顧問の試験
「…ただいま、戻りました」
「ご苦労様」
戦闘任務が終わり、生徒会室に戻ってきた
「勝ったみたいね…」
「あまり、気分は良くありませんが…」
「人を殺して気分が良い、なんて、天鹿和君の裏ぐらいしか言わないわ」
「…はい」
「今日はもう休みなさい」
「寮では、皆がアナタを心配しているわ」
「…ありがとうございます」
廃村には2人の男がいる
「中々、演技が上手いな」
「…それほどでも」
「能力を発動させるためとは言え、俺と闘わせるなんてね」
「少し荒療治だったか…」
「メタル、お前は人使いも荒いね」
「お前、手、抜いただろ」
「秋雨君を殺せ、とでも言うのかい?」
「…彼は面白い能力をしているね」
「楽しそうだな」
「俺の蹴りの威力が弱まった…」
「俺の視た能力で、間違いないな」
「彼の能力は厄介だね」
「使い方を誤れば、味方すら巻き込む」
「さらに、能力の精度を上げて貰わなきゃね…」
「今は、Cランクってトコか?」
「精度を上げれば、余裕で超えるさ」
「俺も伊達にAランクじゃないし…」
「まぁ、今回の協力、感謝するぜ」
「うん、秋雨君によろしくね」
「ああ」
寮に戻った僕を、待っていたのは…
「秋雨ぇぇぇ~!!」
「うわっ!?」
号泣しながら、水無月さんが飛びついてきた
「う゛ぇぅぅぅう゛ええ~」
「…水無月さん」
「彼女は君を心配してたんだぞ」
「…骸瀧さん」
「でも…、何で僕を?」
「それは…」
「おかえり~!!」
僕の質問に、骸瀧さんが答える前に、GLの声がした
「心配したよ!!」
「おかえり!」
「おかえりなさい!!」
竜山と火衣良ちゃんも出てきた
「…ただいま」
「戦闘任務、お疲れ様」
「…ありがとう」
水無月さんは、僕の膝の上で泣いている
「心配した…」
「…すいません」
「初戦闘任務、どうだった?」
「人を殺すって、良い気分じゃないですね」
「当たり前だ」
「…骸瀧さん」
「しかし、これからは、そんな任務も増えてくる」
「…はい」
「で、どんな奴だったんだ?」
竜山が横から入ってくる
「のほほん、とした人で、風使いだった」
「服はボロボロだった」
「…煙草、吸ってた?」
「うん」
「目の色は?」
「…確か、紫」
「…ハメられたな、秋雨」
「何が!?」
「メタルさんの依頼だろ?」
「ああ」
「あの人の依頼って時点で、おかしいと思ってた」
「だから、何が!?」
「お前が闘ったのは、ツキワさんだ」
「ツキワさん?」
「有名な人で、風の使い方が絶妙なんだ」
「でも、喉元で撃ったし…」
「あの人の能力ランクはAだぞ?」
「死体は確かめたか?」
「いや…」
「血は飛び散ってた」
「喉元に届く前に、風で相殺されてるな」
「血は演技だろ」
「仕込もう、と思えば、幾らでも仕込める」
「…安心したのか、落胆したのか」
「複雑な表情だね」
「…はい」
「そういえば、骸瀧さん」
「何?」
「先刻の質問なんですけど…」
「ああ、アレはね…」
「水無月ちゃんは、寝てる?」
「ええ…」
泣き疲れてしまったのか、寝てしまってる
「君、水無月ちゃんに、アメをあげただろう?」
「はい」
「それが嬉しかったみたいね」
「アメをあげただけで、ですか?」
「あの性格上、皆、逃げてしまうからね」
「恐れず、アメをくれた君が気に入ったみたいなんだ」
…恐れてた
「…恐れてたな」
「ん?何のこと?」
GLと火衣良ちゃんが困惑している
「ああ、君達が来る前の話だよ」
「あら、そうなの?」
「へぇ~」
「アナタも、そんな趣味が…」
GLが僕を疑いの目で見てくる
「違うよ!」
「…」
「違うの?」
いつの間にか、水無月さんが起きている
「…違わないです」
「うぅ…」
やばい…!
泣きそうだ…
「いや、ほら、あの~…」
「う゛ぇぇええん!!」
…泣いてしまった
「秋雨、覚悟した方が良い…」
竜山が怯えている
「え…?」
背後には殺気
「あの~…」
「泣かせたな…?」
「骸瀧さん?」
「泣かせたなぁ!?」
竜山の恐怖がよく解りました
読んでいただきありがとうございました