闇との一体化
バタン!!
「治療しろ、和風」
炎鬼が部屋に入ってくる
「竜山!!」
傷だらけの竜山と小さな箱を抱えている炎鬼
「な、何が…!!」
「ヤグモのアジトで騒ぎを起こしたまでは良いが、追っ手にやられてな」
「任せろ」
竜山を受け取る和風
「ユウリ、金田の死体をカプセルに入れてくれ」
「解りました」
炎鬼がユウリに小さな箱を渡す
「その箱って…!もしかして…!!」
「金田の死体が入っている」
「爆発で原形すら留めては居ないが…、再生すれば使える」
「…!!」
「その小僧は、まだ起きないのか?」
「エネルギ-を使いすぎてるのよ!仕方ないでしょ!!」
「怒鳴るな、耳障りだ」
「エネルギ-が無いのならば入れれば良い」
秋雨に触れる炎鬼
「な、何を…!?」
「黙っていろ」
シュゥウウゥウ…
「属性は違うだろうが…、小僧の特殊能力ならば、俺のエネルギ-さえ自分の物にするはずだ」
「可能なの!?」
「可能だ」
「少なくとも、月神しか適合できない五属性混合の超高純度エネルギ-は吸収していた」
ズル…
「…笑えん冗談だ」
ズズズズズズズ…
秋雨の口から黒い物が出てくる
「え…?」
ドン!!
GLを蹴り飛ばす炎鬼
「な、何するのよ!?」
グゥン…
「嘘…!コレって…!!」
「…闇だ」
「俺が闇を弾き飛ばせた理由がようやく分かった」
「え…!?」
「本来なら、俺でも闇を押さえるのが限界だ」
「だが、今回は簡単に封じられた」
「偶然では無かったか…」
「どうして秋雨から闇が…!?」
「簡単な話だ」
「このガキが、お前から出た闇を吸収していた」
「自覚も無く…、な」
「秋雨は…!秋雨は大丈夫なの!?」
「大丈夫なはずがないだろう」
「今、小僧の魂は地獄に逝きかけている」
「どうすれば…!?」
「連れ戻せば良い話だ」
「だが、それには闇が邪魔だな」
ゴプン
秋雨の口に手を突っ込む炎鬼
「な…!?」
「闇を引っ張り出す」
「お前は近づくな」
「ど、どうして!?」
「巻き込まれたいのか?」
「…ッ!!」
ゴボゴボゴボ…
「うげぇ…」
「吐くなよ…、小僧」
「頑張って…!秋雨…!!」
ズルズルズル…
闇を少しずつ引っ張り出す炎鬼
「がぁあああ…!!」
ゴプン!!
「…「吐くな」と言っただろう」
ズルズルズルズル!!
秋雨の口から一気に闇が出てくる
「ゴホッ…!!」
「賭に出るか…」
ズルズルズルズルズル!!
炎鬼が闇を無理矢理に引っ張る
「何してるの!?」
「闇を引きずり出す」
「問題は…、その後だ」
「何が!?」
「この闇をどうするか…、だ」
「放っておけば異常な数の魂が地獄に運ばれ、バランスは崩壊する」
「無論、この小僧も死ぬ」
「どうすれば良いの!?」
「闇を封じ込める道具が有ると聞くが…」
「そんな物、今は無い」
「変わりの物さえ有れば…」
「「変わりの物」って!?」
「エネルギ-で出来た入れ物だ」
「他の異質物が混じっていない…、エネルギ-のみで構成されている入れ物」
「「エネルギ-のみ」で…」
「エネルギ-を固めて、箱を作る事などは出来ん…」
「出来たとしても、その箱が闇の衝撃に耐えられるか…」
「エネルギ-召喚された物は?」
「可能だ」
「そんな能力、持っているのはクラウンぐらいだが…」
ズルン
炎鬼が秋雨の体内から闇を完全に取り出す
「キキャァアアアアアアア!!」
ジュゥウゥウ!!
