挨拶回り
校舎裏
「挽我!寺冬!亞幹璃!!」
「おお!秋雨やないか!!」
「何をしてるんですか?秋雨さん」
「ちょっと、挨拶回りを…」
「挽我達こそ、何を?」
「新聞のネタ集めや」
「「新聞」?」
「学園新聞、知らんか?」
「確か、前に聞いた事が有ったような…」
「お前達が書いてたのか?」
「いえ、正式にはネタ集め専門です」
「記事は七糸さんがお書きになってます」
「「七糸さん」って…、風紀委員の?」
「はい、そうですよ」
「そうだったのか…」
「それで、寺冬は、どうして落ち込んでるんだ?」
もの凄く暗い寺冬
「耳貸せ、秋雨」
「?」
「寺冬な、水無月って嬢ちゃん居ったやろ?」
「ああ、水無月さんだろ?」
「振られたんや」
「告って、すぐにな」
「あ-、それで…」
「そう言うワケやから、そっとしといてやってくれや」
「頼むわ」
「ああ、解った」
「じゃ、俺は他の人達の所に挨拶に行ってくる」
「ああ、言ってこいや」
「ほな」
「ああ、じゃぁな」
3年寮
「本当に…、秋雨君?」
水無月の頬を涙が伝う
「ただいま戻りました、水無月さん」
「良かった…、本当に…!!」
秋雨に抱きつく水無月
「お帰りぃ----!!」
「…はい」
「よく戻ったね、秋雨君」
「後でパ-ティでも開こう」
微笑む骸瀧
「ありがとうございます…」
「場所は君達の寮部屋で良いね?」
「はい!」
「水無月ちゃん、秋雨君も他の所に挨拶に行かなければならないんだよ」
「後で、ゆっくり話そう」
「…うん」
涙を拭う水無月
「それじゃ!後でね!秋雨君!!」
「はい、水無月さん」
「それじゃ」
「後でね!絶対だよ!!」
「はい、解ってます」
生徒会室
「秋雨 紅葉、書記、ただいま戻りました」
生徒会室には春白が居る
「あ!やっと帰って来た!!」
「春白さん、お久しぶりです」
「「春白さん、お久しぶりです」…じゃ、ないわよ!!」
「アナタが居なかったせいで、私の仕事が増えたんだから!!」
「委員の交渉も大変だったし…」
「ご迷惑をおかけしました…」
「鬼怒さんは居ないし会長も居ないし…」
「議長の天鹿和君まで、何処かに行っちゃうんだから!!」
「…そうですね」
悲しい目をする秋雨
「え?何かマズイ事、言った?」
「…いえ、気にしないでください」
「鬼怒さんや風華会長は?」
「鬼怒さんは治療委員の所に行ってるわ」
「会長は…、亞幹璃君でも追い回してるんじゃない?」
「アハハ…」
「秋雨君は何をしてるの?」
「ちょっと、挨拶回りを…」
「ふ-ん…、そうなんだ…」
「それじゃ、頑張ってね」
「はい」
治療委員会室
「失礼しま-す…」
治療委員室に入る秋雨
「秋雨か」
「鬼怒さん!」
「秋雨君!帰って来たのかい!?」
「鏡燕さんまで…」
部屋の中には鬼怒、鏡燕、椿姫、白刃之が居る
「皆さん、どうしたんですか?」
「少し、昔話をね…」
「秋雨君は?」
「帰って来たので、挨拶をしに…」
「…ノコノコ、帰って来やがったのか」
秋雨を睨む白刃之
「鬼怒から聞いた話だと、向こうでは大変な騒ぎになってるそうじゃねぇか」
「それを無視して、帰って来たのか?お前は」
「…イトウさん達が「帰れ」と」
「もう、僕達が立ち入れる領域の戦いじゃないんです」
「それが、お前の本心か?」
「…」
「今のお前は、自分を騙してるようにしか見えねぇぞ」
「嘘偽りを貫き通すのか?自分に」
「そんな奴は生きてるとは言わねぇ」
「…白刃之さんは解りますか?」
「自分の目の前で、最強と思っていた人が死んでいく気持ちが」
「自分の目の前で、大切な仲間が壊れていく気持ちが」
「自分が無力で、何も出来ない気持ちが…」
バキッ!!
