィナは若干体の力を抜いて苦笑で応えた。
態度での肯定に、フォルテは小さく頷いて返した。
「ライトに聞いてるか?」
「何を?」
唐突にそんな問いかけを投げたフォルテに不思議そうな視線を向けてリィナは問い返した。
「『妹離れ』しないのか、と。そう言ったんだ」
「…どうして?」
どうして今頃そんなことを言ったの?
どうしてそれを告げるの?
どうして今更それを気にしたの?
幾つもの疑問を凝縮して問いかけたリィナに、フォルテは珍しく誰にでも分かる位大きく顔に驚きの色を浮かべて口を開いた。
「流石に兄妹、といった所か」
「なにそれ」
フォルテの言葉に即座に顔をしかめてリィナが噛みついた。
フォルテは苦笑一つでそんなリィナをいなした。
「聞いてないようだな。…まぁ、話さないだろうが、な」
「話す訳ないじゃない。で、どうして?」
「シーリン」
「…ふうん」
納得した様子のリィナに、フォルテはやはり兄妹、と内心で呟いた、が、リィナの一言に先程の比ではない位、表情を大きく変えた。
「ね。ライトと私、兄妹じゃないんだよ、って言ったら…信じる?」
「はぁ?」
その口から、彼らしくない間抜けな声が、漏れた。