炎鬼の腕が黒い炎に包まれる
「腕が…!!」
「この程度は問題ない」
「さて、この闇をどうするか…」
「…私を使って」
「…何を言っている?」
「私はエネルギ-で出来ているわ」
「能力だから…」
「…誰の能力だ?」
「風華 柳舞」
「…あの小僧か」
「ユウリの部下、ヴァトラと手を組んでいた…」
「可能なの?不可能なの?」
「可能だ」
「だが、お前が耐えられるかどうか…」
「耐えられなければ?」
「この小僧も、お前も死ぬ」
「…解ったわ」
「私に闇を入れて」
「良いんだな?」
「構わないわ」
「…行くぞ」
ズゥン…
GLの胸に手を当てる炎鬼
ジュゥ…
「うぐ…!!」
「耐えろ」
ズブブブ…
徐々に炎鬼の腕の炎が消えていく
「…コレで良い」
「え?」
「終わったぞ」
「もう?」
「痛みなどは無いだろうが…」
「闇は、お前の体内に入っている」
「…」
自分の胸に手を当てるGL
「さて、これで闇がお前と一体化したワケだ」
「自覚症状は無くとも、徐々に体を蝕んでいく」
「どうすれば闇を体から出せるの?」
「一度、死ぬか…、能力者にエネルギ-を与えて貰うか、だな」
「お前は誰からエネルギ-を供給して貰っている?」
「秋雨から…」
「方法は?」
「…」
言葉に詰まるGL
「…方法は何だ、と聞いている」
「えっと…」
「どうして聞くの?」
「供給方法によって、治療方法が変わるからだ」
「供給方法は何だ?」
「…」
「察してやれよ、炎鬼」
炎鬼の肩を叩く和風
「言いにくいエネルギ-供給と言えば…」
「ああ、アレか」
「接吻だな」
「接吻なら、いつもの様に供給していれば十分だ」
「言うなよ…」
「デリカシ-無いですね、炎鬼さん」
「デリカシ-の無さは、いつまで経っても変わらない…」
ため息をつく和風とユウリ
「…お前達、作業は終わったのか?」
「ああ、勿論だ」
「竜山は回復したが、眠ってる」
「金田さんもカプセルに入れ終えました」
「回復に時間は掛かりますが…」
「この小僧の能力を使えば良い」
「闇も取り出したし…、な」
「闇を?」
「その闇は何処に行った?」
「この女に封じた」
「お前…、正気か?」
「正気も何も、この女が志願した事だ」
「お前…!!」
和風の肩を掴むユウリ
「彼の気も察してあげてください、和風さん」
「まさか…!!」
「…お喋りが過ぎるぞ、ユウリ」
「…そうですね」
「…炎鬼、秋雨君は能力を使えない」
「使えば、彼の能力自体が持たない」
「知った事か」
「無理をしてでも使わせれば良い」
「…駄目だ」
「月神の復活まで待てば良いだろう」
「それまでにメタルが居れば、事は有利に運べる」
「違うか?」
睨み合う和風と炎鬼
「そ、そうだ!」
「お茶でも…」
「要らん」
「失せろ」
「すいませんでした…」
「…秋雨の能力は使わせないわ」
「そもそも、秋雨自身が使わないかも知れないわね」
小さく笑うGL
「女…、黙っていろ」
「いや、彼女が正論だ」
「秋雨君自身が使わない」
「…チッ」
小さく舌打ちをする炎鬼
「急がなければ、ヤグモが行動を起こすんだぞ?」
「それまでには間に合うさ」
「メタルの体も元に戻る」
「勿論、金田も…、な」
「…絶対に元に戻せ」
「この戦い、負けるわけにはいかない」
バタン!!
部屋から出て行く炎鬼
「何なのよ?アイツ…」
「すいません…」
GLに謝るユウリ
「どうしてアナタが謝るの?」
「彼は彼で、1人の女性を守りたいだけなのです…」
「…誰?」
「それは言えません」
「でも、守りたいが故の態度と思ってやってくれませんか?」
「…解ったわよ」
「ありがとうございます…」
地下通路
「うぐっ…!!」
ビチャビチャ!!
血を吐く炎鬼
「…クソが」
「闇の分際で…!!」
読んでいただきありがとうございました