儀式
ガサガサ…
草の茂みから聖地を見張る秋雨達
「来ました!!」
聖地にヤグモ達が入ってくる
「準備を開始しろ」
黒服の男達が五芒星と三角形の頂点に紋章を置いていく
ガタン…
「あの棺桶は…?」
「何ですか?イトウさん」
「…代用品だ」
「「代用品」?」
「気にしなくて良い」
(恐らく…、青龍か)
「…?」
「出てこい」
「!!」
「居るのは解っている」
「懲りずに、また来たのか」
「…流石に解るか」
立ち上がるイトウ
「イトウさん!!」
「お前は隠れていろ」
「庇うなよ」
「炎鬼、やはり裏切っていたのか」
「元々、お前の仲間じゃない」
「俺の目的は…」
「亜門を守る事だろう?」
「…ッ!!」
「それを知っていたから、亜門を人質に取ろうとしたんだが…」
「残念ながら、見つからなくてな」
「奴は関係ないだろうが…!!」
「有るさ」
「お前と関係性があって、元3賢者という点でな」
「この…!!」
「まぁ、どうでも良い」
「儀式が始まるが…、邪魔するのか?」
「邪魔はしないさ」
煙草を吸うイトウ
「…何を考えている?」
「さぁな、自分で考えろ」
「…始めるぞ!!」
バチバチバチ…!!
「…おかしいですね」
「どうしたんですか?ユウリさん」
「月神の依り代が居ない」
「このまま、儀式を続ければ…」
「「続ければ」?」
「闇が地獄から出てきます」
「そうすれば、闇が暴れ出して…」
「「魂のバランスが崩れる」…」
「その通りです」
「無論、あの場に居るヤグモも無事ではない」
「どうしてヤグモは…?」
「もしかしたら…」
「勘が良いですね」
「!!」
秋雨の後ろにはGLの首筋にナイフを当てている綠と倒れている竜山
「GL!竜山!!」
「秋雨…」
「おっと!動かないでください」
「皆さん、後ろが注意散漫ですよ?」
「…ッ!!」
「GLを離せ!!」
「…この状況、解ってます?」
「アナタ達は!仲間を人質に取られてるんですよ!?」
「お前、自分がしている事が解っているのか?」
「狼の目の前で羊が花を食おうとしてるようなモンだぜ?」
「え?」
ドスッ
「あが…!!」
綠の腹部を刀が貫通する
「アオ…シィ…!!」
「失せろ、羊」
「花を食うな」
バタン…
倒れる綠
「…後ろが注意散漫なのは、お前だったな」
「アオシさん!!」
「待たせたな」
「ガルスさんは!?」
「前を見ろ」
「もう来てる」
ザッ…
ヤグモの前に立ちはだかるガルス
「久しぶりだな」
「どうだ?金田とメタルに会いに行くか?」
「会いに行くのは貴様だ」
「メタルと金田によろしく」
「…ふん」
「…解ってるな?ガルス」
「解ってるさ」
カタカタ…
小刻みに震えているガルスの手
「…抑えろ」
「ああ、どうにか抑えているさ」
「どうした?仇を取るんじゃなかいのか?」
「コレじゃ…、メタルも金田も浮かばれないな!!」
「そんな安い挑発に乗るのはメタルぐらいだ」
「俺には無意味だぞ?」
「それなら良い」
「俺には関係のない話だ」
バチバチバチ…
「さぁ…!来い!!」
バチン!!
ズズズズ…
中心の円から闇が出てくる
「シュル!今だ!!」
「了解です!!」
バガン!!
棺桶が開く
ズォォォォオォオォォォ!!
吸い込まれていく闇
「アレが…!闇を封じる道具…!!」
「お前が持っていたのか…!!」
「炎鬼、お前は嘸かしコレが欲しかっただろうな?」
「月神と戦うために…、か?」
小さく笑うヤグモ
「…」
「…無反応か」
「詰まらん」
ズズズズ…
バクン
闇を吸い終える棺桶
「コレで完成だ…!!」
「儀式を始める!!」
「…そう言うことか」
「お前、今のは闇を急襲するための儀式だな?」
「流石だな、イトウ」
「今のは地獄から闇を取り除く儀式に過ぎない」
「その儀式に使ったエネルギ-は…、自分自身の物か」
「そして次に使うのは闇自体のエネルギ-だな」
「…ハジャ様が認めた科学者だけの事はある」
「正解だ」
「そして…、闇が無くなった今、ハジャでもメタルでも自由に蘇らせることが出来る」
「それが、お前の目的か」
「お前達の計画は水の泡だな」
「月神を復活させる必要は無い」
「…だが、その能力を持っているのは秋雨」
「お前達が持っているとでも?」
「コレ、見覚え無いか?」
ヤグモの手には小さな石
「能力記石…!!」
「だが、体はどうする!?」
「ハジャの体は!この世に存在しない!!」
「…フン」
小さく笑うヤグモ
「シュル、やれ」
「解っております」
円の中心に立つシュル
「さぁ!ハジャ様!!」
「我が中に!!」
バチバチバチバチバチ…!!
