敗北
「…この島で、柳舞さんを拾ったんです」
「柳舞さんは事情を聞くと、私達に協力する代わりに、ある依頼をされました」
「「依頼」?」
「秋雨 紅葉とGLを捜して欲しい…、と」
「私達は、言われた通りに使いを出しました」
「それで?」
「見つけましたが、敵と勘違いされまして…」
「逃げられてしまいました」
「GLさんは無事のようですが、秋雨さんは?」
「秋雨君は無事よ」
「そうでしたか!それは良かった…」
「で?兄に何を言ったの?」
「「紋章を取り返して欲しい」と…」
「ここからは、俺が説明します」
「ヴァトラ…」
「今、ある大会が行われている」
「その大会に、五神三聖が占拠したカンパニ-から奪われた紋章が優勝賞品とされているんだ」
「それを取り返すのが、俺達が柳舞に頼んだことだ」
「…それだけ?」
「いえ、柳舞さんが私達に頼んだ事は、もう1つ有ります」
「何かしら?」
「私達は、柳舞さんが大会に参加した後も連絡を取り合っていました」
「それで、柳舞さんから言われたんです」
「「もし、この世界に俺の妹が来たら守って欲しい」と」
「…それで、この状況なのね」
「そうだ」
「だから、お前達をここから出す訳には行かない」
「…こちらも、閉じ込められているワケには行かないのよ」
「…」
にらみ合うヴァトラと舞桜
「そうだ!!」
「お茶でも出しましょう」
「紅茶と緑茶、どちらが良いですか?」
「ユウリ様…、空気を読んでください」
「どうかしましたか?」
「それが、アナタ様の悪いところです」
「あ!すいません…」
「…紅茶を貰うわ」
「解りました!!」
「アレを倒してから」
「え?」
ガシャァァン!!
窓を突き破り、男が入ってくる
「目標発見、削除決定」
「…来るようですね」
「俺が相手をします」
「ユウリ様は奥の部屋へ」
「は、はい!!」
「柳舞の妹、竜山とGL、手伝え」
「解ってる」
「行くわよ!!」
「目標、増加」
「削除対象、増加」
大会会場
「勝者!観音選手!!」
「うぉおおおおおお!!」
盛り上がる会場
リングの上には傷だらけで倒れている天鹿和と、服のホコリを払っている観音
「天鹿和…!!」
「試合を続行しますか?」
「いや、続行はしない」
「天鹿和を治療したいからな」
天鹿和を抱えるメタル
「決勝進出は!二五チ-ムです!!」
「うぉおおおおお!!」
観客席
「…輝鈴、負けた」
呟くダイヤ
「コレでメタルチ-ムはリタイアだな」
「残念だぜ…」
「ジョ-カ-!次は俺達の試合だ!!」
「急ごう!!」
「…解っている、クロ-バ-」
立ち上がるジョ-カ-達
「…行くぞ、ハ-ト」
「…」
「ハ-ト!!」
「ええ…、そうね…」
ゆっくり立ち上がるハ-ト
「相当、ショックだったみたいだぜ?輝鈴の敗北が」
「試合に影響が出なけりゃ良いが…、だぜ」
「…組み合わせを変える」
「ハ-トの代わりに、スペ-ドが出ろ」
「おう!任せろ!!」
「良いな?ハ-ト」
「…ええ、良いわ」
下を向いているハ-ト
「…それ程、強い相手じゃないからな」
「メンバ-が1人、居なくなろうと関係はない」
「ハ-ト、メタル達は109号室だ」
「…ありがとう」
ハ-トが観客席から出て行く
「行くぞ」
「決勝まで…、な」
「おう!だぜ!!」
109号室
ガタン!!
「輝鈴!!」
ハ-トが部屋に入ってくる
「…騒がしい」
「今、天鹿和を治療している」
「…ハ-トか」
「メタル…!!」
唇を噛み締めるハ-ト
(今は…!!)
