侵入者訓練
前日の花見大会も終わり、皆、通常業務に戻っていた
「大変です!!」
生徒が駆け込んできた
「暴動事件です!!」
「暴動!?」
素早く、会長が反応した
「喫茶店で、暴れています!!」
「誰!?」
「黒い目出し帽を被った男です!!」
「この学校に侵入なんて、不可能なはずよ!!」
「しかし、侵入されてます!!」
「鬼怒君、岩角君!行くわよ!!」
「解った」
「はい、はい」
会長達は出て行ってしまった
「何なんでしょうか?」
「おかしいと思わないか?秋雨君」
「何がですか?天鹿和さん」
「先刻、会長も言ってたけど、この学校のセキュリティは完璧なんだ」
「侵入どころか、この学校から脱出すら出来ないよ」
「…何ででしょうね?」
「理由は簡単よ」
「骸瀧さん」
「この学校のセキュリティシステムを把握していたら…」
「…簡単に侵入できますね」
「喫茶店の前なら、行くことはないのに…」
「どうしてですか?」
「喫茶店の従業員は誰だったかしら?」
「…メタルさん達です」
侵入者の人も、お気の毒に…
「アナタ達も援護に来なさい!!」
会長が戻ってきた
「どうしてですか!?」
「小さな女の子が人質に取られてるの!!」
「…火衣良ちゃん!!」
バッタン!!
生徒会室のドアを蹴り飛ばし、全力で喫茶店へ向かった
「火衣良ちゃん!!」
「動くな!!」
目出し帽を被った男が、火衣良ちゃんを捕らえている
店内に立てこもっているようだ
「すまない!秋雨君!!」
「金田さん!!」
「火衣良ちゃんが、店を出た瞬間、襲われたんだ!!」
「そんな…」
「…」
後ろから、凄まじい殺気が感じられる
「竜山!!」
「…その子を離せ」
「動くな!この子がどうなってもいいのか!?」
「…傷つけたら、殺す」
「…!!」
本気でキレている…
「手を出しちゃダメだ!!」
「…チッ」
「ガルスが、今、救援を呼びに行ってる!」
「メタルも、そろそろ戻ってくるはずだ!!」
「スナイパ-ライフルは、使えないんですか!?」
「店の中なんだ…」
「鬼怒君や岩角君が、奇襲をかけようとしてるけど…」
「あの侵入者、スキが全く無いんだ…」
「くそ…!!」
「怖いよぉぉ~!」
「黙れ!ガキ!!」
「火衣良ちゃん!!」
「う゛…」
「う゛ぁぁぁぁん!!」
泣き出してしまった…
「侵入者を刺激しちゃダメだ!!」
「う゛ぇえええん!!」
「泣き止みませんよ!コレじゃ…」
「?」
侵入者が、こっちをチラチラ見てくる
「何だ…?」
侵入者が、火衣良ちゃんを掴んでいた手を離した
ナイフで刺す気か!?
「火衣良ちゃん!!」
僕の声と同時に、竜山が犯人に向かって、走り出した
「やめろぉぉ!!」
竜山が日本刀を鞘から抜く
「いや、もういいや…」
「ごめん、ごめん!怖かったね」
「…へ?」
犯人は、火衣良ちゃんを離した
「中断するなよ…」
「…金田さん?」
「どういうことです?」
「ん?ああ、訓練だよ」
「訓練!?」
「この学校のセキュリティは、普通は破れるはず無いよ!」
「もう、脱いでいいぞ!」
「ぷっはぁ!」
「暑い暑い」
「…ガルスさん!?」
「アハハハ!驚いた?」
「声は、イトウさん特製の「変声スプレ-」なんだ」
「メタルさんは?」
「アイツは散歩じゃないかな?」
「会長達は…」
「生徒会室に戻ってるよ」
「…ハァ~」
一気に気が抜けた
「竜山お兄ちゃ~ん!!」
火衣良ちゃんが竜山に向かっていく
「怖かったよぉ~!」
「よしよし」
竜山も、一安心のだな…
「演技にしては、手が込みすぎじゃないですか?」
「訓練だからね」
「ここに、能力を使えば侵入できないこともない」
「そのための訓練だ」
「火衣良ちゃんには、悪い事しちゃったかな?」
「泣いてましたしね…」
「しかし、彼の殺気は驚いたね」
「ガルスさん」
「足がすくんじゃったよ」
「あはは…」
「ガッハァァァ!!」
いきなり、ガルスさんが血を吐いた
「どうしたんですか!?」
「…くぅ!!」
「大丈夫か!?ガルス!!」
「何だってんだ…!?」
「コレだと思う」
「どれ?」
そこには、「イトウ特製!変声スプレ-!!」と書かれている
「まさか…」
「99%、これの副作用だな」
「たかが、変声スプレ-ですよ!?」
「…イトウさんが作った、ね」
その後、ガルスさんは、治療委員に運ばれていった
「大丈夫ですかね?」
「さぁ、どうだろう?」
「どうだろうって…」
「昔、イトウさんの作った薬で、学園内の皆に、猫の耳が生えたことがあってね」
「どうなったんですか?」
「時間が経てば治ったよ」
「メタルは、かなり不機嫌だったけどね…」
「アハハ…」
「ま、訓練ご苦労さん」
「生徒会室に戻って、仕事に励んでね!!」
「…はい」
この学校の訓練は、行き過ぎだと思う…
戦闘訓練まで、あと1日
読んでいただきありがとうございました