準決勝前夜
109号室
「さて、明日は二五達のチ-ムと当たる」
「解っているとは思うが、相手は今までと比べものにならないぐらい強い」
「メンバ-は?」
「恐らく、観音、ウィロ-、、二五の順で来るだろう」
「それで、俺達はウェン、天鹿和、俺の順で行く」
「…俺か?」
「ああ、お前だ」
「…解った」
「秋雨と凩は体力を温存しておけ」
「良いな?」
「はい」
「解っている」
「よし、寝ろ」
その日の夜、ベランダ
「…メタル、1つ聞きたい」
ウェンとメタルがベランダに立っている
「二五…、アイツは何者だ?」
「無名とは思えない」
「俺も知らない…」
「って、言っても無駄か?」
「当たり前だ」
「お前の事だ、世界中の強者ぐらいは把握しているだろう?」
「…自慢じゃないが」
鼻で笑うメタル
(自慢してるだろ…)
「二五、本名は蘭斬…」
「お前も会ったことが有るはずだ」
「蘭斬…?覚えがないな…」
「昔の事だから、覚えて無くても仕方ないか…」
「奴は4国大戦の生き残りだ」
「「死魂の蘭斬」…、って言えば解るか?」
「…思い出したぞ!!」
「4国大戦の時、お前と同じ東の国で暴れ回った…!!」
「そうだ」
「昔の仲間と戦う羽目になるとは、なぁ…」
ため息をつくメタル
「…強さは」
「昔とは比べものにならないぐらい強くなっていると考えた方が良い」
「ヤグモも同様に…、な」
「問題は蘭斬の目的だろう?」
「もしヤグモ側と手を組んでいるのなら…」
「それは無い」
「何故だ?」
「奴は孤高の戦士、って奴だからな」
「今回、仲間と参加しているのも珍しいぐらいだ」
「…そうか」
バサッバサッ!!
ゴッゴッ!!
飛んできた鳥がメタルの頭を突く
「ちょ!痛い!痛い!!」
「何やってんだ…」
鳥を押さえるウェン
「…手紙だ」
「イトウさんからお前へ、だ」
「何だ?」
ガサ…
紙を広げるメタル
「覚えなきゃな…」
「何が?」
「コレ、リストだよ」
「うわ…、何だ?この数…」
「面倒くさいな…」
「まぁ、色々居るだろうが…」
「頑張るんだな」
小さく笑うウェン
「ま、そうだな…」
「それで、だ」
「秋雨!!」
「!!」
カ-テンに隠れていた秋雨が出てくる
「何の用だ?」
「聞きたい事が有って…」
「…俺は寝るか」
部屋に入っていくウェン
「…何だ?「聞きたい事」って」
「僕の…、能力です」
「ああ、アレか」
「命を削ってる、って本当ですか…?」
「ああ、真実だ」
「一気に、ってワケじゃないがな」
「どのくらいの割合でしょうか?」
「それは解らん」
「まぁ、1年とか言う割合じゃないから、心配するな」
「ただし、無闇に使うなよ?」
「本当に死ぬぞ」
「…はい」
「他には?」
「…」
押し黙る秋雨
「どうした?」
「天鹿和さんの事です…」
「…天鹿和が、どうかしたのか?」
「AWの試合は天鹿和の精神が不安定だっただけだ」
「…メタルさん、青龍さんを殺したんですか?」
「…誰から聞いた?」
「天鹿和さんの裏から、です」
「メタルさんは自分の仲間のために無抵抗の青龍さんを殺した…、と」
「…その通りだ」
「俺は自分のエゴのために殺した」
「…本当の事を言ってください」
「今のが真実だ」
「誰が何と言おうと…、な」
「僕は…、違うと思います」
「今まで見てきたメタルさんは…、そんな人じゃない」
「…刑務所から出所してきた奴は、いつまで経っても悪人か?」
「違うだろう」
「時が経てば、人は変わる」
「それでも…!メタルさんは…!!」
「面倒くさい奴だ」
「寝ろ」
「…どうして、人から憎まれようとするんですか?」
「お前には関係ない」
バッ!!
メタルに手を当てる秋雨
「答えてください!真実を!!」
「…脅しか?」
「お前の能力は俺には効かない」
「…!?」
「水無月のハロウィント-ナメントの時の戦いを見ただろうが」
「エネルギ-純度の差がありすぎると、相手に能力を封じ込められる」
「即ち、お前の能力はヤグモにも俺にも効かない」
「そんな…!!」
「まぁ、無理をすれば、先刻に言ったように死ぬだろうな」
「解ったら手を離せ」
「…」
メタルからゆっくり手を離す秋雨
「焦らずとも、その内に解る」
「真実が…、な」
「天鹿和さんは…、それまで耐えられるでしょうか?」
「無理だ」
「!!」
「だからこそ…、意味がある…」
不敵に笑うメタル
「…何をするつもりですか?」
「言っただろ?」
「「お前には関係ない」」
「…ッ!!」
「お前はト-ナメントを勝ち進めば良い」
「優勝が俺達の目的だ」
「違うか?」
「そうかも知れませんけど…!!」
「お前は何が目的だ?」
「学園を救いたい、大切な人を守りたい、世界を守りたい、だろ?」
「…そうです!!」
「それで良い」
「だが、俺達は、そんなヒ-ロ-じみた目的じゃない」
「自分達のエゴのためにやっているだけだ」
「…違うと思います」
「メタルさんは!!」
「…もう、寝ろ」
「その内、全てが解る」
「…ッ!!」
部屋の中に入っていく秋雨
「随分と、酷い先生だな?メタル先生」
和風が部屋から出てくる
「…いつから聞いていた?」
「最初から」
「…「先生」じゃない」
「喫茶店の店員だ」
「そうだったのか」
「知らなかったよ」
小さく笑う和風
「…メタル、何を考えている?」
「お前らしくない行動が多いぞ」
「計画の内だ」
「「計画」…、か」
「そのために動いている」
「それが自分の身を滅ぼす物だとしても、か?」
「…そうだ」
「義務とかじゃない」
「俺のケジメだ」
「…これ以上は何も言わない」
「ま、頑張るんだな」
「…もう少し、マシな応援はないのか?」
「コレが精一杯だよ」
「…あっそ」
読んでいただきありがとうございました