3回戦
大会会場
「…」
賑やかなはずの大会会場が静まっている
「どうして、静かなんでしょうか…?」
「俺達のチ-ムは残虐非道なチ-ムと思われてるからな」
「ヤジでも飛ばせば、自分が殺されると思ってるんじゃねぇか?」
爆笑するメタル
「俺が原因か…」
「真っ当な試合をしなくては…、な」
苦笑する天鹿和
「お!相手チ-ムのお出ましだ」
秋雨達と反対側のリングから、5人の選手と1人のサポ-タ-が出てくる
「あの中心のメガネが機械師だ」
「良く、見ておけ」
「はい…!!」
「じゃぁ、行ってくる」
リングに上がる天鹿和
「頑張ってください!天鹿和さん!!」
「ああ、殺さない程度にな」
ザッ…
相手側からも機械師がリングに上がってくる
「それでは!第3回戦、天鹿和とダルボアの試合を始めます!!」
「リングから出るか、死ぬか、ギブアップするか、私が試合の続行が不可能と判断するかで負けとなります」
「正々堂々、戦ってください!!」
両手を振り下ろす審判
「始め!!」
ジリッ…
構え、距離を一定に保つ天鹿和
「うん、正攻法だな」
「そうなんですか?和風さん」
「あの距離なら、遠距離でも近距離でも反応できる」
「ベストな位置だ」
「相手の攻撃法が普通なら…、な」
ため息をつくウェン
「銃や刀でもなく、機械だ」
「厄介な相手だぞ」
「来ないんですか?」
「では、私から行きましょう」
懐から様々な道具を取り出すダルボア
「RC!39型!!」
バッババッババッバ!!
凄まじい速さで機械を組み立てる
「私、自慢の機械です」
「避けられますか?」
ガシィ-ン…
戦車のような機械が、銃口を天鹿和に向ける
「…遠距離型か」
ドォン!!
ドドドドドドドドド!!
凄まじい速さで砲弾を発射する機械
「す、凄い…」
「おいおい、敵の機械に感心してる場合じゃないぞ?秋雨」
「ウェンさん、流石に天鹿和さんでも、アレはキツイんじゃ…」
「お前はバカか?見てみろ」
ため息をつくメタル
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!
軽々と弾丸を避ける天鹿和
「学園の依頼でも、銃を持った相手など幾らでも相手にしてきたはずだ」
「動きの襲い砲弾が当たるわけがない」
「そ、そう言えば…」
「初の制圧任務の時も、銃を持った敵を相手に生き延びてました…」
「だろ?」
「爆炎煙幕!!」
モォアアアアア…
天鹿和の手鎧から、黒い煙が噴き出す
「これは…」
バチバチバチ!!
「む?」
機械から黒い煙と火花が放たれる
「熱風ですか…」
「しかし!詰めが甘い!!」
ガチィン!!
高速で機械を改造するダルボア
「コレで熱風は効きません!さぁ、どうしますか!?」
「壊す」
「え?」
ヴォォン!!
天鹿和の手鎧が黒煙を突き破る
ヴヴヴウヴ!!
激しく手鎧の先端が振動する
ガギガギガギガギ!!
ひびが入っていく機械
「コレで…!!」
「言ったでしょう?「詰めが甘い」と」
ドスッ
「うがぁ…!!」
天鹿和の腹部にナイフが突き刺さる
「私の機械は遠近距離対応!!」
「近距離戦に持ち込まれようと、対応できるのです!!」
「くそ…!!」
ガクン!
膝をつく天鹿和
「油断しちまったな…!!」
「さぁ!どうしますか!?」
ガチャガチャガチャ…
機械から次々に切断系の武器が出てくる
「俺の手鎧以上の仕込みだな…」
「ほう!やはり、あの煙幕と先端部の振動は仕込みでしたか!!」
「アナタとは気が合いそうでしたが…、残念です!!」
「チィ…!!」
ドクン
「…え?」
「何ですか?最後に言い残すことでも?」
「AWさんのように、グチャグチャにされる前に言い残すことが有るんですかぁ!?」
爆笑するダルボア
そんな事は耳に入らず、天鹿和の頭に言葉が響く
(…せろ)
「やめろ…!!」
「やめませんよ!往生際の悪い!!」
(出させろ…)
「やめてくれ…!!」
「何を言っているんですか!?」
(出させろ!裏ぁぁぁあああ!!)
「出るな!表ぇぇぇええ!!」
「はい?」
ガシャアァン
「え?」
ダルボアの目の前に機械が、一瞬でクズ鉄と化す
「あれ?え?」
「殺す…」
ダルボアの目の前の天鹿和は先刻とは違う
眼は狂喜に満ち、口元は裂けるほどに笑っている
「ひぃ…!?」
「殺すぅぅぅぅうぅううう!!」
ダルボアに向けられる手鎧
ガァン!!
「うぃひ…!?」
その手鎧を、左手の手鎧が止める
「ど、どういう事です…!?」
「に…げろ…」
「は、はいぃ!?」
「逃げろ!!」
「に、「逃げろ」ぉ!?冗談も程々にしてください!!」
「私は勝つ!!」
「馬鹿野郎がぁ!!」
ピンッ!!
天鹿和の手鎧がダルボアの頬を擦る
「ひぃ…!?」
「…」
静まる天鹿和
「…審判」
「は、はい!?」
「ギブアップだ」
「ダルボアの勝ちで良い」
「あ、はい!!」
「勝者!ダルボア!!」
「う…」
「うぉおおおおおお!!」
一気に盛り上がる会場
「ふぅ…」
ため息をつきながら、秋雨達の元に戻ってくる天鹿和
「お前…、どうして自我を取り戻せた?」
ウェンが天鹿和に語りかける
「俺が聞きたいな」
「どうして表が出てきた?」
「…先に答えてやる」
「お前の精神状態が不安定になったからだ」
「…そんな覚えはないが」
「殺されかけただろう?ダルボアに」
「殺されそうになって、精神状態を保てる奴など居ない」
「それが原因か…」
「そうだ」
「じゃ、次は俺の質問に答えろ」
「どうして自我を取り戻せた?」
「…表が俺になったとき、アイツが眼に入ってな」
「「アイツ」?」
「AWだ」
「観客席で、俺の戦いを見てたよ」
「…後で礼を言っておくか」
「凩!行け」
「おう」
「Stop timeで動きを止め、High speed timeで片を付けよう」
「いや、そこまでしなくて良い」
「何故だ?」
「見てみろ」
リングの上で平然と立っているダルボア
「…変化が有る様には見えないが」
「いや、俺なら解る」
「アイツは本来、俺が心を読めないほどの使い手のはずだが、今は違う」
「?」
「天鹿和の表に気圧されたんだろう」
「心の声がグチャグチャだ」
「…つまり、今は弱いと?」
「そうだ」
「お前なら、速攻で片が付く」
「解った」
リングに上がっていく凩
「それでは凩とダルボアの試合を始めます!!」
両手を振り下ろす審判
「始め!!」
読んでいただきありがとうございました