裏切りの理由
「鋼斬・蝉時雨!!」
「空連神楽!!」
ボボボボボボボボボボ!!
2人の背後の壁が凄まじい速さで削れていく
ガシャァン!!
メタルに大量の兵器が突っ込んでくる
「おらぁ!!」
ガァァァァン!!
ロック諸共、兵器を潰すメタル
「死嵐弾」
ドドドドドドドドドドド!!
「!!」
メタルの頭上に億千の弾丸
「墜ちろ」
「鋼斬…」
ヒュゥウウウウウウウウウウ!!
メタルに弾丸の雨が降り注ぐ
「閃光!!」
ド…
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
弾丸をはじき飛ばすメタル
「流石…、としか言い様が無いな、メタル」
「お前もな…、と言いたいが…」
「ロック、どうして学園を裏切った?」
「…」
ガチャン
銃を装填するロック
「お前は、俺達を敵に回してでも、私情を殺してでも、学園を守った」
「何故だ?教えてくれ」
「…お前に教える気はない」
「逆に聞くが、どうして、お前は俺にそんな事を聞く?」
「お前を殺した後、学園やカンパニ-で、お前を想ってる奴達に何て言えば良い?」
「「敵になったから、殺した」じゃ、スカルもクラウンもニックも…、誰も納得しねぇぞ」
「…箒夏を生き返らせるためだ」
「解ってるだろう?」
「お前は箒夏を生き返らせることを望んじゃいなかったはずだ」
「そんな思いを他の奴達にさせないために、カンパニ-を創ったんだろ?」
「月神を復活させ、ハジャを生き返らせれば、どうなるか…、解るだろ?」
「…ああ、解っている」
「誰かを人質に取られてるわけでもないはずだ」
「お前が大切な奴達は、そこまで弱くない」
「…それも解っている」
「じゃぁ!他に、どんな理由があるんだよ!?」
「俺がカンパニ-を創るキッカケになった事件、覚えてるか?」
「…箒夏が殺された、あの事件か?」
「そうだ」
「忘れるはずがないだろ」
「どうして、箒夏が殺されたと思う?」
「…解らない」
「理由は単純明快」
「俺にカンパニ-を創らせるためだ」
「…は?」
「そして、その事件を仕組んだのがハジャ」
「…お前、何を言ってるのか、自分で解ってんのか?」
「ああ、解っている」
「お前がカンパニ-を創るとも限らないし、そもそも、ハジャが箒夏を殺したって解っているのなら、どうしてヤグモに協力するんだ?」
「そのハジャを生き返らせようとしてるんだぞ!?ヤグモは!!」
「…解っている」
「じゃぁ!何で…!!」
「…どうして、ハジャは俺にカンパニ-を創らせたと思う?」
「…解らん」
「この時のためだ」
「?」
「俺が学園とカンパニ-という組織を裏切り、ヤグモ側に着くため」
「それだけのために、箒夏を殺した」
「…お前、ハジャが自分は死んで、その後にヤグモが自分を復活させてくれる、と解っていたとでも言うのか?」
「そうだ」
「ハジャは全てを計算していた」
「…あり得ない」
「あり得るんだよ」
「組織という物を背に背負った俺が、自分側に着くことまで計算しているんだからな」
「…お前が生きていると解れば、お前がヤグモ側に着いていると解れば、学園もカンパニ-もヤグモ側に着く」
「戦力の大幅増加を狙ってたのか?ハジャは」
「そうだ」
「…学園のスカル達は、そこまでバカじゃない」
「そう、だから学園とカンパニ-を味方に付ける計画は失敗だ」
「だが、学園とカンパニ-は…」
「戦線から脱する…、か?」
「…そうだ」
「自分が最も信頼していた奴とは戦いたくないだろうからな」
「当たり前だ」
「まったく、素晴らしい頭脳だぜ…、ハジャは」
「だが、それがお前の裏切る理由じゃないだろ?」
「…ハジャは恐ろしい機械を開発していた」
「地獄と連絡を取る機械だ」
「そんな機械を作ってやがったのか…」
「俺はカンパニ-でヤグモと対峙したとき、「この機械を使ってみろ」と言われた」
「そして…、箒夏と連絡を取った」
「箒夏は言ったさ」
「「生き返りたい」と…、な」
「箒夏が望むのなら、俺も望む」
「…お前、本気で言ってんのか?」
「ああ、本気だ」
「箒夏が、そんな事を言うと思ってるのか?」
「あの箒夏が!!」
「お前が!箒夏の何を知っている!?」
「箒夏の!何を知っていると言うんだ!?」
叫ぶロック
「…知ってるさ」
「自分を大切にしてくれた奴に苦しい思いをさせたくない、って言える奴って事ぐらいはな」
「…」
「その機械は偽物だ」
「もし、本当に地獄に通じるのなら…」
「箒夏は、そんな事は言わない」
「…黙れ」
「お前も解ってるはずだ」
「いや、お前だからこそ、解ってるはずだ」
「黙れ!!」
ガァン!!
