過去の真実
「そもそも、鬼面族とは、この世界に珍しい「一族」なんです」
「伊弉諾さんの水族ように、全滅してしまった一族もありますから」
「…確かにそうだ」
「子供が簡単には生まれないからな」
「でも、鬼面族は健在しています」
「鬼面族は今回、私達に協力してくれますから」
「どうしてですか?」
「当たり前だろう」
「族長の娘が「協力しろ」と言っているんだからな」
「「族長の娘」?」
「アメ-ルだ」
「えぇ!?」
「…この事は後々、話そう」
「シ-!後、どれぐらいで着く?」
「しばらく時間が有るのう」
「…そうか」
「皆は体を休めてくれ」
「…解った」
「イトウさん、少し良いですか?」
「何だ?秋雨」
操縦室
「…色々、聞きたい事が有ります」
「詳しい事は鬼面族の村に着いてから話す」
「…いえ、違います」
「天鹿和さんの…、表の事です」
「…お前に天鹿和の精神状態の事を言ったのはメタルか?」
「いえ、天鹿和さんの裏から話してくれました」
「…お前には話した方が良いな」
「天鹿和の過去は?」
「…知っています」
「青龍の事も、か?」
「…はい」
「本当に…、メタルさんが殺したんですか…?」
「…違う」
「死んでいなかった…、少なくとも大戦が終わった時には」
「…!?」
「コレは俺の推測だが…、青龍を殺したのはヤグモだ」
「まさか、青龍を代用品にするとは…」
「「代用品」…!?」
「…月神を復活させるには超高純度のエネルギ-が必要だ」
「それを青龍という人間の魂で補ったんだろう」
「そんな事が可能なんですか!?」
「可能だ」
「勿論、普通の人間には不可能で、青龍のようにエネルギ-純度がA並で無ければ不可能だろう」
「でも…!天鹿和さんは、メタルさんが殺した場面を見たって…!!」
「…その幻覚を見せたのは俺と金田だ」
「「幻覚」…!?」
「青龍は死んじゃいなかった…」
「今は死んでいるがな」
「…どういう事ですか?」
「青龍は大戦の時、すでに居なかった」
「恐らく、何処かに身を隠していたんだろう」
ため息をつくイトウ
「だが、青龍は、この戦いに現れた…」
「死体として」
「…つまり、青龍さんはメタルさんが殺したんじゃなく、ヤグモに殺された、って事ですか!?」
「そうなるな」
「…どうして、天鹿和さんに幻覚を見せたんですか?イトウさん」
「コレには理由がある」
「だが、お前に教えるわけにはいかない」
「どうしてですか!?」
「…どうしても、だ」
「天鹿和さんには、何て言ったら良いんですか…?」
「メタルさんを殺して!壊れてしまった天鹿和さんには…!!」
「…お前に言っておく」
「…え?」
「お前は一般の生徒だ」
「戦いに巻き込まれる理由もないし、このまま竜山やGLと学園に帰れば、楽しい学園生活が待っている」
「何故、戦いに、面倒事に飛び込もうとする?」
「…僕は、この戦いに、柳舞さん捜索メンバ-に選ばれました」
「それが学園から与えられた任務です」
「…もう、その任務なら終わった」
「お前も気付いているだろう?」
ガチャン…
ウィロ-が操縦室に入ってくる
「…コイツが柳舞だ」
「…はい、解ってます」
「気付いてたのかい?秋雨君」
覆面を脱ぐ柳舞
「さぁ、これで任務は終わった」
「ココに居る理由もないだろ?」
「…イトウさん達は残って戦うんですか?」
「勿論だ」
「…帰りません」
「帰れ」
「帰るしかないんだよ、お前達は」
「…帰りません!!」
「…仕方のない奴だ」
プスッ
「う…!?」
秋雨の腕に注射針が刺さる
「コレは…!?」
「生徒を危険にさらすわけにはいかないからな」
「悪いが…、俺は教員だ」
「イトウ…さん…」
バタン
倒れる秋雨
「柳舞、悪いが…」
「…言わなくても解ってる」
「…そうか」
「学園の生徒を頼むぞ」
「ああ…、任せろ」
ガタン…
秋雨を背負う柳舞
「あの天鹿和とか言う奴は?」
「アイツは元々、この世界の人間だ」
「この戦いには居ても構わない」
「…そうか」
「他の子達は?」
「解ってるだろう?」
「…ああ」
「鬼面族の村に着いたら、シ-に浮遊船を飛ばして貰う」
「そして、学園に帰れ」
「…解った」
カタン…
操縦室の扉を開ける柳舞
「…コレで良いんだな?」
「ああ、コレで良い」
「…」
バタン
操縦室の扉が閉まる
「恨みを買い…、呪われ、憎まれ、貶されようと…」
「この計画だけは…、確実に成功させなくてはならない…!!」
浮遊船、貨物室
「…どういう事?兄さん」
柳舞を睨む舞桜
「…昔は「お兄ちゃん」って呼んでくれたのにな」
「変わるモンだね、時代と妹は」
「話を誤魔化さないで」
「どうして、私達が学園に帰らなければならないのかしら?」
「イトウさん達は、生徒を傷付けたくないそうだ」
「気持ちを察してやれ」
「…そう言うわけにもいかないわね」
「部下を見捨ててはいけないわ」
「…天鹿和の事か」
「アイツは、この世界の人間だ」
「俺達とはワケが違う」
「…それでも、生徒会の議長よ」
「舞桜、俺も妹に手荒な真似はしたくない」
「秋雨と同じ事を…、な」
「秋雨に何かしたの!?」
叫ぶGL
「眠らせているだけだ」
「お前達は、このまま学園に帰って貰う」
「そんな…!!」
「俺も、自分の妹に、能力に会えて泣き出したい気分だが…」
「そんな事を言っている場合じゃない」
「…竜山君!GL!!」
「か、風華会長…!?」
「帰るわよ」
「これ以上は仕方ないわ」
「そんな…!?」
「解ってくれれば、それで良い」
「…良いんですか?会長」
「仕方がない、としか言い様がないわ」
「私達が抗ったで所で、どうにかなるとは思えないもの」
「確かに、そうかも知れませんけど…!!」
「竜山君」
竜山の肩を叩く舞桜
「もう…、私達の戦いは終わったのよ」
「後はイトウさん達に任せておけば良いわ」
「…ッ!!」
「凩君はどうするのかしら?」
「アイツは俺の部下だ」
「無論、連れて帰る」
「…解ったわ」
「物わかりの良い妹で助かるよ」
苦笑する柳舞
「…兄さん、変わったわね」
呟く舞桜
「俺が?変わったか?」
「ええ…、仲間を大切にする所は変わってないわ」
「でも…、昔の兄さんは人の思いを踏みにじったりしなかった」
「…舞桜、俺だって彼達の気持ちは分かる」
「だが…、それ以上に大切な物もある」
「…解らないわね」
「その内に解るさ」
「お前にも…、な」
読んでいただきありがとうございました