小さな子の正体
「皆、僕と遊んでくれるの…?」
小さな子は、ゆらりゆらりと飛んでいる
「悪いが、その人形になった奴らを返してくれないか?」
「嫌だ」
「ならば…、力ずくだな」
鬼怒が攻撃態勢に入る
「どうして、僕の邪魔をするの…?」
「遊びたいだけなのに」
「人形を返してくれれば、幾らでも遊んでやる」
「嫌だ!コレは僕の人形だ!!」
「…仕方ないな」
ガァン!!
鬼怒のハンマ-が、小さな子に直撃する
「何するの…?」
「!!」
バチィィィッィィ!!
鬼怒の体に電流が流れる
「グゥゥ…!!」
「鬼怒さん!!」
バチッバチッ!!
鬼怒の体から、電撃がほとばしる
「クソ…!体が痺れたか…」
「俺が行きます!!」
日本刀を構える竜山
「止めろ!竜山!!」
「何でですか!?」
「そいつには、勝てない」
「…!?」
パチパチ
メタル達が、鬼怒の背後から歩いてくる
水無月、骸瀧も一緒だ
「その通り!よく分かったな!!鬼怒」
「アンタが仕組んだ事だろ…?コレは」
「大抵の奴は気が付いたみたいだな」
「この子は、悪い子じゃない」
「簡単に言うと、幽霊だな」
「…!?」
秋雨達がざわめく
「ココは、知っての通りWG学園の施設だった…」
「移転してから、廃校となったが…」
「実験廃棄物の微量のエネルギ-が、ココに残ってたんだよ」
「そのエネルギ-は、様々な人物のエネルギ-だからな」
「それを、吸収し誕生したのが、この子だ」
「多種多様なエネルギ-を吸収してるから、全属性を備えてる」
「鬼怒のハンマ-を防いだ岩とか、電流を流した雷とか…な」
「ある意味、GLに近い」
「それで、妙な感じがしたのね…」
「でも、ツタが動いたり、皆を人形にしたりしたのは…!?」
「能力だよ」
「この子の元になったエネルギ-所持者のね」
「ま、この子が生まれるキッカケは、作った人がいるみたいだけど…」
「そうだろ?女将さん」
ヒッヒッヒ…と、不気味に笑いながら、旅館のお婆さんが歩いてくる
「小さな頃の思い出ですよ…」
「噂は、私たちが元ですからねぇ…」
「女将さん達がココに集まって、行き場を無くしたエネルギ-に姿を与えたんだ」
「ま、複数のエネルギ-が意志を持つなんて…、奇跡にも程があるだろ」
「お婆さん達が遊んでるのを見て、エネルギ-も遊びたいと思った…」
「って事ですか?」
「ま、そうなるな」
「人形になった奴らは、イトウさんが元に戻せるだろ」
「遊び相手は、お婆さんがやってくれる」
「ま、お前達には、この子をおびき出して欲しかっただけだよ」
「さて、帰ろうか」
「ココも、もうじき取り壊しになるそうだ」
「その前に、任務を終わらせておきたかったんでな…」
「ちょっと待て」
鬼怒がメタルの肩を押さえる
「つまり、バカンスと偽り、任務の手伝いをさせた…と言うことか?」
「…」
バッ!!
全力で走り出すメタル
「あ、逃げた!!」
「…帰るぞ」
「ココにいても、仕方がないだろう」
「は、はい!!」
「また、遊びにいらっしゃい…」
ヒッヒッヒと、お婆は不気味に笑っている
「お人形-!!返して-!!」
金田とガルスが人形を取り上げている
「困ったな…」
「お婆さん…、代わりの人形はありますか?」
「無いですよ…、遊具なら有りますがねぇ…」
「どうぞ」
夜風が、懐から人形を取り出す
「首狩さんに弁償しようと思っていたのですが…」
「また、買えば良いのであげます」
「ありがとう!お姉ちゃ…ん?」
その人形は、人形と言うには可愛さも何もない、むしろ丑の刻参りで使いそうな人形だった
「やっぱり、いらない」
「どうしてですか?」
「…いらない」
「…残念です」
その後、秋雨達は廃校を出て、支部へと帰った
「あの子って、どうなるんでしょうか?」
「廃校は取り壊し、あの子はお婆さんと一緒に暮らすだろう」
「…そうですか」
「そう言えば、皆さんは元に戻ったんでしょうか?」
「そのうち、戻るだろう」
「…はい」
「ん?」
「どうした?秋雨」
「何か、忘れているような…」
その後、廃校舎を彷徨う大きな人影が目撃されたそうである
その人影は「コインは何処だ…」と呟くそうだ
「…岩角の奴、何処行ったんだ?」
「さぁ?見てませんよ」
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