「…」
ポタッ
メタルの頬から血がしたたり落ちる
「…知ってるさ」
「お前が、とうに限界を迎えていた事ぐらい」
「幾ら人助けをしようと、平和を守ろうと、箒夏は生き返らない」
「それを感づいて、心が限界を迎えていた事ぐらい」
「それを1人で抱え込んでいたことぐらい」
「…知ってる」
「…ッ!!」
「どうして周りの奴達に打ち明けなかった?」
「バカみたいに…、お前を思ってる仲間が居るのに」
「打ち明けられると思うか…?」
「俺を信じてくれた奴達に…、自分の自己満足で利用していた、と」
「バカにしているなんてモンじゃない」
「その行為が!皆の思いを、どれだけ踏みにじる事だと思っている!?」
「幾らでも踏みにじれよ」
「…!!」
「お前の自己満足で!どれだけの人間が救われたと思う!?」
「どれだけの人間が!お前と同じ思いをしなくて済んだと思う!?」
「どれだけの人間が!生きる希望を持てたと思う!?」
「もう…、それは自己満足じゃない」
「それは…、皆を支える大事な物になってんだよ」
「箒夏を犠牲にしてまで…、手に入れる物なのか…?」
「箒夏は犠牲じゃない」
「何より、箒夏自身がそう思ってるはずだ」
「…お前は、いつも戦場をかき回す」
「勘弁してくれ…」
膝をつくロック
「箒夏…」
「悪い…、俺は…、もう、無理だ」
「お前を生き返らせることは出来ない…」
「その代わりに…、皆を支えていく…」
「…それで良いだろ」
「それで十分だ」
「いや、不十分だな」
「これじゃ、ハジャ様の計画が台無しだ」
「!!」
ドッ!!
ヤグモの脚が地面に刺さる
「…避けたか」
「いや、擦った」
メタルの脇腹から、血が溢れ出す
「どうした?裏切り者を抱えて」
「悪いな、もう裏切り者じゃない」
「WG学園校長、そしてWGカンパニ-の総督だ」
「メタル…!!」
「下らないな」
ドッ…
地面から脚を引き抜くヤグモ
「お前、俺からロックを背負って逃げられると思っているのか?」
「もうロックとの戦いでボロボロだろう?」
「…まぁな」
小さく笑うメタル
「離せ!メタル!!」
「1人で逃げられる!!」
「バカ言うなよ…」
「お前も立てる状態じゃないだろ?」
「…ッ!!」
「その男を置いていけば、お前は生き残れるぞ?メタル」
「悪いな、俺はハッピ-エンドしか認めないんだよ」
「仲間が死ねば、ハッピ-エンドじゃないだろうが」
「…クックックック!!」
「フハッハッハハハハッハッハハハ!!」
笑い出すヤグモ
「何を言っている!?メタル!!」
「ハッピ-エンド!?お前に待っているのは…」
ドン!!
ヤグモがメタルに突っ込む
「バッドエンドだ!!」
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