「感じる…!感じるぞ…!!」
「私に!力が溢れてくるぅううううう!!」
バチン
「え?」
音が止む
「ハジャ様…!?どうなされました…?」
ズズズズズズ…
「おぉ…!?」
シュルの足下から闇が出てくる
「何故だ!?ヤグモ様が封じたはずだぞ!?」
「私の計画も完璧だったはず!!」
「確かに…、お前の計画は完璧だった」
「だが、闇の量を見誤り、途中で封印を中断したのはお前のミスだ」
「馬鹿なぁああああああああ!!」
ズプン…
闇に包まれるシュル
「…あが」
ズズズズズ…
そのまま、地面へと飲まれていく
「さて、俺達の計画が…、何だって?」
「…ッ!!」
「イトウさん、どうしてヤグモは計画を知っていたんだ?」
「どうせ、メタルの頭でも覗いたんだろう」
「メタルと言えど、死にかけの状態で防ぐのは無理だ」
「…そうだな」
「仕方有るまい…」
「まだ、門は開いている」
バチバチバチ…
「…まさか」
ヤグモが円の中心に向かう
「何をする気だ!?」
「簡単な話だ」
ガチャッ
腕輪を填めるヤグモ
「月神を喰う」
「自分を依り代にするのか…!!」
「そうだ」
「俺個人では難しいだろうが…」
バクン
「…!!」
紋章を喰うヤグモ
「紋章が有れば…、どうだろうな?」
「させるか!!」
ダンッ!!
ヤグモに突っ込むガルス
「儀式の邪魔をするな」
パチン
指を鳴らすヤグモ
ガシャァ-ン…
「コレは…!!」
前回を遙かに上回る兵器の数
「足止めしろ」
「了解」
「アレって…!!」
「何だ!?GL!!」
「五神三聖の本部に来た奴に似てる…!!」
「完全型か…!!」
「そうだ」
ガシャァン!!
「秋雨!ヤグモの儀式を中断させろ!!」
「は、はい!!」
ヤグモに向かって走り出す秋雨
ガシャン
「!!」
兵器が秋雨の前に立ちはだかる
「強制変換!!」
ブゥン
地面に解け落ちる兵器
「防いでろ」
ガタガタガタ!!
さらに大量の兵器が秋雨の前に立ちはだかる
「強制…!変換!!」
ガシャガシャガシャ!!
「切りがない…!!」
スパ-ン…
「え?」
秋雨の目の前に兵器が全て切断される
「行け!秋雨!!」
「ガルスさん!!」
「まだまだ兵器はある」
「俺を止めるのは不可能だ」
ガシャガシャガシャガシャ!!
ドォン!!
「竜山!!」
「行け!秋雨!!」
ガシャァ-ン…
「はぁ!!」
ドッ!!
吹き飛ぶ兵器
「行って!秋雨!!」
「GL!!」
ガシャガシャガシャ!!
秋雨の視界から兵器は消え、ヤグモが見える
「ヤグモォオォォォォオォ!!」
「来たか…!!」
「強制…!!」
バチバチ…
「変換!!!」
バチィィィィィィン!!
激しく鳴り響く轟音
「…」
微動だにしないヤグモ
「どう…、だ?」
「その程度で俺を葬ろうとでも?」
「!?」
ヤグモの声が変わっている
「少々、使いにくいが…」
「まぁ、慣れるだろう」
「まさか…!!」
「月神の魂は俺の中だ」
「儀式は成功…、お前達の計画は失敗だ」
ガシッ
秋雨の手が掴まれる
「死ね」
ブン!!
秋雨を放り投げるヤグモ
「おっとぉ!!」
バァァァァン!!
秋雨を受け止めるガルス
「ガル…ス…さん?」
「大丈夫か?秋雨」
「はい…」
「さぁ!コレで俺は生命を自由に操れる!!」
「神を!神を超える存在だ!!」
読んでいただきありがとうございました