思いを振り払うように頭を左右に振り、天鹿和に駆け寄る
「輝鈴!大丈夫!?」
「ハ-ト…、か」
「怪我は!?大丈夫!?」
「表は!?」
「表は…、俺が死なない限り…、大丈夫だ…」
「あの観音とか言う奴…、しっかり手加減してやがった…」
苦笑する天鹿和
「体は!体は大丈夫!?」
「ああ…、少し痛む…」
「ハ-ト、試合はどうした?」
メタルが口を挟む
「ジョ-カ-達に任せたわよ!!」
「アンタのせいで…!!」
ガッ!!
天鹿和がハ-トの腕を掴む
「やめてくれ…、ハ-ト…」
「表が出てくる…」
「…ッ!!」
メタルを睨むハ-ト
「…秋雨、その女を会場まで連れて行け」
「…」
ボウッとしている秋雨
「秋雨!!」
「は、はい!!」
「連れてけ」
「解りました」
「行きましょう、ハ-トさん」
秋雨がハ-トの腕を掴む
「嫌!離して!!」
「お前は試合に集中してろ」
「天鹿和が回復したら、会いに来い」
「天鹿和じゃない!輝鈴!!」
「…どっちでも良い」
「行け」
「…ッ」
バタン!!
扉を強く閉め、部屋から出て行くハ-ト
「…さて、ここからが問題だ」
「優勝が無くなった以上、紋章は手には入らない」
「優勝チ-ムを襲って略奪するにしても、相手は二五達かジョ-カ-達だ…」
「簡単には奪えない」
ため息をつくメタル
「そこで、だ」
「秋雨!お前に頼みたいことがある」
「…何ですか?」
「身代わり」
「え?」
「頑張れよ」
「たぶん、死なないから」
「え…?」
中央国
街外れの山
「まぁ、ここだろうな…」
「ああ、そうだろうな」
山に登っていく金田とガルス
「ヤグモの野郎、しっかり見張りを付けてやがる…」
「う…」
「あ、起きたぞ」
キユラが目を覚ます
「…何処?ここ」
「アンタ達、誰?」
「うわ、傷つくな…」
「俺達を知らないのか?」
「確か…、金スとガル田だっけ?」
「混じってる、混じってる!!」
「金田とガルス!!」
「ああ、そうだったかしら」
「その2人が、そうして私を縛って背負ってるのかしら?」
「いや、見張り役…」
「もしかして…、やった?」
「やってない!!」
「誤解を招くことを言うな!!」
「あら、そう?」
「で、ここは何処かしら?」
「…ヤグモのアジト」
「お前を連れて来るかどうか迷ったんだが…」
「心配しなくても、ヤグモとは縁を切ったわ」
「ルドネスは…、どうかは知らないけど」
「ルドネス…、聞いた事が無いな…」
「え?大戦の時から居たわよ?」
「…調べてみるか」
「行くぞ」
「ちょっと!突っ込む気!?」
「そうだが?何か問題があるか?」
「アンタ達!正気!?」
「メタルの性格が感染してるじゃない!!」
「…言われてみれば」
「だが、他に方法は無い」
「様子を見るとか!無いの!?」
「今、軽く騒動を起こしておけば、ヤグモの手を遅れさせられる」
「心配しなくても、騒動を起こせば逃げるさ」
「それでもダメでしょ!!」
「ヤグモが出てきたら、どうするの!?」
「…お前、いつも、このアジトに居たのか?」
「そうよ!!」
「…そうか」
「お前は来るな」
「ど、どうして!?」
「宣言してやる」
「このアジトは捨て駒だ」
「え!?」
「ガルス!計画変更だ!!」
「このアジトは潰す」
「…了解」
「行くぞ」
ダッ!!
「敵襲だ!!」
「総員、配置に付け!!」
「捨て駒風情が…」
「粋がってんじゃねぇぞ!!」
読んでいただきありがとうございました