忍の女
「あらら、良いのかしら?」
余裕の表情の霧上
「何がだ?」
「逃がしてあげたのは、良いけど…」
「もう少しで、総督も来るのよ」
「無駄っだたんじゃない?」
「ココに居ても、同じ事だ」
「それも、そうね」
「さて…」
「情報屋さんの相手は、この子がするわ」
「よろしくお願いします」
「…いつの間に?」
「本当に、この子、忍者みたいなの」
「気づかなくて、当然ね」
「私は、逃げさせて貰うわ」
「この子、勝負の邪魔したら、ものすごく怒るのよ」
「早く行ってください」
「はい、はい」
「…逃がすと思うか?」
霧上の方を向く首狩
「良いの?」
「その子に背を見せて」
ヒュウッ
「!!」
カカッカッカ
地面に黒い刃が刺さる
「…手裏剣か」
「本当に、忍者みたいだな」
「…侮辱なさっているのですか?」
「いや、褒めてるんだよ」
「ありがとうございます」
ガッ!!
「挨拶代わりの蹴りか?」
「私の脚を、見つめないでください」
「俺は、その手の趣味はない」
「安心しました」
「ま、お二人さん!頑張ってねぇ~」
「女だからって、舐めない方が良いわよ」
「情報屋さん」
笑いながら、歩き去る霧上
「…逃がしたか」
「少し違います」
「アナタは、逃がしたのではなく、逃げて貰ったのです」
「…勘に障る言い方だ」
「申し訳ございません」
「謝ってる奴の態度とは、思えないな」
「では、無礼ついでに、もう1つ」
ボン!
「煙幕か!?」
「はい」
「くそ…!!」
シュウゥゥゥゥ…
「…もう終わりか?」
「時間の短い煙幕だな」
「特注ですので」
「…武装兵共は、何処に行った?」
「少しばかり、邪魔なので、消えて貰いました」
「…能力か?」
「その質問に答えることは出来ません」
「…直接聞いてやるよ」
「ご自由にどうぞ」
ガガガガ!!
首狩と本部役員との脚が、激しく交差する
ガッ!!
「っとぉ!!」
「直撃なさいましたか?」
「擦っただけだ」
「残念です」
「…そう言えば、名を申しておりませんでした」
「本部役員の、夜風 珠洲三だろ?」
「面白い名前だな」
「侮辱と受け取って良いですか?」
夜風が、表情を硬くする
「いや、人の事は言えない名だ」
「私も、情報屋さんの名前を聞いていませんでした」
「俺は、首狩 虚だ」
「…面白い名前とは思えません」
「アハハハ!俺の武器を見れば、解るさ」
ガッシャン
「これが、俺の武器だ」
鈍く、深く、静かに曲線を描く刃
「名前と、武器の相性がぴったりだ」
「この大鎌が俺の武器だ」
「アナタのセンスを疑います」
「疑えば良いさ」
「君の武器は、小太刀だったね」
「何でも知っていますね、情報屋さん」
「それは、褒め言葉かい?」
「そう、受け取って貰えると、嬉しいです」
「そうか」
ガシャン
首狩が構える
「勝負は一瞬だろうね」
「この武器のリ-チの違いでは…」
「距離を詰めれば、私の勝利」
「詰められなければ、敗北と察します」
「よく分かってるじゃないか」
「行きます」
シュッ
夜風が走り出す
「むぅん!!」
ギギギギギ!!
首狩の鎌が、地を激しく削る
「大きな武器というのは…」
シャッ
宙を舞う夜風
「その威力とは、裏腹に…」
「振り落とすか、振り回すことしかできない」
トン
首狩の前に、静かに着地する
「片手で振ることが可能なのは、賞賛に値しますが…」
「さようなら」
ドスッ
「ぐぅぅ…!!」
「残りの方々も、アナタと同じ目に…」
カチャッ
「…え?」
「綿と人の感触なんて、似ていたか?」
「相手の情報を、即座に分析し、利用する」
「情報屋の基本だ」
夜風の腹部に、銃が突きつけられる
「お前が刺したのは、コレだ」
首狩の手には人形が握られていた
「火衣良ちゃんに、プレゼントしようとしたら…」
「いきなり、情報が飛び込んできたからな」
「持って来てしまった…」
「後で、人形代、弁償しろよ」
「それは、不可能と推測します」
「私は、アナタに殺されますから」
「…天鹿和の裏と一緒にするな」
「…え?」
ガッ!!
「きゃぁ!!」
首狩が夜風の頭を掴む
「覗かせて貰うぞ」
「わ、私に、露出の趣味はありません!!」
「その意味じゃないよ…」
夜風 珠洲三
敗北
秋雨 紅葉
牢獄脱出より、2時間が経っていた
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