白刃之が秋雨を殴り飛ばす
「白刃之君!!」
立ち上がる椿姫
「何を…!!」
その椿姫の方を鏡燕が噛む
「鏡燕君!?」
首を左右に振る鏡燕
「言いたい事は…、それだけか?」
「…」
口から垂れている血を拭う秋雨
「お前が守れなかった物を、誰かが守っている」
「お前が守れなかった物を、誰かが壊そうとしている」
「それで良いのか?」
「…良くありません」
「良いはずがない!!」
「それが本心だろうが」
「…!!」
「お前は無力だ」
「それがどうした?」
「「お前に出来ることをすれば良い」なんて、甘い事を言うつもりはない」
「恥を掻いてでも、命を失ってでも、自分の全てを捨ててでも、守ると決めた物は守れ」
「貫き通すと決めた物は貫き通せ」
「信念を曲げる奴はクズ以下だ」
「結局、最も強いのは「自分の信念を貫き通した奴」だ」
「…」
立ち上がる秋雨
「秋雨君!校長が呼んでたわよ!!」
「…はい」
バタン
治療委員会室から出て行く秋雨
バガン!!
椿姫が白刃之の頭を殴る
「痛ッ…!!」
「何しやがる!?」
「秋雨君の気持ちを察してあげたら!?」
「彼も彼で、思う事があるのよ!?」
「だからこそ…、だ、椿姫」
「鬼怒君!?」
「白刃之は知っている」
「自分の目の前で、最高の友人がボロボロになっていく様を」
「…ッ!!」
「白刃之だからこそ、秋雨に言えたんだ」
「解ってやれ」
「…解りましたわ」
「…後は秋雨次第だ」
「アイツの信念、見せて貰おうか」
校長室
「失礼します」
「秋雨君か」
「お帰り」
「ただいま、戻りました」
「うん、報告を聞こうか」
「はい」
異世界での出来事を報告する秋雨
「…そう、校長は生きていたのか」
「はい、生きていました」
「そうか…、うん、解った」
「やはり、あの人が簡単に死ぬはずはないよ」
小さく笑うスカル
「後でクラウンにも報告をしてあげないとな…」
「…あの、校長」
「教頭で良いよ」
「もう、校長はロックさんに戻ったからね」
「…教頭、1つ、お願いがあります」
「何?」
「もう1度、異世界へ行かせて貰えませんか?」
「…許可できない」
「イトウさん達が、猫の手も借りたい程の状況で君達を学園に帰した意味を考えるんだ」
「でも…!!」
「例え、どんな理由があろうと、異世界へ行くことは許さない」
「解ったね?」
「…はい」
バタン…
部屋を出て行く秋雨
喫茶店
「…」
「何をしている?秋雨」
「城牙さん…」
「この喫茶店は営業していないそうだ」
「…解ってます」
「ここに、何か用事があるのか?」
「…いえ、有りません」
「?」
「あの…、妹さんの事なんですけど…」
「ん?どうかしたのか?」
「…何でもありません」
走っていく秋雨
「何なんだ…?」
保健室
「失礼します…」
「あ!秋雨君!!」
「メイスさん…」
「イトウさんは、まだ異世界?」
「…はい」
「そう、変えるのは遅くなっちゃうわね…」
「秋雨君は先に帰ってきたの?」
「…はい」
「イトウさんが帰したんでしょ?」
「…どうして解ったんですか?」
「いつもの事だもん!分かり易い行動しか取らないから…」
「…そうですか」
「あ!秋雨君」
「何ですか?」
「怪我してるじゃない!!」
「あ…」
「治してあげるわ!!」
先刻、白刃之に殴られた傷をメイスが治療する
「コレで良し…、と!!」
「ありがとうございます」
「まぁ、私はイトウさんが帰ってくるのを待つわ」
「この子も待ってるし」
「キュプ-」
秋雨にモッチ-が寄っていく
「…ありがとうございました」
バタン…
部屋を出て行く秋雨
「…思い詰めてるわね」
ため息をつくメイス
「キュプ!キュププ!!」
「そうね-、そういうお年頃だもんね…」
「キュプ-…」
読んでいただきありがとうございました